第14話
幸くんが教室に現れてから、私はどうやってここにきたか全く覚えてない。確か………
「やぁ、めぐちゃん、ゆかりちゃん」
教室の入り口にいた幸くんはゆっくり私達の方へ近付いてきた。
「めぐちゃんちょっといいかな…?」
幸くんは笑ってるけどいつもと違って、あの笑顔は少しくもっているように感じた。
『何で幸くんが会いに来てるの〜っ!?』
私が脳内プチパニックを起こしていると、
「ほらっ、恵いっておいで」
ゆかりに背中を押され、半ば強制的に私は幸くんの傍に行く。もちろん心臓はバクバク。幸くんと二人っきりは無理だよ〜っ。
「じゃあ恵をよろしくね」
「ありがとうね、ゆかりちゃん」
――――――それからいつの間にかどっかの階段の踊り場に来ていた。自分でちゃんと歩いて来れたのかすら自信がない。
「そんなに緊張しなくたって、取って食べちゃう訳じゃないよ」
幸くんは苦笑して、私の額にデコピンをした。
ピンポイントに当たったのか、意外と痛くて思わず額を押さえてしまった。
「ゴメン、ちょっと意地悪しちゃった」
「…酷くない?」
「しょうがないよ、めぐちゃん走って逃げたまま会いに来てくれないからさ。ちょっと意地悪したくなったんだよ」
いきなり本題ですかーーっ!!私はその話題には触れてほしくなかったのに、幸くんはいとも簡単に話をふってきたよ。
「俺、結構ショックだぉたんだけとな。女の子に逃げられてさ」
「は…ははは…」
もう笑うしかない。当たり障りがない程度に早くこの話題を切り上げたい…。
「でさ、あの時俺に好意があるとかないとかいってた様に聞こえたんだけど…」
「……」
「…どういうことか教えてくれない?」
さっきの表情からは変わって、幸くんは真剣な顔で私を見る。
笑顔とは違う幸くんの真剣な眼差しに、ちょっとだけドキドキしてしまう。同時に、智浩くんもこんな表情をするのかと思ってしまった。
私は幸くんを通して智浩くんを見ていた。
「俺はめぐちゃんが好きだから、めぐちゃんが俺に少しでも好意を持ってくれてるなら付き合ってほしい」
幸くんからの告白。あり得ないと思っていたことが、起こってしまった。
「会って間もないのに、何で好きになったか不思議そうな顔してるね」
「だって…」
「めぐちゃんが俺に好意を抱いてくれてるのと同じだよ。君だって、ちょっとしか話した事ないのに俺に好意を持ってくれてる」
女の子達に人気の幸くんが、私を好きだという。私が幸くんに好意を抱いているのと同じように、ただ『好き』と思ってくれている。私は『好き』ではなく『好意』なのに…。まだ決着はついてないのに…。
「返事は明日くれないかな?他の奴に先越されたくないから」
『いい返事待ってるよ』そういって幸くんは階段を降りていった。
その後授業を受ける気にもなれず、最近よく来るようになった屋上でサボることにした。今日の空は今にも雨が降りだしそうな、曇り空だった。この前昼寝をした場所に座り、空を仰いだ。
幸くんからの告白、嬉しいに決まってる。ミルクティーの様な柔らかい髪の毛とか優しい笑顔とか、いつも見ていられるならどんなにいいことだろう。
「こらっ」
今一番聞きたくて聞きたくない声がする。
智浩くんだ。
「授業サボっていいのか?」
智浩くんはコンビニの袋を下ろし、私の隣に座った。コンビニ袋から雑誌が透けて見えるところから、最初からサボる気だったのが伺える。
「智浩くんこそ…」
「俺はいいの。成績優秀だから」
ニヤリと笑う姿は、やっぱり幸くんとは違っていた。でも今は見たくない。
私はうつ向いた。
「…なんか元気ないな」
「うん、ちょっとね」
智浩くんは袋から雑誌を取り出す事もなく、私がさっきしていたように空を仰いだ。
「…曇りはなんかそういう気分にさせるんだよな。普段は平気なのに、曇ってるだけで何となく気持ちも落ち込む」
私が落ち込んでるように見えたのかな?
「ねぇ、智浩くん」
少しの沈黙の後、私は話かけていた。
「何?」
「知り合ってから間もないのに、好きになるとか付き合うってどう思う?」