迷宮編 3.龍は霊に嘆く
こんちは!書きためてた小説を大放出いたします!
みんな大好きご都合主義なろう世界へ!レッツゴ〜!
湿った空気に混じる焦げた匂いと、どこかで響く微かな呻き声。レイアは短く息をつき、指先に小さな炎を灯す。闇に浮かぶ光は頼りないが、前に進むしか道はない。
「……行くしかない」
足元の石段を踏みしめるたび、床の亀裂から黒い霧が立ち上り、低く呻く声が耳を刺す。その姿はぼんやりとして、人の形を保ちながらも、手足は煙のように揺らいでいる。かつて生きていた者たちの怨念と悲しみが凝縮されたような、地縛霊の群れ。
「……やだぁ…死にたくないヨォ……」
「かぁさぁん.…」
「ここどこぉ……見えないヨォ……」
炎を指先に集中させ、霊たちを焼き払う。しかし、炎が触れた途端、彼らの形がひとつ、またひとつと、誰かに似た顔に変わる。子供のような笑顔、大人の優しい顔、かつて里で見かけた人々のようにも見えてしまう。
「いや……やめ……」
心の奥が抉られる感覚。火を放つ手がわずかに震む。魔力の制御がぶれ、自らの炎で指を焼く。彼らの目が、怒りと悲しみと、憎しみを交えた感情でレイアを見つめ返す。
「……ごめん……でも……行く」
再生したばかりの指先に力を込め、炎を再び点す。霊は黒煙となって消え、短い間だけ安堵が訪れる。しかし次の瞬間、また別の霊が形を変え、攻撃を仕掛けてくる。
階を進むごとに、霊の攻撃は激しく、個々の感情が強くなる。苦しみの叫び、恨みの言葉、懐かしい声。
「……どうして……あなただけ生きてるの……!」
胸を締めつける声、熱を帯びた怒り。レイアは炎で応戦し、焼き払いながらも、心は揺れ続ける。もしこれが里の人々だったら――という思いが、腕を、脚を、全身を重く縛る。
「……やらなきゃ……でも……」
下の階層に降りるたび、魔力の制御が乱れ、炎は暴れ、皮膚は焦げ、再生が追いつかない瞬間も増える。苦痛と悲しみが重なり、呼吸が荒くなる。
それでもレイアは前に進む。7層の深部で、一瞬、霊たちの動きが止まる。黒い霧の奥、長い髪の子供の姿がちらりと見えた。
「……ルシア……?」
幻覚か、記憶か、それとも迷宮の罠か。心が揺れる。だが、炎を生み、霊を消す手は止めない。胸の奥の決意が、身体を支えている。
「……絶対に、立ち止まらない」
そしてレイアは、次の8層への階段に足を踏み入れる。ここから先は、霊の姿はより人間的に、より切実に――生きていた者たちの姿を借りて襲いかかってくるだろう。心が、これまで以上に試される場所。
赤黒い炎が指先に灯る。震える手に、焦げた匂いと痛みが絡む。それでも、少女は進む。まだ道のりは長く、迷宮は終わりを見せない。
「……まだ、終わらせない」
その声に、迷宮の闇が微かに応えた。
8層ではレイアに対する精神攻撃がさらに苛烈なものとなった。今まではただぼんやりと声だけが似ている、そうかもしれない、そういったぼんやりとしたものであった。
が、8層に入った時最初に目に入ったのはあの笛を見せてくれた少年であった。
「なんで姫様だけ生き残ってるんだ? 俺達みんな死んじまったのに姫様だけ生きて、ずるいな」
レイアにはそれが答えられなかった。自分でも何故私だけ生き残ってしまったのか。私は本当に生きていていいのか。そう言った答えが成人もしていない者に答えられるはずもなかった。
ただ襲いかかってきたから燃やしてしまった。
「ごめん…その答えはわかんない。けど…殺さなくちゃいけないの」
次に出てきたのはよくお菓子をくれた里の農夫であった。
「みんな死ねばよかったのに…そうしたら姫様を憎むこともなかったのに…」
気づけばレイアの周りには里の者達の姿をした霊、それはきっと本当の里のものの霊ではないのだろうがレイアには本物のように見えてしまった。
口々に浴びせられる罵声とも嘆きとも取れる憎しみの言葉。
「どうしてお前だけ」「苦しい…助けて…」「もう嫌だ…やめてよぉ」
奇しくもあれだけ愛した里のもの達に囲まれている姿は使徒が現れる数刻前に酷似していた。
レイアはただ襲いかかってくる霊達を燃やしていくしかなかった。ただの霊だ、命はないんだ、そう思いながらもレイアの脳裏には里のもの達の笑顔が浮かんでくる。
「ごめん…ごめんなさい…苦しいよね…もう…大丈夫だから…」
もちろん自分が殺したわけでもない。相手はただの記憶が作り出した亡霊だ。わかっていてもブレーキがかかってしまう。一つ一つ炎が霊を燃やしていく。魔力操作とは完全に精神由来だ。今のレイアの歪んだ心ではまた自らを焦がす炎になってしまっていた。
とめどなく溢れてくる亡霊とそれを燃やすレイア、そして彼女の体は、心は、炎を出すたびに削られ、傷つき、耐えきれぬほどに痛めつけられていた。
しかし、龍神の力は精神にはなんぞ関わりなどない。ただ本人の意思とは無関係に体を修復していく。傷ついた心に死んだような目、それでも体は健康そのもの、まるでそれはマリオネットのような、そんな印象すら抱いてしまう。
何度レイアはこの少年を殺しただろう。
「なんで姫様だけ生き残ってるんだ? 俺達みんな死んじまったのに姫様だけ生きて、ずるいな」
幾度となく問われたこの問いにレイアは答えられない。けれども殺すしか手はなく、殺して、殺して、殺して、気づけば8.9層と下り尽くし10層の扉の目の前に立っていた。
「ごめんね…みんな…私も死ねばよかったのかな…」
虫の食ったように穴の空いた心でレイアはこの層のボスが控えているであろう第10層の扉に手を掛けた。
さてさて!楽しんで頂けましたでしょうか!おもろいやん!頑張ってくれぃ!等のお気持ちがあればぜひ評価の方お待ちしております!それではまた次回お会いいたしましょう!




