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冥界  作者: 尾花となみ
EpisodeⅢ 冥界の間奏曲
8/21

Intermezzo Ⅱ―A Solo Scene①―

ショートポエム系のサイドストーリーです。

本編には直接関係ありませんが、読むと登場人物達の心情がわかります。

次話へ行く為の補足と思ってください。


一人・二人・三人のシーンを色々交差して載せています。

「探している魔石の……リキア様とはどんな方ですか?」そんな事、声に出して聞けない。

 彼にも、彼女にも聞けない。


 ルリア様の、双子の妹で喜怒哀楽の女神、リキア・ヴィー。そしてカリスト様の想い人。花嫁……。

 一人、この世界を黒い魔石の姿で彷徨っている。


 私に似ているというリキア様……。違う、私が似ている。

 同じように聞こえてその意味は全然違う。


 リキア様が先にいて、私は後からの存在。

 だから、彼から見ても、彼女から見ても、私は私じゃない。


 私は、リキア様に似ているユリと言う人間。それだけ……。

 そして、二人が私を見るとき、リキア様を見ている。ユリと言う私を見ているわけじゃない。


「私のこと、どう想っているのですか?」そんな事、声に出して聞けない。

 彼にも、彼女にも……。それとも聞けば答えてくれるのかな。


 魔石を――リキア様を――探すだけの存在。そう言い切ってくれれば少しは気持ちが楽になるのかな。

 でも、答えてくれなかったら?


 簡単に答えられず、二人を苦しめてしまったら?

 私と言う存在が側にいるだけで苦しんでいる二人を、もっと苦しめてしまったら?


 二人を苦しめて、リキア様を思い出させて……。

 それなのに、リキア様を探し出す事が出来なくて……。


 私はなぜ、ここにいるの?

 何も役に立たない。二人を苦しめるだけの存在が。


 どうしたらいいのか分からない。どうにも出来ない。

 彼に、彼女に……カリスト様に、ルリア様に……寄り添いたい。側にいたい。


 でも私は人間で、許されることじゃない。


 リキア様を探し出さなくては。

 でも見つけたくない。


 見つけたら、私はもういらない。

 二人の側にいられない。


 リキア様の代わりなんていない。リキア様の代わりなんて誰もなれない。

 でも、身代わりでいいから……私を見ないで、リキア様を見ていていていいから、側にいさせてください。


 身代わりでいいから、抱きしめて欲しい。優しく話しかけて欲しい。

 でも……彼にとっても、彼女にとっても、やっぱりリキア様の代わりなんていない……。


 私は、探し出す事も、身代わりになる事も出来ない……。



ユリのひとり言

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