第9話
「ねぇねぇ恵!!昨日どうだった?」
朝、教室に入ってくるなり隣の席の友達がいう。私は肘をついて外を見ていた。
「…特に何もなかったよ」
「え〜っ?そんなことなかったでしょ?じゃあ何で間宮くんに呼び出されたの」
「…私も知らないよ」
友達はえ〜っといって椅子に座る。
「だって本当だもん。ちょっと話してたら下校時間になった」
まあ本題に入るまでが長かったんだけどね。そういえば幸くんが怒っちゃった(?)謎も残ったままだ。
「ねぇ、間宮くん兄弟いるの知ってた?」
「えっ、恵知らなかったの?幸浩くんでしょ?かっこいいし優しいし、女子のなかではかなりの人気者だよ」
…知りませんでしたよ。だいたい7組離れてるじゃん!!
「無愛想で有名なのは智浩くん…だっけ?無愛想な兄に比べて、優しいくて話やすい弟ならそりゃ弟の方が人気でるって」
…私も最初は幸くんの笑顔にドキドキしちゃったさ。
「でもね私が聞いた話によると智浩くんってすごい人見知りで、慣れた相手には幸浩くん並な笑顔で話すんだって〜」
だから昨日は無愛想に見えなかったのかな?
私の中ではもう智浩くんの印象は変わってしまっている。できるならもっと沢山彼の事を知りたいと思うようになった。
昨日から智浩くんの事ばかり考えてる気がする。
「はぁ…」
「あっ、ため息。幸せ逃げるよ〜?」
「なになに、恋患い?」
友達の声と同時に男の子の声がした。私達は後ろを振り向いた。その瞬間、
「「きゃあぁぁぁっ!!」」
うちのクラスの女の子達の悲鳴にも似た声があがった。かなりうるさい…。
「ははっ、みんな朝から元気だね」
幸くんもさすがにうるさかったのか、両手で耳をふさいでる。私は耳がキーンってしてるよ…。
「おはよう、幸浩くん」
「めぐちゃんおはよう」
あぁ、またあの笑顔。ほらクラスの子達も歓喜の声をあげてるよ。
「間宮くんすごい人気だね」
友達は動じずに、幸くんに話かける。他の子達は近付けずにいるのに、我が友達ながらすごい度胸だ。
「俺はそんなんじゃないよ」
「またまたご謙遜を」
「めぐちゃんのお友達?」
「うん、中西ゆかりっていうの。恵繋がりで仲良くしてね」
「めぐちゃんの友達なら俺の友達も同然だよ。こちらこそ仲良くしてね」
あんたちゃっかり幸くんと自己紹介しあったな…。ゆかりに向けられた嫉妬混じりの視線が私にも痛いよ。
「…ゆかり、あんた大物だわ」
「何かいった?♪」
確信犯め…。
「でも幸くんどうしてここにいるの?」
「たまたまだよ。」
「「たまたま?」」
「そう、たまたま」
ん〜、よくわかんないなぁ。なんか笑顔で誤魔化されちゃった。
「…幸浩、遅刻する」
『あっ…この声もしかして』
振り向くと予想通り智浩くんが立ってた。今日はやっぱり不機嫌そう…。
教室の中はさっきとは違ったざわめきがおこっている。
でも私は“知り合いと話す時の”智浩くんを知ってるから、なんで不機嫌そうにみえるのか本当に無愛想なのかわかる。
「智浩くん、おはよう」
「おはよう、恵」
教室には結構クラスメイトがいたからちょっとだけだけど、微笑んで挨拶してくれた。「なんだよ、めぐちゃんに会えてラッキーだっただろ?」
「…いいから行くぞ」
意味深な幸くんのセリフ。でも智浩くんは無視みたい。
「仕方ないなぁ。めぐちゃん、ゆかりちゃんまたね」
先に教室を出ていく智浩くんに続いて、幸くんも出ていく。
私達は姿が見えなくなるまで手を振った。
「めぐ、ゆかり!!あんたたち間宮兄弟と知り合いなの!?」
二人がいなくなった途端に、クラス中の女の子達の襲撃にあった。
“質問攻め”より“襲撃にあう”という表現がぴったりはてはまる。みんな目の色変わってるもん。
「そう♪名前で呼び合う仲」
「ゆかり…」
あんたは今日知り合ったばかりでしょ!!何もみんなを敵にまわさなくても…。
恐れてたら案の定、
「「あんたちだけずる〜い!!」」
キレられた。女の嫉妬は怖い。普段大人しいあの子まで人格が変わっちゃってるよ…。
何も言わない私を置いて、ゆかりやクラスのみんなはヒートアップしている。もうすぐHRだけど、嫉妬火の粉が降りかかるまえに抜け出しちゃおう。
バレないようにこっそり教室を抜け出し、屋上へと向かった。
ようやく恵の友達の名前が出てきました(笑)中西ゆかり(なかにしゆかり)です。
なかなか展開が進みませんが、頑張りたいと思います。
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