表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獄炎の姫君〜失意の底で何を思ふ  作者: 蕎麦粉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/13

迷宮編 1.龍は地の底へ向かう

こんちは!書きためてた小説を大放出いたします!

みんな大好きご都合主義なろう世界へ!レッツゴ〜!

地下迷宮の入口は、瓦礫の下にひっそりと口を開いていた。光の届かぬ空間に足を踏み入れると、湿った土と腐敗した木の匂いが鼻腔を刺す。レイアは小さな火の玉を指先で灯し、その光で足元を確かめながら進んだ。空気は重く、息を吸うたびに胸の奥が圧迫される。


「……これが、初代の言っていた迷宮か」


口に出す声は自分の耳に戻ってくるだけで、返事はない。けれど、そこに漂う気配は明らかに生きている――いや、死者の残滓そのものだ。


一層目は静かだった。床に散らばる骨や朽ちた衣類を踏みしめながら進むと、かすかな呻き声が耳に届く。徘徊霊――低位の死者の魂だ。形はぼんやりとしていて、手で触れれば煙のように散る。しかし数が多く、体力を削るには十分だった。


「……弱い。けど……数が多い」


小さく呟きながら、レイアは炎を指先で作る。赤黒い光が幽霊たちを焼き払い、瓦礫に反射して壁を赤く染める。だが、消費される魔力は大きい。呼吸を整え、魔力の流れを丹田から指先まで繋ぐ。炎はすぐに消え、また生まれる。連続で使えば手の皮膚は焦げ、血が滲む。しかし、再生力によって傷はすぐに元通りになる。


二層目、三層目と進むうちに、幽霊は増え、攻撃の形を取る者も現れた。低位屍兵――かつて武者であった者の死霊化した存在。剣や槍を手にし、視覚は欠けても感覚だけで近づいてくる。レイアは防御も疎かに、炎で焼き払う。だが数が多く、完全に制御しないと反撃される。何度も指を焦がし、肘を焼き、足元を掠られながら、炎を放つ。


「……やはり、魔力の流れがまだ不安定だ」


炎を生むたびに胸の奥が痺れるように痛む。無理に流す魔力は全身を締め付け、血管が膨れ、骨が軋む。だが、苦痛を感じる感覚は次第に鈍り、ただ動作としての炎が生まれる。戦いは、もはや肉体の限界を超えた作業のようだった。


四層目は、壁や床に刻まれた符号や文字が目立ち始めた。初代の封印術式か、あるいは迷宮そのものの意思か。静寂の中で文字が微かに光り、幽霊や屍兵たちの動きを制御しているように見える。レイアは気配に注意を払いながら、慎重に進む。炎は小さく、だが正確に敵を狙い撃つ。


「……迷宮は……敵意を持っている」


そう気付いた瞬間、後ろから不意に低い呻き声が響く。振り返ると、二体の低位屍兵が隠れていた。反射的に炎を指先から放つと、一体が燃え上がり、もう一体は壁に押し潰される。冷静に戦うことで初めて、魔力の無駄遣いを抑えられることを理解した。


四層を抜ける頃には、指先は焦げ、炎を放つたびに痛みが走る。しかし、再生によってすぐに回復する。生と死の境界の中で、レイアは自分の体が人間の枠を超えつつあることを感じていた。


「……まだ、ここまでか。だが、次は……」


小さく息を吐き、指先の炎を消す。目の前に広がるのは、五層への階段。そこから先は、迷宮の意思がより明確に形を持つだろう。この先には何か、先ほどまでとは異なる強さであろうモノが待ち構えていることを、レイアは直感で理解した。


炎の光に照らされる階段の向こうに、死霊の気配が濃く立ち込める。恐怖も、痛みも、まだ序章に過ぎない。だが、魔力を制御する感覚が少しずつ体に馴染み始めたことだけが、唯一の希望だった。



