Intermezzo Ⅱ―A Solo Scene①―
ショートポエム系のサイドストーリーです。
本編には直接関係ありませんが、読むと登場人物達の心情がわかります。
次話へ行く為の補足と思ってください。
一人・二人・三人のシーンを色々交差して載せています。
「探している魔石の……リキア様とはどんな方ですか?」そんな事、声に出して聞けない。
彼にも、彼女にも聞けない。
ルリア様の、双子の妹で喜怒哀楽の女神、リキア・ヴィー。そしてカリスト様の想い人。花嫁……。
一人、この世界を黒い魔石の姿で彷徨っている。
私に似ているというリキア様……。違う、私が似ている。
同じように聞こえてその意味は全然違う。
リキア様が先にいて、私は後からの存在。
だから、彼から見ても、彼女から見ても、私は私じゃない。
私は、リキア様に似ているユリと言う人間。それだけ……。
そして、二人が私を見るとき、リキア様を見ている。ユリと言う私を見ているわけじゃない。
「私のこと、どう想っているのですか?」そんな事、声に出して聞けない。
彼にも、彼女にも……。それとも聞けば答えてくれるのかな。
魔石を――リキア様を――探すだけの存在。そう言い切ってくれれば少しは気持ちが楽になるのかな。
でも、答えてくれなかったら?
簡単に答えられず、二人を苦しめてしまったら?
私と言う存在が側にいるだけで苦しんでいる二人を、もっと苦しめてしまったら?
二人を苦しめて、リキア様を思い出させて……。
それなのに、リキア様を探し出す事が出来なくて……。
私はなぜ、ここにいるの?
何も役に立たない。二人を苦しめるだけの存在が。
どうしたらいいのか分からない。どうにも出来ない。
彼に、彼女に……カリスト様に、ルリア様に……寄り添いたい。側にいたい。
でも私は人間で、許されることじゃない。
リキア様を探し出さなくては。
でも見つけたくない。
見つけたら、私はもういらない。
二人の側にいられない。
リキア様の代わりなんていない。リキア様の代わりなんて誰もなれない。
でも、身代わりでいいから……私を見ないで、リキア様を見ていていていいから、側にいさせてください。
身代わりでいいから、抱きしめて欲しい。優しく話しかけて欲しい。
でも……彼にとっても、彼女にとっても、やっぱりリキア様の代わりなんていない……。
私は、探し出す事も、身代わりになる事も出来ない……。
ユリのひとり言