第24話
あの日以来私達の間にはここ最近のぎこちさは消え、以前よりも仲良くなった。
お互いの教室の行き来も以前よりも増して、ゆかりも混ざって4人で寄り道しながら帰ったり休日には遊んだり。
私と幸くんはというと曖昧な関係になってて、智浩くんと三角関係とも言い難くなってしまっていた。私がはっきりしないから、こうなってしまったのはわかってる。
そんな関係も最初のうちはよかったけど、私は2人の誠意をバカにしてるというかけなしているというか、このままではいけないような気がしていた。
「ズルイよね…」
素直に気持ちを打ち明けてくれた二人に、私を好きになってくれた二人に私も素直な気持ちで答えなくては…。
素直な気持ちでと思ってから何日かたったある日。
私は胸にモヤモヤを抱いたままでいた。結論が出ていない、でも早く決めなきゃ二人に悪いという葛藤の中、今日もゆかりと共に7組に向かっていた。
「も〜、あんたいつまでウジウジウジウジ……してるのよ!!」
ウジが多いぞ。
「だって…」
「そんなに迷うことなの?もっとシンプルに考えればいいじゃん」
それが出来たらどんなに楽だろう。本日何回目かのため息が出た。
「あれ?7組まだ終わってないや」
いつもなら帰りのHRも終ってる時間なんだけど、珍しく教室は全生徒がいた。誰か何かやらかしてお説教でもくらっているのだろうか?
私達は間宮兄弟と約束をしていたので、廊下で待つことにした。
「なんか空気重そうだね…」
「確かに…お説教かな?」
2人で居残りの内容を推理していると、一斉に椅子のガタガタという音がした。
「あっ、終わったみたいだね」
教室から先生が出ていくと、続いて生徒が出ていく。このまま私達が入ろうとするのは無謀だから、生徒の出ていくのが落ち着いてから教室を覗いた。
間宮兄弟は深刻な表情をして自分達の机の所にいた。幸くんは…なんだろう、なんか悲しそうなというか辛そうな顔してる。智浩くんなんて普段の無愛想っぷりはどこへやら、いつも眉間に寄せてる皺もなかった。
「幸浩くん智浩くん終わった〜?」
私が声をかけようか迷っていると隣でゆかりが先をこした。
全く、この子は2人の事はお構いなしなのだろうか。
「あっ、ゆかりちゃん。ちょっと待ってね」
声に反応した幸くんが慌てて帰り支度をはじめた。智浩くんもそれに従った。
2人してなんであんな深刻な表情してたんだろ?
「2人共お待たせ!」
「いえいえ、なんか今日は終わるの遅かったね」
「色々あってね」
廊下に差し込む陽はすでにオレンジ色をしていた。外からは運動部のかけ声、校舎の外れの方からは吹奏楽の音。
「……この風景とか部活してる声や音って、いつも当たり前に感じてたけど…」
珍しく智浩くんから話題を切り出してきた。
「うん、」
がしかし、私があいずちをうってもその言葉の続きを智浩くんの口から出ることはなかった。
或いは隣にいた幸くんだけは、その先の言葉を知っていたのかもしれない。
私は何とも言えない胸のざわめきを抱きながら、家に帰っていった。
翌日、私はいつもより早く目が覚めた。カーテンを開けると視界に広がった青い空を雀が飛んでいて、眩しい太陽の光が私を照らした。
なんだか気分がよかったから、私は学校に行く前に散歩に出かけることにした。
この時は気付かなかったけど、いつもより早く目が覚めたのも散歩に行く気になったのも一種の虫の知らせだったんだろう。
スニーカーを履き外へと出ると、この時間にいるはずのない人影があった。
私のよく知ってる後ろ姿。そこには私服で立っている幸くんがいた。
「おはよう」
声をかけるとゆっくり振り向く幸くん。心なしか表情が暗い気がしたのは、私の勘違いかな?
「おはよ、早いね」
「それは幸くんもでしょ?どうしたの?」
「……どこかに行くの?」
「えっ…あ、早く目が覚めちゃっから、散歩にでも行こうと思って」
「じゃあ、俺も付き合うよ」
何でここにいるのかという質問、何だか上手く誤魔化されちゃった。でも幸くんが暗いのはやっぱり気のせいではないみたい。
私達は特に会話も無いまま、近くの公園へと向かった。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました!
更新が大変遅くなり、楽しみにして下さってるみなさんすみませんでした。
このお話もあと2話くらいで終わりです。次作もぼちぼちと考えはじめてます。
次話もよろしくお願いします!




