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獄炎の姫君〜失意の底で何を思ふ〜  作者: 蕎麦粉


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帝国編 4.龍は森で刃を振るう

こんちは!書きためてた小説を大放出いたします!

みんな大好きご都合主義なろう世界へ!レッツゴ〜!

「席は自由よ〜。まずは制度の話からね」

組合の小さな教室。ユリは手早く書類を配り、黒板を指した。朝の光が木の床を薄く染める。


「冒険者の等級は特SからFまであります。特S級の冒険者は世界にたったの6人だけしかいないわ。認められれば降格は基本ないから、みんな頑張って目指してね。東大陸は組合の支部網が張り巡らされているから、移動しても仕事はもらえるわ。この街で一生を終わる人よりも旅をして自分を磨く人が多いのよね。で、魔物はAからF級に分類されてるわね。Fが下位、一般に“弱い”扱いなんだけど――最近、F相手でも怪我する事例が増えているわ。油断して怪我しないでちょうだいね。」

ユリの声音は柔らかさを感じるものであったが、最後の言葉に教室の空気が一瞬ぴんと張る。


「質問は?」と彼女が促すと、小声で何人かが問いを返す。


ユリは一通り答え、黒板の端に「実地は外で」とだけ書いた。


その時、壁際から無言で男が一歩出る。長身で、短く刈った髪。目つきは冷たく、腰には年季の入った剣を下げている。ユリが一瞥し、


「実地の訓練はローデンが見てくれるわ。彼は元B級冒険者だから安心してちょうだい」


とだけ言った。


彼は頷いて一言、


「動きを見せろ」


とだけ告げ、教室の外へと受講者を促す。


森は朝露を深く湛え、葉の匂いが濃い。新人たちはぎこちなく歩き、短剣や槍を確かめる。蝉の声はまだなく、足音が湿った土に沈む。


まずは小型スライム相手の訓練だ。柔らかく揺れる塊が幾つも道端に転がる。何人かが斬りかかり、刃は弾かれ、粘液に手を取られる。ある者は槍の突きが浅く、スライムは分裂して逃げる。


「焦るな、中心を見ろ」ローデンの声が飛ぶ。


だが、周囲の誰もがぎこちない。


そのとき、レイアが静かに一歩前へ出た。腰のひき方、手首の返し、足裏の沈み方――その動きは無駄がなく、ひとつの連続した呼吸になっていた。


鞘が滑り、刃が抜けると、軌跡は一つの流麗な円弧を描いた。


一閃。スライムは縦に裂け、核が露出してわずかに光り、消える。音は小さかったが、一同が息を呑んだ。


「……」


受講者たちのざわめきが消える。ローデンが数歩前に出て、無言でその太刀筋を見つめる。彼の顔に僅かな変化が走るが、言葉は出さない。


ローデンが近寄り、低い声で訊ねた。「どこでそれを?」

レイアは肩を僅かに竦め、「…村で少しだけ…」と答える。


嘘ではない。説明できないだけだった。


ローデンは刃先に視線を落とし、短く


「完成度が高い。美しい太刀筋だ。」


とだけ述べる。


ユリが手早く手続きを説明する。


「Fは新人の指標。ポイントを積めば上がって行くわ。掲示板で依頼を受けて、達成して戻ればポイント。簡単じゃないけど確実な道よ」


彼女の表情は姉御肌の温かさを保っていた。


その午後、実地のコースは続いた。レイアは必要なときにだけ刃を抜き、小さな獲物を的確に仕留める。だが、森が深くなるにつれ、空気に違和感が混じった。


鳥の声が途切れ、葉のざわめきが不自然に大きくなる。ローデンは眉を僅かに寄せ、遠目で木立を見つめる。


「まずいぞ。森の様子が変だ」


誰かが言う前に、茂みが割れる。巨大な獣が飛び出した。黒い毛皮に暗い脈が流れ、牙は長く、鼻が膨らんでいる。ボア──森の大猪。


だが、その体躯と動きは普通のボアとは違う。濃い魔力の残滓が周囲の空気をねっとりさせ、獣は凶暴さをむき出しにしていた。


「ボアだ、距離を取れ!」


ローデンが叫ぶ。新人たちは一斉に後退するが、一本の枝に足を取られる者も出る。ローデンは淡々と剣を抜いた。動きに無駄はないが、彼も慎重だ。


レイアは刃を握り締め、前に出た。呼吸を整え、足を滑らせずに踏み込み、狙いを決める。ボアは突進して来る。鼻先が地面を叩き、地鳴りが小さく広がる。牙が空気を裂く速さは、人ならば驚くほどだ。


「お嬢ちゃんあぶねぇぞ!下がれ!」誰かが叫ぶ。


レイアは一度、斬り下ろさずに刃を横に走らせた。相手が重心を変えた瞬間、足元を狙い撃つ。ボアの前脚がもつれ、体勢が大きく乱れる。そこへ首筋を一閃。刃は深く入り、獣の呼吸が喉から抜けていく。


轟音とともにボアは倒れ、黒い霧のような魔力が地表に散った。森の緊張が一度にほどける。


新人の中からため息と歓声が混ざる。ユリは息を吐き、ローデンは静かに歩み寄った。彼の瞳に、先ほどよりはっきりとした評価の色が灯る。


「お前、ただ強いだけじゃないな。動きの精度、刃筋の潔さ、踏み込みの深さ。戦いを知っているな?」


ローデンの言葉は低く、重い。レイアは刀を納め、汗ばんだ額を拭う。答えは一言だけ。


ローデンはさらに小さく首を傾げた。言葉少なに、「だが、妙だ」と付け加える。彼の表情には違和感が残る。普段のDランクのボアとは、どこか違っていたのだ。


夕方、組合に戻るとユリが申請書を手渡した。「仮のF認定を出すわ。書類は後で整えておくわね。けど覚えておいて。F級といえども怪我はあるわ。今日みたいなことが起きるかもしれないから相手を間違わないようにね」


彼女の声は優しくレイアを心から心配するような声音であったが、確固としていた。


ローデンは一歩引き、遠目からレイアを見た。彼が口にしたのは、雑な励ましでもなく、噂でもなく、ただ短い忠告だった。


「お前のように美しい太刀筋をしているものはいた…しかし私の知っている何人かはその慢心で怪我をし、引退を余儀なくされた者もいる。気をつけて、励めよ。」


刃は強さを語らない。だが、この一日で、誰よりも確かにそれを知る者が一人増えた。森の端で倒れたボアの影が、夕陽に長く伸びる。


「うーん。今回のは失敗作だな。また調整しないと…」


その夜、森の中で1人ローブを着た男がポツリと呟いたのは誰も知らない。

さてさて!楽しんで頂けましたでしょうか!おもろいやん!頑張ってくれぃ!等のお気持ちがあればぜひ評価の方お待ちしております!それではまた次回お会いいたしましょう!

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