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第十話
どうやってきたのか、俺は病院にいた。
まるで瞬間移動をしたように、気づけば絵理奈の目の前にいた。
「絵理奈………。」
白くて細い首筋に、思わずゴクリと生唾を飲む。
絵理奈とまた話したいんだ。
絵理奈とまた幸せになりたいんだ。
だから俺は絵理奈を前に進めてあげるだけだ。
絵理奈を希望へ導いてあげるだけだ。
俺も後から行くから…待っててくれよ……。
絵理奈の首にロープをかけた。
後は思い切り締めるだけ……一気に力強く締めるだけ……。
これで絵理奈とずっと一緒になれるんだ…絵理奈と一緒に……。
力を込めようとした、その時だった。
絵理奈の目から一筋の涙が流れた。
植物状態でも、涙が流れることがある。
だがその涙は、俺のものとは違う、透き通った、純粋な涙だった。
その涙を見て俺は、正気に戻った。
「…ハッ…!……絵理奈……俺は…一体何をしようとしたんだ……。」
後もう一歩で、俺は取り返しの付かないことをするところだった…。
その日から、俺はまたがむしゃらに働いた。