炎の光が迷宮の石壁に反射し、湿った空気を赤く染める。四層までを抜けたあと、レイアは五層への階段を踏みしめる。石の冷たさが足裏に伝わり、胸の奥に微かな緊張が走る。


階段の先で、黒い影がうねるように立ち上がった。膝まで届く鎧は血塗れで朽ち、刃の部分は錆と煤で黒光りしている。武者の目には意識がないようでありながら、動きの端々に何か“意思”のようなものを感じる。死の気配が、足元の石を震わせる。


「……ゴ…ギガガ.ガギゴ…」


レイアの声に反応するわけでもなく、武者はただ、重く、確実に何か音を発しながら歩みを進める。斬撃が空気を切り裂く音が、耳の奥を震わせる。レイアは身をかがめ、魔力の流れを指先に集める。炎を生み出すが、最初の一撃は武者の甲冑に跳ね返され、熱が掌を焼く。


「……くっ」


痛みに顔をしかめながらも、体を後ろに引く。だが武者の剣は止まらない。振り下ろされる刃の軌道は、同じパターンではない。左に回避、右に回避、炎を瞬間的に放つも、武者はそれを受け流す。攻撃の勢いで床に転がることも何度かあった。


圧倒的な剣技。この武者はかつて恐ろしいほどに強力な武士だったのであろう。朽ち果て、錆びてなお一挙手一投足がレイアを死の淵へと一歩一歩追い詰めてゆく。


だが戦いを続ける中で、レイアは微かな癖に気づき始めた。剣を振り下ろした直後、刃の先がわずかに跳ね上がる。重心を移すタイミングが一定の間隔でしかない。炎を当てて反応を見ると、その瞬間、武者の肩の動きが一瞬止まる。


「……この隙か」


呟きながら、再び指先に魔力を集める。今度は炎を鋭く一点に集中させ、武者の肩にかすかに触れさせることに成功する。鎧のひびに火花が散り、武者の動きがわずかに乱れる。


だが、それでも武者の剣は止まらない。回避と反撃を繰り返す中で、レイアの体力は徐々に削られる。炎を放つたびに魔力は削られ、自傷も避けられない。右手の指先が焦げ、再生する間も絶え間なく攻撃が続く。


「……まだ……わからない……」


彼女は息を切らしながらも、武者の剣の軌道を目で追う。火と血と石の匂いが混ざった空間の中で、体の感覚が研ぎ澄まされていく。瞬間的に生じる隙を見極め、炎を置くように放つ。最初はすべてが手探りだったが、徐々に次の動きへの予測が可能になってくる。


「……くっ……!」


武者が大きく振り下ろす刃を避け、回転しながら炎を放つ。鎧の間をかすめた炎が、腕に当たり焼け焦げる。だが、痛みは一瞬で消え、肉と骨は再生される。そのたび、レイアの瞳には以前の恐怖ではなく、冷たい集中が宿る。


炎と剣の交錯が続く中、レイアは一瞬の間合いを見つける。武者の腕の振り下ろす角度、肩の重心移動の遅れ、刃の跳ね返る瞬間――ひとつひとつがパズルのピースのように繋がり始める。


「……なるほど、こう……か」


小さく息をつき、指先の炎をさらに鋭く一点に集中する。武者の鎧の隙間に触れ、動きのバランスを崩すことに成功する。僅かに倒れる寸前で武者の刃が床に突き刺さり、火花が散った。その瞬間、レイアは手応えを感じる。


まだ突破口ではない。だが、武者の動きの癖を理解し始めたこと、そして次に取るべき行動の方向性が見えたこと。それだけで、迷宮の深部への希望がわずかに灯る。


息を整え、黒く焦げた掌を握りしめる。再生の力が痛みを消し去り、残るのは炎の感覚だけ。心の奥で、戦い続ける覚悟が、静かに膨らんでいく。


迷宮の石壁に反射する赤い光の中、レイアは小さく呟いた。


「……まだ……終わらせない……」


その声に応えるように、死霊武者はゆっくりと立ち上がる。今度は少しだけたった一秒の隙を作るための試行錯誤の戦いが、真に始まろうとしていた。

さてさて!楽しんで頂けましたでしょうか!おもろいやん!頑張ってくれぃ!等のお気持ちがあればぜひ評価の方お待ちしております!それではまた次回お会いいたしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