Intermezzo Ⅳ―A Duet Scene②―
ショートポエム系のサイドストーリーです。
本編には直接関係ありませんが、読むと登場人物達の心情がわかります。
次話へ行く為の補足と思ってください。
一人・二人・三人のシーンを色々交差して載せています。
「リキ?」言ってから後悔した。
ここにいる筈がない。いる訳がない。
その名前を口に出すなど、どうかしている。
言われた相手も、肯定する事も否定する事も出来ずに止まっている。
「すまない。ユリ……」
馬鹿だ。
いくら似ているからといって、リキとユリを間違えるなど……。
双子で、姿も声も同じリキとルリを間違えた事もないのに、なぜユリと間違えた。
「あの……今日は……」ああ、町へ降りる日か……。
人間のユリにこの空間は息苦しいのか、たまに体調を崩すときがある。
そうなる前に、なるべく定期的に休みをやっている。今日はその日だ。
「でも! あの……今日はいいです。明日、お願いします」ユリはそう言って微笑んだ。
似てない。別人だ。まったく違う。容姿だけならルリの方が似ている。でも……
「リキ……」抱きしめていた。
似てない。別人だ。まったく違う。
代わりになる相手などいない。リキの代わりなどどこにもいない。でも……
「……リキ……」抱きしめる手に力を入れる。
「違います!」そう言ってユリは俺の手を振り解き、その場から出て行ってしまった。
「……ユリ……」
似てない。別人だ。まったく違う。
リキの代わりなどどこにもいない。そしてユリの代わりだっていない。
馬鹿なことをした……。
「昨日はすいませんでした」
「…………」謝るのは俺の方だ。ひどい、事をした……。
リキの身代わりに、ユリを抱きしめた。
だが、俺が謝るわけにはいかない。
何も言わず、ユリを見つめた。
似てない。別人だ。まったく違う。
それなのに、なぜこんな気持ちになるのだろう。
「……今日は、俺が送ろう」そう言ってユリを引き寄せる。
ユリの体が硬直する。転移の為の硬直? それとも俺に対する拒否か……。
「飛ぶぞ」ユリを抱きしめたまま転移する。
「帰るときはここで名を呼べ。迎えに来る」
「……はい……」俯いたまま、俺の顔も見ない。
そのまま俺は一人城へ帰った。
馬鹿なことをした。
いつものようにルリを持たせればよかった。
俺が一緒に飛ぶ必要などなかったはずだ。
馬鹿なことをした……。
名を呼ばれれば、また迎えに行かなくてはならない。
また、転移するためにユリを抱きしめなければならない。
馬鹿なことをした。
リキの代わりなどいないのに……。ユリの代わりだっていないのに……。
抱きしめたいなどと思うとは……本当に馬鹿なことだ……。
カリスト×ユリ