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第一話
今日、彼女が事故に遭った。
彼女の不注意で大型トラックにひかれた、と説明されたが、俺がこの事故を起こしたようなものだった。
数時間前、彼女と喧嘩した。
きっかけは些細なことだったのに、カッとなった俺はつい思ってもない酷いことを言ってしまった。
「絵理奈は自己中心的すぎる!こんなことなら出会わなければ良かったのに!」
滅多に癇癪を起こさない俺が、初めて五年も付き合った彼女に浴びせた罵声だった。
しばらく沈黙が起きた。
今のは俺だったのか?こんな声を荒げるなんて……。
すぐに謝ろうとしたが絵理奈は目に涙をたくさん浮かべ、そのまま走って俺の部屋を出ていってしまった。
あの時、引き止めるべきだったのだろう。
あの時、もし引き止めていたのなら絵理奈はこんな姿には……。
今、絵理奈は病院のベッドで眠っている。
無表情な絵理奈の顔を見ると、涙が止まらなくなる……。
あぁ…お願いだ絵理奈……。
早く目を覚ましてくれ……。
俺が悪かった……もうあんな酷いことは言わない……。
お願いだから……目を開けてくれ……。