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獄炎の姫君〜失意の底で何を思ふ〜  作者: 蕎麦粉


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帝国編 9.龍は悲しみとともに

こんちは!書きためてたぶんがファイルが吹き飛びガン萎えして止まってました!ホンマすんません!

みんな大好きご都合主義なろう世界へ!レッツゴ〜!

「デニー」


低い声が森を裂いた。


彼はゆっくり振り返る。目が、以前とは違う光を帯びていた。

焦点が、どこか遠い。レイアを見ているようで、見ていない。まるで別の何かを透かして視ているかのように、その瞳の奥が揺れていた。


「......何しに来た」


声は滑らかだったが、温度がなかった。デニーの声のはずなのに、どこか借り物のような響きがある。

レイアは立ち止まる。一歩も踏み込まず、ただ静かに彼を見た。


「その小瓶、何が入ってるの」

「関係ない」

「関係ある」


間を置かずに返す。デニーの手が、持っていた小瓶をそっとポケットに入れた。まるで子供が宝物を隠すように。

ノーラが半歩後ろに立っていた。唇を噛んでいたが、何も言わなかった。


「邪神様に言われてるんだ」


デニーはゆっくり口を開いた。声は穏やかで、だからこそ不気味だった。


「選ばれた者がやるべきことがある。お前たちには分からない。分からなくていい」

「聞こえるの?今も、声が」

「聞こえる。ずっと聞こえてる」


レイアの足が止まる。

身体の内側で、かすかな感触が走る。呪殺教団の村で感じたものに近い。あの腐った魔力の波紋。澱んでいて、方向がない。人の意志を覆い、静かに侵食していく類いのもの。

これは呪いだ。


「デニー」


今度は、少し声が違った。


「あんたには恩がある」


彼の目がわずかに動く。


「里を出て、初めて関わった人間。あんたが話しかけてきたから、この街で最初の一日を乗り越えられた」


ノーラが小さく息を呑んだ。


「だから、やめて欲しい」


デニーは少しの間、何も言わなかった。

風が森の奥から吹いた。葉が擦れ、鳥が飛び立つ。


「お前には関係ない」

「ある」

「......邪神様が言ってるんだ。選ばれた者には使命がある。お前みたいに、ふらふら生きてる奴には分からない」


その声は今度は少し揺れていた。言い聞かせているのか、なだめているのか。まるで、何かに押さえつけられながら話しているかのように。

レイアは一歩踏み出した。

デニーの身体がぴくりと反応する。


「近づくな」

「聞いて」

「聞く必要はない。俺は使命を果たす」

「声が聞こえるのは、呪いだ」


そう告げた瞬間、デニーの目に怒りが差した。


「呪いじゃない。本物だ。俺にしか聞こえない本物の声で、本物の使命で——」


その言葉が終わらなかった。

レイアは踏み込んでいた。



刀は抜かない。柄に触れてもいない。

右の手刀が、鋭く首の横を打つ。迷いも、ためらいも、余計な力もなかった。神経を断つような一閃——打擲というより、一点への精密な衝撃。

デニーの体が、力を失って傾いた。

ノーラが駆け寄る。レイアが片腕で受け止め、静かに地へ下ろした。


「......本当に、気絶させたの?」

「死なない。一時間もしたら目を覚ます」

「刀も使わずに」

「使う必要はなかった」


デニーの顔は穏やかだった。眠っているときの顔は、いつものあいつに近い。ノーラが彼の前髪を払う。指先が小さく震えている。


「担ぎ方、教える?」

「......いい。自分でやる」


ノーラはデニーの腕を肩に回し、支えるようにして持ち上げた。バートンがいれば楽だったが、今は二人だ。レイアが逆側を担ぐ。


「重いな」

「筋肉質なんだよ、こいつ。一応、剣士だから」


言いながら、ノーラの声が少し揺れた。

歩き出す。乾いた土の上を、ゆっくりと踏み分ける。


道の途中で、レイアはデニーの手首を軽く取った。

脈を診るのではない。もっと細いもの——魔力の走る筋道を、指先で探る。


あった。


薄く、しかし確かに。腐った糸のようなものが、皮膚の下をはっている。血ではなく、魔力の経路に沿って、じわりと広がっている。


「どうかした?」


ノーラが訊く。


「......呪術の痕がある。体の中に」

「え?」

「薬に仕込まれていたか、あるいは飲んでから何かが侵入したか。どちらにせよ、本人の意志じゃない。外から来たものだ」


ノーラの顔から血の気が引いた。


「治るの?」

「それは、私には分からない。ギルドへ持っていく」

「......分かった」


短い沈黙があった。

木々の間から、夕刻の光が斜めに差し込んでくる。道が森から街へと変わり始める頃、視界の端に赤い小旗が揺れていた。

小さな出張所だった。商会の紋章が入った幕が入口に垂れている。台の上には募金箱、その隣に小さな瓶が整然と並べられている。ラベルには細かな文字で「疲労回復」と書かれていた。

レイアは立ち止まらなかった。

だが視線は一秒だけ、その小瓶の並びに落ちた。

同じ形。同じ色。デニーが森でポケットに入れたものと、ほとんど変わらない。

「あれ」とノーラが小さく言った。


「見えてる」


それだけ答えて、歩き続ける。

出張所の傍に立つ職員は、愛想よく通行人に声をかけている。善意の笑顔。誰も疑わない顔をしている。

街が近づく。夕暮れの鐘が鳴り始める。

ギルドへ急ぐ。今はそれだけでいい。

さてさて!楽しんで頂けましたでしょうか!おもろいやん!頑張ってくれぃ!等のお気持ちがあればぜひ評価の方お待ちしております!それではまた次回お会いいたしましょう!

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