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冥界  作者: 尾花となみ
EpisodeⅢ 冥界の間奏曲
11/21

Intermezzo Ⅴ―A Duet Scene③―

ショートポエム系のサイドストーリーです。

本編には直接関係ありませんが、読むと登場人物達の心情がわかります。

次話へ行く為の補足と思ってください。


一人・二人・三人のシーンを色々交差して載せています。



「ルリア様? どうされたのですか?」ユリが部屋に戻ってきた。

 今日の仕事は終わったみたいだ。


『……今日は?』本当はそんな事聞かなくても分かってる。もし見つかっていたら、私に言わないはずない。

 無言で首を横に振るユリを見つめた。


 全然似てない。

 リキは私と同じ顔・同じ声。鏡を見るかのように相手を見る。


 でも、違う。鏡のように、瓜二つじゃない。

 それなのに、どうして似てると思うのかしら。


「……ルリア様? あの、何か……」ユリの声で我に返る。

 いけない、ここはユリの部屋だった。

 用もなく訪れて、長居していい場所じゃない。


『明日は、休みよね。また私も一緒に行くから』本当はそんな事どうでもいい。

 ただ口から出た言葉。


 でも、ユリはとっても嬉しそうに微笑んだ。

「はい。よろしくお願いします」そう言って頭を下げる。


 全然似てない。

 だってリキは素直じゃないもの。絶対にこんな風に頭を下げたりしないわ。


 私を困らせても、ちょっと舌を出してごまかして、それで終わり。

 全然似てないわ。それなのに、なんでこんな気持ちになるのかしら……。




『お前……ユリの事好きなの?』肯定するかのようにインシーの古木が揺れる。

『……リキに似てるから……?』返事はなかった。


 年を取って、インシーの大木も素直じゃなくなった。

 昔は、私の言う事を素直に聞いていたのに。


『何? なんか文句でもあるの?』笑ったかのように葉がまた揺れる。

 年を取って、本当可愛くなくなったわね。


 でもここに来ると、私の気持ちも少し軽くなる。

 あの城は……悔恨の念でいっぱい。

 私と、あいつの……。どうにもならない想いがいっぱい充満してる。


「ルリア様。お待たせしました」ユリが帰ってきた。

 全部分かっているはずなのに……ユリは強いわ。

 私やあいつなんかよりずっと強い。


 そっか、そうなんだ。やっと分かった気がした。

 私やあいつにない強さ……。リキに似てる。

 全然似てないけど、ちょっと似てる。


「あ、あの……ルリア様?」なんで私、抱きしめているのかしら。

 ユリは動けないで固まってるわ。


 全然似てない。でもちょっと似てるユリ。

 私は今、リキじゃなくてユリを抱きしめているのよね……。

『……飛ぶわよ』誤魔化した。




 御免ね、ユリ。

 リキの代わりじゃないわよ。本当よ。


 だけど、あなたを見ながらリキを見ちゃうの。

 御免ね、ユリ……。



ルリア×ユリ

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