表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獄炎の姫君〜失意の底で何を思ふ  作者: 蕎麦粉


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/8

襲来編 4.龍は呪いに頬笑む

こんちは!書きためてた小説を大放出いたします!

みんな大好きご都合主義なろう世界へ!レッツゴ〜!


レイアが戻ってきた時、城は静かに死んでいた。


瓦屋根は崩れ、朱塗りの柱は折れ、回廊は途中で途切れて奈落へ落ちている。

かつて大木の桜が風に揺れていた中庭には、焦げた花弁と灰だけが積もっていた。


血の匂いが、まだ消えていない。


レイアは一人、瓦礫の間を歩いていた。

剣は腰に提げたまま、抜いていない。抜く意味がなかった。


「……」


声にすれば、何かが壊れそうだった。

だから何も言わない。


当主の間があったはずの場所は、床ごと崩れ落ちている。

その奥に、明らかに城の造りとは異なる空間が露出していた。


柱には古い紋様が刻まれ、天井のない空間に淡い光が満ちている。

ここだけ、焼け跡の臭いが存在しなかった。


「……ここは…何…私も知らない場所…」


レイアはそう呟いて、足を踏み入れた。


その瞬間。


「おや。生き残りが来たか」


間の抜けた声が、頭上から降ってきた。


反射的に腰に下げた短剣を抜く。

だが敵影はない。


広間の中央、宙に浮かぶようにして、淡い光の塊があった。

やがてそれは、老人の姿を形作る。


白髪、長い髭、背を少し丸めた体躯。

どこにでもいそうな、好々爺然とした風貌である。


「そんなに警戒しなくていい。もう斬られても痛くない身でね」


老人は笑った。


「……あなたは誰…ここは何?」


レイアの声は低く、乾いている。


「名乗るほどのものでもないが……まあ、初代龍神、と呼ばれていた存在だよ」


一瞬、空気が重くなる。


龍神。

その言葉にレイアは震える。龍神とはかつて存在した龍種全ての長。その力は海を割り、山を崩し、あらゆるもの全てを討ち滅ぼす力を持っていたと言われている最強種。


「……龍人じゃないのか」


「違う違う。龍人と龍神は根本的に違う。体の組成、魂の質ですら、な。」


老人は肩をすくめた。


「ここは、わしの魂が縛られていた場所だ。城が壊れて、ようやく外が見えるようになった」


レイアは一歩も動かない。


「……なら、全部見てたのか」


「見てたとも。使徒も、業火も、桜も」

どうやらあの金色の男は「使徒」というらしい。


老人はそう言ってから、ふと目を細めた。


「それから――あの男の死も」


その言葉が、胸に突き刺さった。


「……」


レイアは何も言わない。

だが、否定もしない。


「魂の欠片が、戻ってきていてね」


老人は自分の胸を指す。


「ほんの僅かだ。全体の一%にも満たない」


そこで、初めて老人の笑みが消えた。


「だが、それで分かった。彼は死んだ」


沈黙が落ちる。


広間の光が、少しだけ揺らいだ。


「……ラヴァガンは、強かっただろう」


老人は独り言のように言う。


「龍人の中でも、随分と歪で、異質で……だが、誇らしい在り方だった」


レイアは、歯を噛みしめた。


老人は苦笑する。


「返ってきた魂が教えてくれた。最後まで、あの男は守ろうとしていた」


レイアの視界が、一瞬だけ滲んだ。


だが、涙は落ちない。


落とす資格がないと、そう思っていた。


「つまりだ」


初代龍神は、宙に浮かんだまま足を組んだ。


「ラヴァガンがあれほどまでに力を振るえたのは、あやつ自身の資質に加え、わしの魂の一部を宿しておったからじゃ」


「……どのくらい」


レイアは即座に問う。


「一%ほどじゃな」


「……それでも、死んだ」


「結果としてはな」


「父様はどうなの。あれだけ強かったならあなたの魂を貰ってたんじゃないの。」


「あんなものは知らん。突然変異みたいなもんじゃ。あれは怪物じゃ。龍神に最も近かったと言ってもいい。ラヴァガンは力を使い切った。その一点において、あやつは完璧だった」


