Intermezzo Ⅴ―A Duet Scene③―
ショートポエム系のサイドストーリーです。
本編には直接関係ありませんが、読むと登場人物達の心情がわかります。
次話へ行く為の補足と思ってください。
一人・二人・三人のシーンを色々交差して載せています。
「ルリア様? どうされたのですか?」ユリが部屋に戻ってきた。
今日の仕事は終わったみたいだ。
『……今日は?』本当はそんな事聞かなくても分かってる。もし見つかっていたら、私に言わないはずない。
無言で首を横に振るユリを見つめた。
全然似てない。
リキは私と同じ顔・同じ声。鏡を見るかのように相手を見る。
でも、違う。鏡のように、瓜二つじゃない。
それなのに、どうして似てると思うのかしら。
「……ルリア様? あの、何か……」ユリの声で我に返る。
いけない、ここはユリの部屋だった。
用もなく訪れて、長居していい場所じゃない。
『明日は、休みよね。また私も一緒に行くから』本当はそんな事どうでもいい。
ただ口から出た言葉。
でも、ユリはとっても嬉しそうに微笑んだ。
「はい。よろしくお願いします」そう言って頭を下げる。
全然似てない。
だってリキは素直じゃないもの。絶対にこんな風に頭を下げたりしないわ。
私を困らせても、ちょっと舌を出してごまかして、それで終わり。
全然似てないわ。それなのに、なんでこんな気持ちになるのかしら……。
『お前……ユリの事好きなの?』肯定するかのようにインシーの古木が揺れる。
『……リキに似てるから……?』返事はなかった。
年を取って、インシーの大木も素直じゃなくなった。
昔は、私の言う事を素直に聞いていたのに。
『何? なんか文句でもあるの?』笑ったかのように葉がまた揺れる。
年を取って、本当可愛くなくなったわね。
でもここに来ると、私の気持ちも少し軽くなる。
あの城は……悔恨の念でいっぱい。
私と、あいつの……。どうにもならない想いがいっぱい充満してる。
「ルリア様。お待たせしました」ユリが帰ってきた。
全部分かっているはずなのに……ユリは強いわ。
私やあいつなんかよりずっと強い。
そっか、そうなんだ。やっと分かった気がした。
私やあいつにない強さ……。リキに似てる。
全然似てないけど、ちょっと似てる。
「あ、あの……ルリア様?」なんで私、抱きしめているのかしら。
ユリは動けないで固まってるわ。
全然似てない。でもちょっと似てるユリ。
私は今、リキじゃなくてユリを抱きしめているのよね……。
『……飛ぶわよ』誤魔化した。
御免ね、ユリ。
リキの代わりじゃないわよ。本当よ。
だけど、あなたを見ながらリキを見ちゃうの。
御免ね、ユリ……。
ルリア×ユリ