忘れる
「…メール来ねえなあ」
メアドを教えたのにメールが来ない。人生モテまくりの俺にとって初めての体験だ。今までの女どもは俺がメアドを教えればすぐメールが来た。しかも…しかもだ、女のくせして下心丸出しのド変態野郎どもばっかだ。毎回毎回メールが届くたびにドン引きだ。まあでも常に俺が上位の位置にいるという優越感に浸れるのだから嫌いではなかった。
なのに、今回はなぜかメールがこない。もうメアドを教えてから三日目、何がなんだかさっぱりだ。
「…流石におかしいだろ」
四日目の昼休み、俺はまた一年校舎に行った。
雪乃を探すこと五分、彼女は教室の隅で本を読んでいた。俺は教室に入り雪野の近くまで行き声をかけた。
「やっほー雪野ちゃん!」
いつもの猫かぶりスマイル(通称 猫スマイル)も忘れずに発動した。
雪野はこっちを向くと少しポカーンとした顔をしてからハッ!とした顔になった。
「こ、こんにちは…えっと…夢村先輩?」
…え?なんで疑問形?
「そうそう、前会った時メアド書いた紙渡したじゃん?あれからメール来てなくてさ、もしかしてだけどその紙無くしちゃった?」
俺が導き出した答え!多分この子は誤ってなくしたのかもしれ
「あ!すみません。そういえばもらいましたね、忘れていました」
俺の答え言う前に解答言っちゃたよ!?てか、ええっ!?忘れられてた?おれのメアドを!?
「え、あ、そ、そうなんだ。ははっそれはしょうがないよね、あ!なら今ここでメアド交換しちゃおっか!」
これが俺の考えた作戦其の壱『断れない雰囲気だしちゃおう作戦!』
クラスの中、周りにクラスメイトがいるなかで先輩のメアド交換を断れるはずが
「すみません…学校に携帯持ってきてないんです」
断られちゃったよ!?え?なんなのこいつ?俺どころか周りの人たちもびっくりしてるよ!?
「な、なら俺の携帯にメアド登録してよ!ほら貸すから自分で打って!」
こうなったら俺の考えた作戦其の二『携帯渡して無理矢理登録作戦!』
さすがに携帯を渡せばやってくれるはず!!
「私携帯のメアド覚えてないんです。すみません、今から先生に提出するプリントがあるんです。メールはしておくので今日は失礼させてもらいます、では」
…開いた口がふさがらない。しばし呆然としていると昼休み終了のチャイムがなった。
「あっはっは、そりゃまた大物だな、その子」
放課後俺は家の近くのレストランにいた。
「うっせえな、いつまでも笑ってんじゃねえよ大輝!!ぶん殴るぞ」
さっきから俺の目の前で笑い続けているのは『柄本大輝』小さい時からの俺の親友で一言で言えば幼馴染だ。ついでに俺が素の性格で話せるやつだ。ちなみに顔は俺なんか比べ物にならないくらいの超絶イケメンでサッカー部の部長でエースっていうイケメンのテンプレみたいな奴。彼女がいて二週間前に交際三年目まで続いてる一途な真面目野郎だ。ちなみにおれの最高続いたのは三ヶ月!ドヤッ。
「まあまあ、というかそんなに腹が立つなら狙い変えたら良いじゃねえか。どうせ誰にしても長くは続かないんだから」
大輝はまだ笑っていた。そろそろ本当に殴ろうかな。
「は?そんなの嫌に決まってんだろ。俺が負けたみたいじゃんか!」
そんなのカッコ悪すぎる。
「またくだらないプライドかよ…」
大輝は呆れていた。
「くだらないとか言うな!!」
「そこまで言うなら俺が少しこの子について調べてやろうか?」
大輝から素敵な言葉が出てきた。
「…本当にいけるか?」
念のため確認をとった。
「当たり前だ、期限は?」
「一週間」
「了解」
そう言った大輝は親指と人差し指で輪っかを作り俺に見せてきた。
「…わかった、今度ラーメン奢る」
「まいどあり!」
くっそこれが狙いだったのか…
こうして俺は少し次のステップに進めた。