Intermezzo Ⅰ―A Duet Scene①―
短編形式のサイドストーリーです。
本編には直接関係ありませんが、読むと登場人物達の心情がわかります。
次話へ行く為の補足と思ってください。
一人・二人・三人のシーンを色々交差して載せています。
「何を見ているのですか?」
「……別に……」そう言って彼は黙る。
いつもそう。私が話しかけても、彼は余計な事を話さない。
私は、私の仕事をするだけ。魔石を探す、その存在。
それ以上でも、それ以下でもない。
彼にとって……。
「ここにもないです……」町の風景が映し出された姿見を見ながら私は言う。
あの時の様な、激しい輝きを放つ魔石を持っている人はいない。
彼を見る。やっぱりあの顔をしている。
一番嫌いな時間。ないと言った後の彼の顔を見るのが一番嫌。
「今日はもう休め」そう言って彼は一人になりたがる。
私の存在など無視して、一人の世界へ。
あの人の事を考え、私の事を無視する。
私は無言で自室へ戻る。
本当は慰めたい。
本当は側へ寄って話しかけたい。
でも、それは彼が許さない。
そして、彼女も、私も許さない。
きっとあの人も許さないだろう。
暗く広い空間。でもそれ以上に私の距離は遠い。
涙が零れる。
どうしたいのか分からない。どうにも出来ない。
もどかしい想いだけが充満する。
暗く広く、哀しい空間。
それでも……私はここにいたい。
ユリ×カリスト。