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獄炎の姫君〜失意の底で何を思ふ  作者: 蕎麦粉


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帝国編 1.龍の思いは

こんちは!書きためてた小説を大放出いたします!

みんな大好きご都合主義なろう世界へ!レッツゴ〜!

「行くなら、バルバドス帝国が手近だろうな」

初代龍神は壁に凭れたまま、淡く言った。


レイアは紙片を指の間で返し、バルバドス帝国という名を自分の口の中で何度か転がす。レイアは生まれてから一切国の外には出ていない。そしてそう言った「外」の事を教えてもらう前に先生たちは死んでしまった。


「バルバドス帝国か…それってどんな国なの?」


彼女が問うと龍神は僅かに目を細める。


「この大陸においては最も大きい国であろうな。しかもここからさほど遠くもないしな。あそこであれば情報も集まるだろう」


彼女にとって言葉はそれだけで十分だった。帝国へ向かう理由が整えば、他は後から付いてくる。彼女は頷いた。迷宮で刻まれたもの、師の言葉、碑文の冷たさ――それらを抱えて外へ出る以上、まずは世界の中心に近い場所へ行くべきだ。


出立を前に、ひとつだけ形に残すことを思い立った。言葉や祈りは風に流れ、やがて薄れてしまうと思ったから。


傷も名も、そこに刻めば怠惰な時間すら触れにくい。大きな岩を見下ろすと、急に冷たい手で胸を押されたように決意が固まった。


刃を石に当てるのは衝動ではなかった。華焔を抜き、柄に力を込めて押し付けると、刃は石を割った。砕ける粉が薄く舞い、切り口に手を当てると冷たさが掌を返す。そこに父と母、ラヴァガンの名を短く彫る。里のみんなの名前はわからなかったがただ、「里のみんな」と書くことにした。


掌を碑に置いたとき、彼女は小さく息を吐いた。声にしない送別の言葉を、ただ自分の胸に留めるためだ。


「行ってくるよ、みんな」


言葉は最後の確認でも祝福でもなく、私的な誓いだった。ふと何か視線を感じた気もするがきっと気のせいだろう。そうでなければこの国にとどまってしまったかもしれない。


荷をまとめ、夜毎に一度だけ火をともして寝起きし、二週間程度歩いただろうか。道は単純ではなく、夜は冷たく、足の裏はいつの間にか皮で覆われたように慣れていく。食は乾かした肉と残り米、声は自身の呼吸だけだ。


麓に至る頃、空気が変わった。葉の色が鈍り、風が金属のような匂いを帯びる。喉の奥に粒子がつく感じが差し込み、息を呑むと胸がざわつく。


魔力濃度が上がっている。魔の山と呼ばれる所以は単純で、ここでは空気自体が魔力を含み、弱い者はそれに呑まれ、強い者だけが生き延びる。強い魔物は強いもの同士で戦い喰らい、また強くなっていく。だから人は近づかない。その説明は短くて十分だった。


レイアが木の上で仮眠を取ろうとした時何者かの気配を感じた。地面に降り立ち、夜の縁でひとり、彼女は刃を抜いた。


月が鞘の縁を薄く撫で、華焔は静かに応じる。最初の気配は遠くから忍び寄るように始まった。地面がうなり、根が裂け、黒い影が草むらを這い出す。魔物の群れがまず現れた。犬のようでありながら皮膚の下に暗い脈があり、赤い眼が何かを吸い寄せるように光る。近づくと空気の色が一段と濃くなるのがわかった。彼らはこの地の魔力を喰らって育ったいわばサラブレッドの魔物であった。


最初の一撃がレイアの腕を掠める。決して油断などしていなかった。ただし迷宮の魔物と比べてもある程度のところまではやっていけるだろうという強さ。


刃を振るって浅く切るも、相手は瞬時に皮膚を引き締めてくる。再生が速い。魔力を喰らう生き物は、傷を引きずらない。


息が荒くなり、血の味が口に回る。思考が透けるように薄くなる感覚が差し込み、力を放つたび胸の奥が熱を帯びる。だがここで止まれば、襲われる。


叫びはしない。短く、しかし明確に呟く。


「来い」――それだけだ。


力任せに振るっても効かないことを学ぶのは速い。大振りな攻撃は弾かれる。代わりに、彼女は刃を小刻みに走らせることを選ぶ。


相手の重心を外し、脚を斬って動線を断つ。刃先を滑らせて血を引き出し、次の瞬間には別の個体へと移る。動作は短く、確実で、無駄がない。炎の応答は抑える。華焔が微かに熱を帯びるが、炎を全開にすることは避ける。剣と身体の呼吸を合わせることが先決だ。


群れの数が減ると、空気が少し軽くなる。だがその瞬間、地面が低く唸り、大きな影が土の中から立ち上がった。


群れが一つの核のように集まり、その中心にあるものが動いたのだ。四肢は太く、皮膚の脈は黒い河のように蠢き、眼は虚ろだが確かな威圧を放つ。獣の亜種ではなく、ここで育った「核」だと理解するのに、時間は要らなかった。


彼女は一拍置いて、刃を構え直す。息はまだ上がり、手に血が滲んでいる。だが動きは澄んでいる。斬る角度を変え、相手の力を受け流す。


大振りではなく、相手を誘導して自らの有利な地形へ引きずり込む。刃は深く、しかし素早く入る。夜露に混じる血が石に落ち、冷たい音を立てる。相手が倒れ、山の風が一度だけ唸る。


それでも、山は黙ってはいない。遠くでさらに地鳴りが続き、別種の影がまだ残っている気配がする。まるで新参者の強者を出迎えるように魔の山の奥から鳴き声とも笑い声ともつかないような音が聞こえる。


彼女は刃を鞘に収め、短く息を整えた。掌に残る冷えた石の感触を思い出し、胸の中で小さい誓いを繰り返す。剣の重みは確かで、足はまだ進めると告げている。

さてさて!楽しんで頂けましたでしょうか!本日から帝国編開始でございまする!おもろいやん!頑張ってくれぃ!等のお気持ちがあればぜひ評価の方お待ちしております!それではまた次回お会いいたしましょう!

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