義理の姉のわら人形を必死で作っている人にも分かる解離性障害
僕には、自分から物事を決定する能力がない。だから僕の全ての行動は、自分の内に潜んでいる謎の三人の人間の助言によって決まる。そんな三人について紹介しようと思う。
・純之介…心も体も経歴も全てに対して何の混じりけも無い少年。欲望も無ければ、希望も無い。高慢さも無ければ、謙虚さも無い。好きな食べ物も無ければ、嫌いな食べ物も無い。ロープでぐるぐるに縛りつけられた織田裕二を、遠心力を駆使してハンマー投げする気も当然無い。
・欺之介…父親から、「人を欺く人間になって欲しい。」という思いからこの名前を付けられた。相手を冷ややかな目でしか見る事が出来ず、協調性という言葉の存在さえ疑問符を打つ。このような性格にも関わらず、常識を勉強する事に執拗なまでの情熱を持つ。
・淫之介…名前の通り、とても性欲が強い。当然女好きだが、男も比較的得意分野。父親を「勃太郎」、母親を「熟女」、妹を「猥女」と呼ぶ。好きな食べ物はバナナだが、便宜上明らかにおかしい。将来の夢は、全世界の人間と枕を交わす事。好きな芸能人は叶姉妹の顔以外の部分。
僕の頭の中はこんな感じ。といった所で、今年の7月に地元のショッピングセンターで買い物した時の僕の心境を、今紹介した三人で説明していく。
<situation1:服屋での心境>
僕:(この骸骨の付いたブレスレット良いなぁ、でもこの鎖形のブレスレットも良いなぁ、さぁどっちを選んだら良いか分からない。あぁどうしよう、このままでは下積み時代の長かった菊池寛を想像しながら心筋梗塞を起こしてしまう…)
純之介:(そんなに迷いがあるなら、ずっと迷って心筋梗塞起こしちゃえば良いじゃない。人間誰しも最初はゆりかごを経て最終的にはタンチョウになって空に飛び立つ事になるんだからさぁ、そんなタンチョウだって全く空を飛べない事に悩んでいる位なのに…もしかして発作状態が心に余裕を得るきっかけになるかもしれないよ。理由は分からないけど…)
欺之介:(男には迷っている暇なんて存在しない、迷っているその瞬間にお前以外の誰かが学業に励んで社会に貢献しているんだ。俺の見た限りでは骸骨の付いたブレスレットの方が最高だと思うんだ、さっさと決めて「成功」という名の人生の収穫を掴むんだウジ虫君!)
淫之介:(僕は骸骨の付いたストラップの方が良いなぁ~、だって昨日ソープランド行った時に鎖で拘束された女がトラウマだもん。喘ぎ声が、尻にストロー突っ込まれて鳴くガマガエルみたいだった…)
どっちも買わないことにした。
<situation2:食品売り場での心境>
僕:(今日の夕食お寿司にしようかなぁ。ん?10貫で500kcalで498円。でも明らかに寿司の種類が貧相だよなぁ。あれ?このお寿司の方が良いなぁ。中トロ、イクラ、ウニ付きで16貫。でも750kcalでカロリー高いし、しかも798円は無いよなぁ。さぁどっちを選んだら良いか分からない。ヤバい、このままだと内田篤人が僕と同い年であるというショックに準ずる光景に遭遇してしまうぅ…)
純之介:(選んでいるのがどちらも寿司なんだから、2つとも買えば良いじゃん!2つ合わせてカロリー1250kcalだって言うかもしれないけれど、要は心の持ちようさ!2つ合わせて200kcalだと思っちゃえばOKなんだ。今日はたくさん食べなかったって事でセーフセーフ!内田篤人って静岡県函南町出身でブンデスリーガ・シャルケ04所属の右サイドバックだっけ?全部勘で言ったけど正解?)
欺之介:(ウジ虫君、今日の夜は寿司を食べるという愚行に挑戦しようとしてるのかい?そんな愚物にベクトルを向けないで、夜はカップラーメンで簡単に済ませろ!そして余った時間で、自分の本当に夢と希望を抱ける道への扉を開くんだ、いつか自分の辿った軌跡が、過去に遭遇した人間達と比べて、どれだけその人間が愚民だったかを気付ける瞬間が来るんだ。その時にウジ虫君が愚民になってはいけないぞ。何が言いたいかというと、俺は寿司が大好きだという事だ。)
淫之介:(僕は中トロの付いた寿司が良いなぁ、この前カジキマグロと獣姦したけど最高だったよ。え?何が言いたいかって?地球に生まれし生物全て仲間だっていう事だよ。LOVE&PEACE!!!)
その夜は何も食べないことにした。
僕の心と体が脆くなっている事に気付いた。全ての人間が怖い。高校の卒業アルバムの学級写真のみんなの笑顔が、僕をあざ笑うかのようにしか思えない。テレビ画面の砂嵐をずっと見ていた日もあった。もうこのままだと生きていけないんじゃないかと考えた。そんなある日今の状況を打開しようと思って、名古屋にいる親父に電こんな状況が続いていくごとに、話で相談する事にした。
僕:お父さん、内に潜む欲望の一つ一つが社会で全く理解されない気がして生きていくのが怖い。どうしたら良いのか分からない、もう死にたい…
父:クヨクヨするなぁ。お前がそうやって悩む事が社会で全く理解されないんだよ。自分の存在なんて本当に大した事ないんだって。そんな事考えるよりも、空を見ろよ。どうだ?
僕:真っ青な世界が一面に広がってる…
父:どんだけ色んな事に悩んでいたか知らないが、空を見るだけで悩みが吹っ飛ぶくらいの世界で生きているんなら、自分の思うがままに生きていけ。
この電話の後、親父は何をつまらない事をわちゃわちゃ喋っているのかと思った。親父はやっぱり下らない存在だと納得した。そしてまた、テレビの砂嵐に写るアイドルを凝視していた。
そして次の日、いつものように三人の討論が始まった。テーマはさっき出てきた親父の存在。親父を単なる50過ぎのオッサンと感嘆する者もいれば、有無を言わずに憎たらしく感じる者もいるし、はたまた今は無理だけど10年後に性の対象として見ると訴える者もいる。こんな混沌とした討論が二次関数のように染まる間、僕は真っ黒に染まった空を見上げてみた。そのグラフィックを大きく駆け巡っているのは小さい頃から好ましく思っていなかったカラスだった。でも、そんな世界で、カラスは夕焼けに染まっていく瞬間を壮大に表現していた。僕はそれ以来、殺戮するべき者は、動物や植物に関しては一つも無いと思った。殺戮するべきは動物や植物を苦しめる病だけだと心を決めた。
人間の真想というものは今、10年後、20年後で全く違ってくるかもしれないですが、今回は23才の自分の心の鏡に映っている物をあるがままに文章にさせて頂きました。こんな至らない文章にも関わらず、読者の方々は人生のほんの一部分を刻んでくれた事を心から感謝します。僕が笑ったらあなたが笑う、僕が笑ったらあなたが泣く。どちらの人生を選ぶのが正しいかは分からないですが、これからも読者の方々の人生を心から楽しめる世界に出来る様、日々取り組んでいきたいと思います。