第11話
「ちょっと恵!!あんたどこにいってたのよ。もう四時間目だよ」
屋上から教室に戻ると、ゆかりがさっきの時間に使ったであろう教科書を乱暴にしまいながらいう。
「今日あんたの当たり日なのに、いないから隣の私がかわりに当てられて散々だったんだよ」
……だから機嫌が悪いのか。
当たり日というのは自分の出席番号がその日の日にちと同じだったり、先生によっては日付+10とか意味のわからないことして当てられる日ってこと。
「ごめん」
といって椅子に座る。
「あれ?その制服誰の?男の子の上着だよね」
ゆかりは目ざとく左手にもった制服に気付いた。そりゃ私が男の子の制服持ってれば簡単に見つかるか。
間宮兄弟どちらかの制服というべき?
「大きな声ださない自信ある?」
「あるある♪」
さっきの不機嫌さはどこへやら。早く言えと目がいっている。私はため息をつき、制服内側の名前をゆかりに見せた。
「間宮兄弟のどっちかの」
「…………マジ?」
ちゃんと約束は守ってくれたようだ。だって『間宮』ってかいてあるから、どっちかしかないでしょ!?
「…で、なんで恵が間宮兄弟のどっちかの制服を持ってるわけ?」
「そう、そこなのよ。私もわかんないんだって。屋上にいったら寝ちゃってて、目がさめたらこれが私にかけられてたの」
「へぇ〜…」
どっかのボタンですか?
「でも早く返さなきゃ駄目だよね」
朝は上着着てたのに、突然着てないとおかしいし。
「幸浩くんに会える口実ができてよかったじゃん」
「そうだね〜」
幸くんに会えるもんね…………………ん?ちょっと待って。
「ゆかりさん」
「何?
「さん」
づけ気持ち悪いよ?」
「私、幸浩くんなんていってないよ?」
「あれ?幸浩くん狙いじゃないの?てっきり幸浩くんの事好きなのかなって思ってた」
私だって知りませんよ。そりゃ気にはなってたけど、好きとかそんなんじゃない…と思う。
「その様子だと好きとか自覚してないんだね。まあいいや、昼休みにでも返してあげなよ」
丁度いいタイミングでチャイムが鳴り、先生が入ってきた。
ゆかりに爆弾を投下され、授業中は
「幸くんのこと好きなのか」
についてのことで頭が一杯で授業は上の空だった。
当たり日なのでもちろん先生に当てられて、答えれなかったのはいうまでもない。
そしてまた、7組の前で制服を抱えて立ってる私。いつもは長い50分の授業なんて、悩みだしたらあっという間だった。
幸くんが好きなのかどうなのか、結論は出なかった。ここで転びかけたとき助けてくれたし 優しいし人気はあるけど、それだけで
「好きだ」
というにはなんか違う気がする。でもそんなのもありかな?と思ってる自分もいる。
「結局、好意はあるって事だよね」
「誰に?」
「ん、幸ひ…」
「幸浩くんに」
といいかけて、やめた。誰かが後ろにいる?
ゆっくり回れ右をすると、にっこり笑った幸くん本人がいた。
「!!!!」
「やぁ、めぐちゃん」
鳩が豆鉄砲をくらった顔って、今の私の顔だと思う。相当不細工な顔して驚いてる私。
「俺に好意って…?」
「なっ…なんでもないの!!これありがとね、じゃあ」
半ば押しつけるようにして幸くんに制服を渡し、私は教室へ向かって走る。好意を持ってるってバレたよね?なんかすごく恥ずかしい…。
勢いよくドアを閉めた。気がつくとまた屋上に来ていた。