第5話
それからギリギリに教室に入った私の頭の中は、さっきの間宮兄弟の事でいっぱいだった。“間宮くん”は二人いて、“教科書を渡してくれた”幸くんのお兄ちゃん智浩くんが“無愛想な間宮くん”で…。
「…なんだか面白そうな二人」
思わず口に出してしまう。隣の席の友達は私の独り言に不思議そうな顔をしている。
『あっ…、そういえば落書きしたまんまだ』
智浩くん怒ってないといいけど…なんてまた独り言いわないように心の中で呟く。
そしてこの落書きにより、私のこれからが変わるとは思ってもいなかった…。
間宮兄弟との一件から数日経ち、彼らとも顔を合わすことなく私は学校に通った。7組は私の教室から離れてるだけあって友達も用がない限りは放課に会いに来なかったし、私も会いに行くことはなかった。
そんなある日の事――。
「めぐ〜っ」
クラスの男の子が私を呼んだ。ちなみにクラスの男の子達も女の子達も私のことを“めぐ”と呼ぶ。
私達のクラスって、みんな仲が良くてお互い苗字では呼ばない暗黙の了解がある。
「なに〜?」
「珍しく男のお客」
「…珍しいってなんか失礼じゃない?」
「事実じゃん」
クラスメイトはキシシと笑いながら廊下を指指した。ありがとうといって、廊下に出る。男の子のお客さんって誰だろ?
廊下に出た私は目の前の光景にまず驚いた。驚きの次は『何故この人が?』という疑問が浮かび上がった。その人物は噂の通りにムスッとし無愛想っぷりを発揮しつつ、誰も寄せ付けないオーラでそこに立っていた。
記憶から忘れがちになっていた、間宮兄弟のお兄ちゃん“無愛想な間宮”こと間宮智浩くん。クラスの女の子なんて怖くて遠巻きに智浩くんを見ている。
「こっ…こんにちは。どうかした?」
声をかけると、智浩くんはこっちを向いた。ちょっとびびったりして…。
「……」
「智浩くん?」
私を訪ねてきたんだよね…?何か悪い事したかな…??
「…今日放課後予定は?」
おぉっ!喋った!!何で声が聞こえてくる。
「…俺話せない訳じゃないんだけど…」
智浩くん心なしか声が沈んでます。すみません、私もそう思いました。
「で、予定は?」
「あっ…えぇっと、今日はないよ!」
慌てて返事する。部活に入ってないから、友達と用がなければ放課後はほとんど暇してます。
「じゃあ放課後7組まで来てくれ。じゃあ」
智浩くんは用件だけさっさというと、スタスタ歩いていってしまった。すれ違う女の子達はちょっと避け気味だし…。
呆気にとられていた私はチャイムの音に反応して、やっと動きだした。
席に座ると隣の友達に
「何の用事だったの?」
と聞いてきた。私は
「さぁ?」
と答えるしかなかった。