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獄炎の姫君〜失意の底で何を思ふ  作者: 蕎麦粉


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襲来編 2. 龍は天に吼える

コンチハ!第2話でございます。戦闘描写上手くかけてるでしょうか…不安でございます

爆音の余韻が、里に重く沈んでいた。

土煙の向こうから吹きつける熱風に、桜の花弁が焼け焦げながら舞い落ちる。


「……全員、下がれ!」


ドラムの声が、里全体に響いた。

その声には、先ほどまでの穏やかさはない。鋼のような緊張と、決断の重みが込められていた。


レイアは母イリジャの腕を強く握っていた。

何が起きているのか、完全には理解できていない。ただ、胸の奥がひどくざわついていた。


「母さま……?」


「大丈夫」


イリジャは即座に答えたが、その声は低く、硬い。


「ラヴァガン、レイアを城へ」


ラヴァガンは一瞬だけレイアを見てから、深くうなずいた。


「……承知した」


しかし、その直後だった。


白煙の中から、金色の髪を持つ男が歩み出た。

無機質な足取り。感情のない視線。周囲の惨状に、一切の関心を示していない。


「来たか」


ドラムは一歩前に出る。


「ここは艶桜。龍人の国だ。貴様は何者だ?

目的はなんだ?」


男は答えなかった。

代わりに、ゆっくりと首を傾け、里を見回す。


「……歴史に不要」


それだけを、淡々と告げた。


次の瞬間、地面が爆ぜた。

使徒の姿が消え、ドラムの背後で空気が裂ける。


「――遅い」


ドラムは振り返りざま、拳を叩き込んだ。

衝撃波が走り、周囲の家屋がまとめて吹き飛ぶ。


しかし、使徒は宙で身をひねり、着地する。

その表情は、変わらない。


「……ふん」


ドラムは深く息を吸った。


「イリジャ、下がれ」


「あなた……まさか」


「やるしかない」


ドラムの身体から、赤い光が漏れ始める。

鱗が皮膚を突き破り、背中から巨大な影がせり上がった。


骨が鳴り、肉がうねる。

背骨が伸び、尾が形成され、肩からは翼が展開する。


――龍化。

ごく一部の龍人にしか許されない、禁忌に近い秘術。


レイアは息を呑んだ。


「……父さま……」


眼前に立つのは、もはや人の姿ではなかった。

艶やかな紅の鱗を持つ、巨大な龍。

その咆哮が、空を震わせる。


「艶桜当主、ドラム、ドラム・レーヴァンタインだ」


龍の声が、雷のように響いた。


「ここを通すと思うな」


使徒は、初めてわずかに目を細めた。


「……観測対象。排除を優先」


次の瞬間、龍と使徒が激突した。

炎と衝撃がぶつかり合い、里の中央が吹き飛ぶ。


ドラムは翼で風を切り、炎を吐く。

山を削るほどの業火が、使徒を包み込んだ。


だが――消えない。


炎の中から、使徒が歩いて出てくる。

衣服は焼け落ちているが、肉体には傷一つない。


「……効かぬか」


ドラムは歯を噛みしめ、再び空へ舞い上がる。


下で、イリジャが叫んだ。


「レイアを連れて、城へ! 今すぐ!」


ラヴァガンはレイアを抱き寄せた。


「見るな」


「でも……!」


「見るな!」


その言葉の強さに、レイアは声を失った。


空では、紅の龍が必死に喰らいついている。

それでも、使徒の動きは止まらない。


それが、この戦いが「勝てない戦い」であることを、誰よりもドラム自身が理解している証だった。


――それでも、退くわけにはいかなかった。


艶桜を、家族を、未来を守るために。


炎と血が、空に散る。


紅の龍が空を裂いた。

ドラムは翼を大きく広げ、一気に高度を上げる。雲を突き抜け、陽光を背にしたその姿は、かつて艶桜を守護する象徴そのものだった。


「――吼えろ」


喉奥が灼ける感覚とともに、膨大な熱が集束する。

次の瞬間、天から地へ、一直線に炎が落ちた。


山の一部が溶け、里の外縁がえぐれる。

それほどの威力だった。


だが、使徒は逃げない。

炎を正面から受け、なお立っている。


「……耐性確認」


低く呟いた直後、使徒の姿が掻き消えた。


「来る――!」


ドラムは直感で身をひねった。

次の瞬間、左翼に衝撃が走る。


見えなかった。

認識した時には、すでに切断されていた。


「ぐぁぁぁぁっ!」


悲鳴とともに、巨体が空中で傾ぐ。

血が噴き出し、赤い雨となって里に降り注ぐ。


使徒は、何事もなかったかのように宙に立っていた。

手には、ドラムの翼の一部が握られている。


「……速度、問題なし」


その言葉が終わる前に、ドラムは尾を振り抜いた。

音速を超える一撃が、使徒の胴を捉える。


今度こそ、確かな手応えがあった。


使徒の身体が吹き飛び、地面を抉りながら数百メートル先まで転がる。

