第15話
「………俺はあり得ないと思う」
「えっ…」
私の『知り合ってすぐに付き合えるか』の質問を智浩くんは否定した。
「なんだよ、その質問。告白でもされたのか?」
久しぶりの会話なのに智浩くんの言葉は私の耳には届かなかった。
――――『あり得ない』智浩くんのその一言が、胸を締め付ける。
「…………っ!!」
私は何もいわず立ち上がった。あり得ないとはつまり、私のこともそういう対象には見れないということであり…。
「…幸なら『付き合える』っていうんだろうけどな」
幸くんはね。でも『智浩くん』は?あり得ないの?
「…私、幸浩くんに付き合おうっていわれた…」
「…よかったな。幸みたいに人気者に告白されて。俺みたいな無愛想な奴に告白されるより全然いい」
立ってるから、智浩くんの頭しか見えない。でも今は顔を見られたくなかったし、智浩くんの顔が見れなくてよかった。
私なんか泣きそう。智浩くんの顔みたら涙が溢れそうだから―――。
好きな人に『告白されてよかったな』なんていわれたくない。
私は智浩くんが好き。
知り合って間もないし、数える位しか話した事ないけど好き。きっかけなんてわかんない、でも好きと思ってしまったから止まらない。
「…返事してないんだろ?」
その先のセリフ、なんとなく想像できる。でもお願いだからいわないで。私、貴方だけにはいわれたくない…。
「恵が幸に好意を持ってるのはなんとなく分かってた。…付き合えよ」
空が遂に泣き出した。ポツポツと大粒の滴を落とし、制服に染みを作る。
私の瞳からも大粒の涙が落ちる。気持ちに気付いたのに、早くも終わってしまった。伝える間もなく砕けてしまた。
次の日、私は幸くんに返事をした。もちろん付き合うという返事。
元々好意はあるんだから、好きになれるはず。
「好きになりそうな人はいたけど、告白する前に終わっちゃった。それでもいいの?」
最初にいったけど、幸くんは
「これからそいつ以上に俺を好きになってくれるなら、いいよ」
そういってくれた。
甘い考えだと思った。汚いと思ったけど、それでもいいといってくれた幸くんを好きになりたいと思った。
何より智浩くんへの想いを忘れたかった。