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第九話
ぼーっとする。
入院から二日後、俺は家に帰った。
しばらく仕事も、絵理奈の元にもいかない。
医者に安静にしていろと言われたからだ。
一度休んでからと言うもの、俺は頑張り方を忘れた。
鳥が飛び方を忘れるのか分からないが、きっとそんな感じだ。
飛べない鳥は、猫だとか鴉に食べられる。
だから、飛ばなければならない、それと同じ。
有り得ない、いや、有り得てはならないことなんだ。
生きていくために働くなんて、そんなの簡単なことだろうよ。
だけど、俺のやる気はぱたりと途絶えてしまった。
一人は嫌だ、怖い。
何もしないと鬱になる。
何故俺がこんなに苦労しなきゃならないんだよ……。
自分以外の他人の為に、自分を犠牲にするのは…俺らしくないと思う。
…むしろ俺ってなんだよ。
意志も、未来も、金もなければ、頼れる人間もいない。
俺には、絵理奈だけだったから。
絵理奈にも俺だけだっただろう。
絵理奈にもう希望がないのなら……。
……俺が希望に導いてやるよ……。
…俺は一本の頑丈なロープを持ち、絵理奈の元へ向かった…。