里の者たちから、どよめきが上がった。


「当たった……!」


誰かがそう叫んだ。


ドラムは荒い息を吐きながら、地上を睨みつける。


「……終わりではないな」


土煙の中から、使徒が立ち上がる。

衣服は裂け、皮膚にも浅い損傷が走っていた。


しかし、その傷は――瞬きの間に塞がっていく。


「再生……?」


ドラムの胸に、冷たいものが走る。


「解析完了」


使徒は一歩踏み出した。

その一歩で、距離が消える。


次の瞬間、ドラムの視界が反転した。

何が起きたのか理解する前に、背中から地面へ叩きつけられる。


「――っ!!」


衝撃で大地が割れ、衝撃波が城壁を揺らす。

ドラムは必死に立ち上がろうとするが、身体が言うことをきかない。


使徒は、ゆっくりと歩み寄ってくる。


「龍化個体。記録済み」


「……記録、だと……?」


ドラムは血に染まった口元で、笑った。


「なら……最後まで、見届けろ……!」


残された力をすべて燃やし、ドラムは再び炎を吐いた。

今度は、ただの攻撃ではない。


己の生命そのものを、燃料にした業火。


空が歪み、里全体が赤に沈む。


その中心で、使徒の動きが一瞬、止まった。


――いける。


誰もが、そう思った。


だが次の瞬間、使徒は炎の中から踏み出した。

焼け落ちたはずの身体は、すでに元に戻っている。


「……結論。戦闘継続不要」


そして。


ドラムの胸に、冷たい腕が突き立てられた。


鱗も骨も、意味をなさなかった。


「――ぁ」


心臓を掴み潰され、龍の身体が震える。

巨体が、ゆっくりと、地へと崩れ落ちた。


遠くで、イリジャがそれを見ていた。


「……ドラム……」


彼女は震える息を吐き、空を睨み上げる。


「レイアは……逃げたわね。これは可愛くないからあの子には見せたくなかったのよ。」


それを確認するように呟き、彼女は一歩、前に出た。


イリジャの身体から、白銀の光が立ち上る。

彼女もまた、選ばれた存在だった。


龍化。

だが、それは完全なものではない。

翼は現れず、鱗は部分的に皮膚を覆うだけだ。


それでも、彼女は迷わなかった。


「母として、妻として……ここで終わらせる」


使徒は、初めて彼女を正面から見た。


「……観測外」


イリジャは微笑んだ。


「でしょうね。でも――」


次の瞬間、彼女は使徒に突進した。

光と衝撃がぶつかり合う。


しかし、結果は変わらなかった。


使徒の手刀が、イリジャの胸を貫く。

血が宙に散り、彼女の身体が崩れ落ちる。


「……レイア……生きて…」


その声は、誰にも届かなかった。


――――――――――


城の地下通路を、ラヴァガンは走っていた。

腕の中には、必死に息を殺すレイアがいる。


「離して!ラヴァガン!……父さまがぁ……母さま……!」


「見るな。聞くな。生きろ」


それだけを、何度も繰り返す。


地上に出た瞬間、熱風が二人を包んだ。

城は、すでに半壊していた。


そして――そこにいた。


瓦礫の上に立つ、金髪の男。彼の足元にはおびただしい数の里の民の屍。あるものは頭を潰され、あるものは腹を貫かれ、まさに地獄、阿鼻叫喚の世界であった。


またその両手には、二つの首がぶら下がっている。


ドラムと、イリジャ。


「……あ……ひゅ…父…さま、母様…」


レイアの喉から、声にならない音が漏れた。


ラヴァガンは、ゆっくりとレイアを下ろす。


「……やはり、来たか」


使徒が首を傾ける。


「既視感あり」


「当然だ」


ラヴァガンの身体から、暗い光が噴き上がる。


「50年ほど前か…」



鱗が現れ、角が伸び、老いた身体が変貌する。

だが、その龍化は、どこかドラムのものともイリジャのものとも違っていた。


「もう、見飽きた」


使徒の声は、相変わらず無機質だった。


次の瞬間。

ラヴァガンの心臓が、背後から貫かれていた。


「……レイ……ア……」


振り返ることもなく、老龍人は崩れ落ちる。


残されたのは、レイアひとりだった。


「……なんで……なんで殺すの!悪くないじゃん!」


震える声で泣き叫ぶ。その瞬間。


冷たい感触が、胸に走る。


使徒の腕が、レイアの心臓を貫いていた。


「……歴史に不要」


炎が、里全体を包み込む。

業火の中、艶桜は焼き尽くされていく。


倒れ伏すレイアの視界に映るのは、燃える空と、崩れる城。

桜は黒く焦げ、風に散っていた。


――ここで、龍人の国・艶桜は滅びた。

さてさて!読了ありがとうございます!いかがでしたでしょうか!おもろいやん!頑張ってくれぃ!って気持ちで評価していただけると筆者は泣いて喜びます!ぜひぜひよろしくお願いいたします!

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