プロローグ
…今、俺の目の前には男の匂いを知らない純粋な女がいる。何度誘っても全く振り向いてくれない俺の天敵だ。
「なあ、雪野~いつになったら一緒に帰ってくれんの?」
俺はいつものセリフを言う。
「…またですか、いつもお断りしてるじゃないですか」
嫌そうな顔を向けられた。いつもならここらへんで妥協して「また明日な」とかいうのだが今日は諦めない。
「なんでそんな顔すんだよ、いいだろ?一緒に帰るくらい」
俺は雪野に向かって一歩近づく。雪野が二歩下がる。
「…普通一歩近づいたら一歩下がるだろ、なんでどんどん遠ざかるんだよ」
段々腹が立ってきた。
「なんでっていやだからに決まってるじゃないですか!春先輩には正直近づいてもらいたくありません。」
こ、この野郎…いや落ち着け、落ち着くんだ。ここで怒鳴ったら負けだ。
「そ、そうかよ。でも、俺はお前と一緒に帰りたいの!だから帰ろうぜ」
雪野の目が更に鋭く俺のことを睨んだ。
「よくもまあ、心から思ってないことをそう簡単に言えますね。逆に尊敬しますよ」
雪野がそっぽを向いた。俺の怒りのゲージはもう限界だ。てか、なんで俺が怒ってるんだろそれすら分かんなくなってきたな。おれが返事に困って何も言えないでいると呆れたようにため息をついた雪野が教室のドアまで行った。
「ほんと…恥ずかしい人ですね」
そう言って俺の天敵『寛野雪野』は教室から出て行った。誰もいない教室に一人ぼっちの俺。…ダサい。おまけに通算8回目のお誘いも完全に無視。あれ?俺、超ダサくね?
「はあ…なんで俺はあんな奴を選んじまったんだろ」
ため息をつきながら教室から出ようとすると教室のドアの下に手帳のような何かが…
「なんだこれ?」
手に取ってまずは表裏を確認した。名前は無し、次は中を開いて見た。
「な、なな、なんじゃこりゃああ!!!」
これをきっかけに俺『夢村春』と『寛野雪野』の複雑なラブコメが始まる。