第6話
智浩くんの呼び出しの謎を残したまま、あっという間に放課後になった。呼び出される覚えの全くない私の心臓は、バクバクいいっぱなし。友達曰く、
「何か間宮くんの気に触ることしたんじゃない?」
らしい。だいたい智浩くん達に会ったのも会話したのもこの前の一件の一度きり。
「そういえば、あの時間宮くんに教科書借りたんだよね?」
「そうなんだよね………」
教科書を借りて………、授業中に………開いてみたら………落書きがあって……………??
「あ゛っ!!」
そういえば私智浩くんの教科書に落書きしちゃってそのままだよ!!
「私とんでもないことしちゃったよ〜」
友達に落書きの話をしたら、
「それはアンタが悪いわ。頑張りな」
と冷たく送り出されちゃった。
教科書返しに行ったときとは反対に、とぼとぼと7組に向かう。呼び出しを無視するわけにもいかないし、だいたい非はあきらかに私にあるわけで…。
「なんで落書き消さなかったんだろ…」
はぁ〜っと盛大にため息をつくと、いつの間にか7組に来ていた。ある意味、職員室に入るより嫌だ。
『智浩くんは無愛想で有名だけど、この前喋った感じではそんなに怖そうじゃなかったし…、でもこの前は怒ってた訳じゃないから怒ったら怖いかもだし…』
考えだして自分に非があると分かると、どんどんマイナスになってくのは人間誰しもあるだろう。私は今まさにその状態。混乱の中で導き出した結論、
『とりあえず謝る、ひたすら謝る』
だった。心臓はバクバク、何だか変な汗もかいてきた。
「……そこで何してるの?」
緊張が最高潮な私のちっちゃい心臓は今ので破裂しただろう。…………間違いない。
「お〜い、大丈夫かぁ?」
声の主は私の目の前で手をヒラヒラさせる。どこからかスペアの心臓を持ってきて、表情や身体は固まったまま首だけ動かし声の主をみた。
「あ…っ、幸浩くんだ…」
「どうしたの、なんかめちゃくちゃ固まってるよ?」
「あっ…えっ…えっと…」
しどろもどろになりながらも、幸くんに事情を話す。
「…………」
もしも〜し?幸くん、表情が智浩くんみたいになってきてますよ?
「ゆっ…幸浩くん?」