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無愛想な彼  作者:
23/25

第23話

「………」


私は声を出すことができない。なんでかわからないけど、なんというか言葉が見つからないというか…。

女の子達が教室を出てから数分がたったけど、私達の間には会話はなくいつもより長く感じる時間だけが過ぎていく。


私はずっと床を見ていたけど、ふと顔を上げたら智浩くんと目が合ってしまった。すぐに反らせばいいのに、そうすることができない。


「……久しぶりにちゃんと顔を見た気がする」


智浩くんは苦笑した。初めて見る表情かもしれない。


「……そうだね」


私もちょっとだけ頬が緩む。


「幸に怒られた………っていうかキレられた。恵を困らせるようなことするなって」


幸くん知っちゃったんだ、昨日の出来事。私は自分のことでいっぱいいっぱいだったのに、幸くんは心配してくれたんだよね…。


「勝手だってわかってたけど、本当に自分勝手だったな…」


ポツリポツリと話す智浩くんの表情は少しだけ暗い。


「一番迷惑をかけたくない恵本人に迷惑かけた」


ごめん、と頭を下げる。


「今更ズルいって思ったけど、幸と帰る姿とか見てたら、いてもたってもいられなくなって」


智浩くんの切な告白に、私の胸も締め付けられたように苦しくなる。私は智浩くんがそう思っていてくれたも、見ていたことも知らなかった。


「俺、知り合って間もない人を付き合うなんてあり得ないっていったよな」


「…うん」


「幸は付き合っていくうちにお互いを知ろうとするタイプで、俺はその反対なんだ」


顔や好みは似てても2人の付き合い方は決定的に違っていた。

もちろん2人がそうであるとはよく知らずに、ただ智浩くんからの一言に傷つき…そして楽な方を選んでしまった。


「俺はもっとお互いを知ってから付き合いたかった。口数の少なさが災いしたんだな…」


智浩くんは私の頭をぽんぽんと叩くと、教室の入口を開けた。


「…そういう事だ。俺の話は終わり」


私にいってるように聞こえなくて…、

入口をみたらそこには複雑な表情をした幸くんがいた。


「あとはお前に任せるよ」


智浩くんは手をヒラヒラやりながら教室を出ていった。


「…あいついいとこどりじゃん」


私は幸くんと2人きりになってしまった。今日は初めて見る幸くんの姿、もちろん顔もちゃんと見れない。


「朝、心配したよ」


「…ごめんなさい」


「まさか昨日、智が告るなんて思ってもなかったからさ」


やっぱり幸くん、智浩の気持ち知ってたんだ。


「めぐが智のこと引きずってたのも聞いた。でも俺は別に怒ったりやめろとかいわない」


幸くんは教室の真ん中にある椅子に座り、膝の上で手を組んだ。こんな姿にも思わずドキッとしてしまうあたり、私は幸くんの事も好きなんだろう。

気持ちははっきりしているのに、やっぱりこんな仕草にドキドキさせられてしまう。


「…めぐも迷ってるんだろ?」


「………」


「素直にいってくれていいよ。ゆかりちゃんの話でなんとなく智のこと引きずってたのも、それでも俺を好きになろうとしてくれてたこともわかってるからさ」


ゆかりちゃんに話を聞くまで気付かなかったのは、ごめんと苦笑した幸くん。


「…2人とも優しすぎるよ。私にはもったいないくらい」


さっきの2人みたいに、私も苦笑い。

本当に、優しすぎる。私なんて幸くんにフラレても仕方ないと思うのに、フルどころか優しくしてくれる。

これじゃ私、ただの欲張りだ…。


「まったく、双子ってのも嫌なもんだよ。特にこういう場合はさ」


それから幸くんは智浩くんとの

「双子で損した話」

を聞かせてくれた。

初恋も同じ相手で、2人で取り合ってるうちにその女の子は他の子と付き合っちゃったんだって。


「智、無愛想だけどその割りに優しいところあるし」


幸くんは智浩くんのそんな所が好きなんだって。ギャップが我が兄ながら可愛いらしい。


「でも好きな子を譲ることも、あいつを貶めるのも出来ないんだ」


幸くんは昔話をして遠回しに私にいってくれた。

『どちらにいくかいかないかは決めて欲しい』


これは迷いそして自分の楽な方へいってしまった私への罰にして、もっとも過酷な試練だった。

久しぶりの更新でした!いつも楽しみにして下さってるみなさま、ありがとうございます。 ここまで読んで下さったみなさまもありがとうございます。

この連載もそろそろ終わりに近づいて来ました。最後はどうするかまだ決めかねてますが、最後まで頑張ろうと思います。

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