第22話
暗かった部屋が一気に明るくなりようやく明るさに慣れた頃、私は険しい表情をした大人っぽい女の子達に囲まれていた。
「………」
みんな無言で私を睨んでるから、怖さ倍増。呼び出しっててっきり生徒指導のおじいちゃんかと思ってた。
「ねっ…ねえ、先生知らない?」
「………」
「私、先生に呼ばれてここに来たんだけど…」
「生徒指導のおじいちゃんならいないよ」
女の子達のなかの誰かがいった。なんかここの雰囲気めちゃくちゃ悪く感じるのは私の気のせい?
「えっ…だって私ここに呼び出されて…」
もしかして…
「呼び出したのは私達」
やっぱり…。嫌な予感ほどよく当たる。でもこの場合、ハズレてほしかったなぁ…。
「あなた、なんで私達に呼ばれたかわかるよね」
わかってますよ。だって私も女だし、事情はわかる。元はといえば、中途半端にしてる私が悪かったんだから。中途半端だったという自覚はある。
「その様子だと自覚はあるみたいだね」
「あなた智と幸のどちらかにしなさいよね。付き合うなとかはいわないけど、独り占めとかってさナシじゃない?」
部屋には3人女の子がいて、1人はリーダー格の子、1人はその子分ぽい。残りの1人は内気そうな子。
この面子と状況をみると、なんか因縁つけられてるというか、圧倒的に私が不利。
黙っていると案の定、
「あんたのせいで、智にフラれた子いるんだから」
なんていってきた。
「ちょ…ちょっとまってよ。確かに私は幸くんと付き合ってて智浩くんとも繋がりが全くないわけじゃないけど、だからってフラれたとか言われても…」
きっと内気そうな子がフラれたんだろう。2人は友達で、フラれた友達を思って私にいってきてるんだろうけど、そんなこと私に言われたって…。
「何よ、あんたがフラフラしてるから悪いんでしょ?」
それはそうなんだけど…。
私にはまだ心の整理ができていなかった。
だけどこのままズルズル幸くんと付き合うことはできない。
…………なんでそう思うんだろう。
「なんとかいいなさいよ」
リーダー格がしびれをきかせたその時、先程鍵をしめられたはずのドアが大きな音をたてて開いた━━━━いや外れた。
「………アンタらそれは卑怯だと思う」
そこにいたのは肩で息をした智浩くん。幸くんじゃなくて智浩くんが駆けつけてくれた。
助けに来てくれた嬉しい気持ちと、会いたくなかった気持ちが交差する。
「とっ…智」
「これはね…」
女の子達は突然の智浩くんの登場に、見られたくない現場を目撃され焦っている。
「この子が悪いのよ。智と幸をもて遊ぶから…」
しかし智浩くんは彼女らを冷たい目で見るだけで、何もいわない。私でもそんな目で見られたら普通にしていられない。
「…………いいよ行こっ」
今までだんまりだった内気そうな子が、2人を連れていこうとする。
「………俺、いったよな。キミの気持ちは嬉しいけど、こういうことだけはしないでくれって」
「…っ、ごめんなさいっ」
女の子は目を涙を浮かばせて、生徒指導室を出ていった。残りの2人も私を睨み、それに続いた。
女同士だから殴り合いとか暴力沙汰にはならなかっただろうけど、とにかく最悪の事態を免れてよかった。
私は知らず知らずのうちに力をいれていた体の緊張をとくことができた。
「恵…大丈夫か?」
でも今はちょっとだけ智浩くんの優しさが、苦しかった。