「ふざけないで」


「ふざけてはおらん」


初代龍神は肩をすくめる。


「与えたのはわしだ。だが、使うと決めたのはあやつだ。お前を生かすと最後にあやつが決めたんじゃ。」


「なら」


レイアは一歩踏み出した。


「残ってるんでしょ」


「……ほう」


「あなたの魂」


間髪入れずに続ける。


「ラヴァガンにあたえたというのなら、ここにあるはず」


老人は、少しだけ目を細めた。


「察しがいいな。否定はせん」


「だったら話は早いわ」


「早くはない」


初代龍神は即座に切り返した。


「お前に渡す理由がない」


「理由ならある」


「聞こう」


「使徒を殺す」


間が落ちる。


「それだけか」


「それだけ」


「里や仲間を守るためでもなく?」


「もうそんなもの…ない」


「新たに芽吹く命を導くためでもなく?」


「もう…いらないの…」


「復讐のためだけに、龍神の力を欲するか」


「違う」


レイアは首を振った。


「……復讐なんて甘いものじゃない」


「……?」


「ただ、殺す。それだけ…私から全部奪ったんだもん。私も全部奪い尽くさなきゃ…不公平でしょ?」


初代龍神は、しばらく黙っていた。


「龍はな」


ややあって、口を開く。


「高潔であるべき存在だ。力は秩序のためにあり、怒りに委ねるものではない」


「知ってる。いっつも父様が言ってた」


「ならば、その在り方に真っ向から反する」


「知ってる」


「それでも欲しいか」


「欲しい」


即答だった。


「どれほど」


「1割」


空気が張り詰める。


「……欲張りだな。小娘」


「足りないよりはいい」


「肉体が耐えきれず、魂ごと裂ける可能性もある」


「それでも」


「死ねぬ苦痛に苛まれる」


「止まらない」


初代龍神は、口を閉ざした。

そして、次の瞬間、声を上げて笑った。


「ははは……」


「……何」


「いやなに、久しぶりでな」


笑いを収め、穏やかな声になる。


「ここまで迷いのない者は、ほんとうに久しい」


「迷う理由がない」


「そうだな」


老人は頷いた。


「そのどす黒さ、歪み、偏り……普通なら拒む」


「……」


「だが」


一拍置く。


「お前のそれは、純粋だ」


「意味がわからない。龍神様も難しいこと…言うんだね。」


初代龍神は手を差し出した。


「ラヴァガンに与えたのは一%。だが、お前は十%を望む」


「……」


「ならば与えよう」


「いいの」


「わしが笑って渡すのが条件じゃ」


「……変な龍神」


「よく言われる」


老人は、楽しげに言った。


「さあ、受け取れ。龍神の魂だ」


初代龍神の指先が、ゆっくりとレイアの額に触れた。


その瞬間、石造りの遺跡全体が低く唸りを上げた。

崩れた城の基礎と直結していた地下空間が、まるで巨大な生き物のように脈動する。柱に刻まれた古い文様が淡く光り、床に走る亀裂から白金色の光が滲み出した。


「逃げ場はないぞ」


龍神の声が、妙に穏やかに響く。


「途中で止めることもできん」


「いい」


「泣き叫んでも意味はない」


「知ってる」


「死ねば、そこで終わりだ。さぁ、逝ってこい。」


触れた指先から、何かが流れ込んできた。


それは熱ではなかった。

冷たさでもない。


“圧”だった。


頭蓋の内側から、ゆっくりと、しかし確実に押し広げられる感覚。骨がきしみ、血管が裂け、内臓の位置がずれていく。喉から音にならない息が漏れ、視界が白く飛んだ。


レイアは倒れなかった。

倒れる前に、身体が言うことをきかなくなった。


遺跡の床に叩きつけられ、四肢が勝手に痙攣する。

背中が反り、指が異様な角度に折れ曲がる。


「……かっひゅっ……」


声は出ない。

出そうとした瞬間、肺が潰れる。


初代龍神は少し距離を取り、腕を組んで見下ろしていた。


「一日目じゃ」


淡々と言う。


「まだ、入口だ」


その日、レイアの骨は三度砕けた。

心臓は二度止まり、そのたびに無理矢理龍神の魂により再起動させられた。


二日目。

皮膚の内側から鱗のようなものが浮かび上がり、すぐに剥がれ落ちる。血と体液が床を汚し、遺跡の石が赤黒く染まる。


三日目。

意識が途切れなくなった。眠ることができない。

苦痛が薄れることもない。


「……まだか」


掠れた声で呟いたとき、初代龍神は小さく笑った。


「半分も行っておらん」


四日目。

声帯が裂け、叫ぶことすらできなくなる。

代わりに、歯を噛み砕く音だけが響いた。


五日目。

身体の感覚が一度、完全に消えた。

その直後、倍の痛みとなって戻ってきた。


六日目。

自分の名前を思い出せなくなる。

だが、金色の男の顔だけは、異様なほど鮮明だった。


七日目。

遺跡の光が収束し、床に走る文様がすべて沈黙した。


レイアは、瓦礫の上に仰向けに転がっていた。

身体は元の形を保っているが、どこもかしこも“以前と同じ”ではない。


初代龍神が近づく。


「……生き残ったな」


レイアは答えない。

答えられないのではない。答える意味がないだけだった。


「十%じゃ」


龍神は言った。


「力ではない。可能性でもない」


一拍置く。


「呪いに近い」


それでも、レイアの瞳は閉じなかった。

焦げた桜の残骸が見える。

燃え落ちた城の影が、遺跡の天井に揺れている。

血に染まり、乾ききった衣服はさながらドレス。新たな龍の誕生を祝う贈り物。


――殺す。


それだけがかつてレイア、平和を会いしたひとりの少女であったものの中にだまだ残っていた。

さてさて!楽しんで頂けましたでしょうか!おもろいやん!頑張ってくれぃ!等のお気持ちがあればぜひ評価の方お待ちしております!それではまた次回お会いいたしましょう!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