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獄炎の姫君〜失意の底で何を思ふ  作者: 蕎麦粉


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迷宮編 2.龍は残火に舞う

こんちは!書きためてた小説を大放出いたします!

みんな大好きご都合主義なろう世界へ!レッツゴ〜!

武者の剣は止まらなかった。炎を放つ指先が焼け、肉が炭化しても、再生の力が瞬時にそれを戻す。痛みは消え、残るのは戦いの感覚だけ。回避と炎の放出を繰り返す中、レイアはようやく、武者の剣の動きに微かな法則を見つけ始めた。刃の振り下ろしの角度、重心の移動、跳ね返る瞬間――それらが少しずつ繋がり、次の攻撃のタイミングが読める。


「……くっ……なるほど……」

息を荒くしながらも、彼女は焦げた掌を握りしめ、炎をさらに一点に集中する。鎧の隙間に炎が触れ、刃の動きが一瞬止まった。その瞬間、レイアは体をひねり、武者の腕をかわすと同時に、背後から鎧の隙間に炎を送り込む。


刃が床に突き刺さり、火花が散る。武者の鎧が赤く焦げ、動きがわずかに鈍る。レイアはそれを見逃さず、炎を鋭く、連続で打ち込む。焦げる肉と再生する肉体を目の当たりにしても、彼女の心は動揺せず、冷静に攻撃を重ねる。


「……まだ……だ……」

指先に魔力を集め、炎を放つ。武者はその炎を受け流すが、微細な隙が生まれている。攻撃の隙間をつき、炎が鎧の継ぎ目を焦がす。鎧から白い煙が立ち上り、鉄の匂いと焦げた肉の匂いが混ざる。大きな広間はレイアの出す炎によってさながら溶鉱炉のように温度と戦いの熱を上げていく。


武者の剣が再び振り下ろされる。回避しつつ、レイアは瞬間的に体を低くして炎を放つ。鎧のひびに炎が潜り込み、武者の動きがさらに乱れる。指先に感じる微かな熱の反動、鎧の硬さ、地面の石の感触――すべてを利用して、レイアは次の一手を決める。


「……これで……終わらせる…!」

心の奥で呟き、炎を鎧の隙間に集中させる。武者の体が微かに震え、ミシリ、ピキリと鎧が砕ける音が響く。カシャンと乾いた音を立てて刃は地面に落ち、武者の姿はゆっくりと崩れ始める。


「ミ…ゴト…」



黒い煤のような粒子が舞い、鎧の残骸とともに武者の死体は徐々に砂状になっていく。舞い上がる砂は、迷宮の冷たい空気の中で淡く光を帯び、やがて広間の床に静かに落ちていった。息を切らし、炎で焦げた手を握りしめるレイアは、初めて戦いの終わりを実感する。


「……消えた……」

微かに震える声で、彼女は武者の痕跡を見下ろす。冷たい石の床に、砂になった武者の残り香だけが漂っていた。戦いは終わったが、疲労と痛み、燃え尽きた感覚は体中に残る。再生の力が肉体を戻したとしても、心までは戻せない。


広間の奥を見つめ、レイアはそっと息を吐く。心の中で、これから先も同じように戦わなければならないことを理解しつつ、次の階層への覚悟を固める。


「……六層……行くしかない……」


迷宮の闇が、次の層への階段へと続いている。壁に反射する赤い光が、再びレイアの背を押すように揺れた。砂となった武者の痕跡を後にして、彼女は息を整え、再び歩き出す。疲れ切った身体でも、迷宮を進む決意だけは、微動だにせず確かだった。


死霊武者が砂になって消えたあと、広間は静寂だけを取り戻した。

炎の残り火がゆらりと揺れ、石畳のひびに淡い影を落とす。

刃と火と肉の記憶が、まだ体の奥で疼いている。


レイアは膝をついたまま、呼吸を整えた。

荒い。遅い。自分の鼓動が、まだ胸の内でバクンバクンと重く響いている。


「……終わったのか。強敵だったな…」


声にならない呟きは、砂になった武者の痕跡に届くことなく、広間の静けさに吸い込まれた。

戦いは終わった。しかし、そこで止まることはできない。


立ち上がると、足元で黒い煤が指先に舞った。

それは砂となった死霊と同じ色で、炎の色を映している。


 死んだはずの者が、ここにいた。

 そして戦った。


その事実だけが、重く、確かに存在していた。


階段の入り口を見上げると、六層へ続く影が、濃く垂れこめていた。

石段は無数に続き、上へも下へも途切れないように見える。

だがレイアが進むべきは、下だった。


「……あたしは、なんで……」


胸の奥から、言葉が掠れ出る。

答えは見えない。

ただ、静かな痛みが、全身に広がっていた。


石畳を一歩、また一歩と踏みしめるたび、

先ほどの戦いの感触が蘇る。


冷たい視線を向けられたあの瞬間。

炎を擦り付けるように置いた瞬間の熱。

そして再生が、痛みを飲み込むように消していった。


「……あの武者は、なにを思って立っていたんだろう」


死霊武者は、名前も、過去も持っていないように見えた。

ただ、迷宮の番兵として、そこに立ち続けていた。


そして彼を倒したのは、

力でもなく、戦術でもなく、

彼の意思など何も理解しないままの炎だった。


それを思うと、胸の奥がぎゅっと締め付けられる。


「……あたしは、なんで……」


問いは、また消える。


階段を一段降りるごとに、空気がひんやりと濃くなる。

呼吸のたびに、土と古い血の匂いが喉を刺した。


「死ぬ、って……何なんだろう。ラヴァガンも、父様も、母様も死んでしまった。」


武者の砂になった痕跡を思い出す。

肉と骨が、ただの粒子になって消えた。


そこには、確かに“存在”があったはずなのに。

その重さが、今、手の中でふっと軽くなる。


「消えた、って……こと?」


問いは、また消える。

それでも、言葉が湧き上がる。


「……あたしは、消えたくないのか」


胸の奥が、また微かに痛む。

恐怖でも、悲しみでもなく、漠然とした孤独のような感覚。


階段は深い。

そして長い。


下へ下へと続く影が、濃く揺れる。


「迷宮……誰が、こんなものを作ったんだろう」


その問いにも、答えは見えない。

ただ石段の先には、また闇があるだけだ。


足が一段、また一段と降りる。


大理石のような石の感触が、足裏に冷たく伝わる。

白い霧のような気配が、足元から立ち上り、上へと漂う。


「……戦いは、終わらない」


襲ってくる死霊を想像する。

幽かな足音、呻き、低い叫び。

逃げる者も、追う者も、ここにはいない。


ただ、戦い続ける者だけが、進む。


「……あたしは……」


言葉が震える。

胸の奥が、重く、痛む。


だが、立ち止まることはできない。


「……行くしか、ないんだ」


足を動かす。

膝の痛みも、掌の熱さも、遠くの記憶のように薄れていく。


階段は果てしなく続く。

そしてその向こうに、六層が待っている。


「……行くよ」


小さく、しかし確かな声で、

レイアは足を下の段へ踏み出した。


静寂が、その歩みを包む。


階段の影は深く、

光はなお届かない。


だが、レイアの足だけは確実に、

石段の先を目指して進んでいった。

さてさて!楽しんで頂けましたでしょうか!おもろいやん!頑張ってくれぃ!等のお気持ちがあればぜひ評価の方お待ちしております!それではまた次回お会いいたしましょう!

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