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冥界  作者: 尾花となみ
EpisodeⅢ 冥界の間奏曲
10/21

Intermezzo Ⅳ―A Duet Scene②―

ショートポエム系のサイドストーリーです。

本編には直接関係ありませんが、読むと登場人物達の心情がわかります。

次話へ行く為の補足と思ってください。


一人・二人・三人のシーンを色々交差して載せています。



「リキ?」言ってから後悔した。

 ここにいる筈がない。いる訳がない。


 その名前を口に出すなど、どうかしている。

 言われた相手も、肯定する事も否定する事も出来ずに止まっている。


「すまない。ユリ……」

 馬鹿だ。


 いくら似ているからといって、リキとユリを間違えるなど……。

 双子で、姿も声も同じリキとルリを間違えた事もないのに、なぜユリと間違えた。


「あの……今日は……」ああ、町へ降りる日か……。

 人間のユリにこの空間は息苦しいのか、たまに体調を崩すときがある。

 そうなる前に、なるべく定期的に休みをやっている。今日はその日だ。


「でも! あの……今日はいいです。明日、お願いします」ユリはそう言って微笑んだ。

 似てない。別人だ。まったく違う。容姿だけならルリの方が似ている。でも……


「リキ……」抱きしめていた。

 似てない。別人だ。まったく違う。


 代わりになる相手などいない。リキの代わりなどどこにもいない。でも……

「……リキ……」抱きしめる手に力を入れる。


「違います!」そう言ってユリは俺の手を振り解き、その場から出て行ってしまった。

「……ユリ……」


 似てない。別人だ。まったく違う。

 リキの代わりなどどこにもいない。そしてユリの代わりだっていない。

 馬鹿なことをした……。




「昨日はすいませんでした」

「…………」謝るのは俺の方だ。ひどい、事をした……。


 リキの身代わりに、ユリを抱きしめた。

 だが、俺が謝るわけにはいかない。


 何も言わず、ユリを見つめた。

 似てない。別人だ。まったく違う。

 それなのに、なぜこんな気持ちになるのだろう。


「……今日は、俺が送ろう」そう言ってユリを引き寄せる。

 ユリの体が硬直する。転移の為の硬直? それとも俺に対する拒否か……。

「飛ぶぞ」ユリを抱きしめたまま転移する。


「帰るときはここで名を呼べ。迎えに来る」

「……はい……」俯いたまま、俺の顔も見ない。

 そのまま俺は一人城へ帰った。




 馬鹿なことをした。

 いつものようにルリを持たせればよかった。


 俺が一緒に飛ぶ必要などなかったはずだ。

 馬鹿なことをした……。


 名を呼ばれれば、また迎えに行かなくてはならない。

 また、転移するためにユリを抱きしめなければならない。


 馬鹿なことをした。

 リキの代わりなどいないのに……。ユリの代わりだっていないのに……。


 抱きしめたいなどと思うとは……本当に馬鹿なことだ……。

カリスト×ユリ

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