迷宮編 7.龍は焔に焼かれる
こんちは!書きためてた小説を大放出いたします!
みんな大好きご都合主義なろう世界へ!レッツゴ〜!
二十五層に足を踏み入れた瞬間、明らかに世界が変わった。
それが最奥に位置する門から発せられている熱だと理解するまでに、少し時間がかかった。
炎ではない。燃えていない。それでも、空気そのものが高温で固定されているようだった。呼吸をするたび、内側から肺が焼かれるような感覚がレイアを襲った。
広間は、異様なほどに広かった。
天井は闇に溶け、壁は遠く、床は一面が焦げ落ちている。火は見えない。だが、燃え尽きた痕跡だけが支配している。歩くたび、足元の焦土が粉になり、崩れ、その崩れた音さえ熱で歪んで聞こえた。
レイアは数歩進み、思わず立ち止まった。
身体が拒否している。ここに長く留まるべきではないと、本能がガンガンと警鐘を鳴らしている。
それでも、視線は自然と中央へ吸い寄せられた。
門があった。
巨大な二枚扉。
互いに噛み合うことを拒み、ずれたまま、鎖によって無理やり引き寄せられている。鎖は一本や二本ではない。十重二十重にも重なり、床に突き刺さり、壁を貫き、空間を縫い止めるように張り巡らされている。扉の表面には、彫刻とも傷ともつかない凹凸が無数に走り、苦しみに満ちた顔や焼け爛れたような身体。見るもの全てを恐怖に陥れるような姿で鎮座していた。
苦しみだけが、形になって残っている。
「……一才の希望を捨てよ…か」
言葉が続かなかった。
説明は必要がなかった。一目見ただけでそれが「地獄の門」であることが分かる。ここが終点であり、始まりだ。
一歩、二歩と扉へと近づいた。
鎖が鳴った。
低く、腹の奥に響く金属音。門が反応したというより、空間全体が警告を発したようだった。次の瞬間、扉の隙間が僅かに開く。
赤黒い焔が、滲み出す。
光はない。ただ圧だけがあった。
床が融け、空気が歪み、熱が形を持って襲いかかる。視界が揺れ、平衡感覚が崩れた。
その奥から、声が来た。
匂う。
感じる。
ここだ。
あいつの魂が、ここにある。
ザラザラとノイズがかかったような…脳みそをヤスリで擦られるような音が耳朶を打つ。
必ず見つけ出すという意思だけが、暴力的に流れ込んでくる。
「……アルバスか」
短く吐き捨て、レイアは走った。
迷いはなかった。門に触れた瞬間、熱が爆ぜた。
皮膚が裂け、肉が焼け、骨が軋む。
それでも、手を離さない。
門の内側からの力は圧倒的だった。押し返そうとしても押し潰される。暴力的とも言える重圧に腕が震え、関節が悲鳴を上げる。
突如として鎖が一本耐え切れずに弾け床を抉って転がった。
「……っ、く……!」
声にならない声が漏れる。
押し返そうと扉に力を込めた瞬間、血管が浮き上がり、次の瞬間にブチブチと音を立ててはじけた。
血が噴き出し視界が赤く染まる。だがすぐに塞がる。肉が勝手に繋がり、骨が戻る。
再生する。
そして、また焼かれる。
再生のたびに扉から噴き出る焔が深くレイアの体へと入り込んでくる。
皮膚の下、筋肉の奥、骨の内側へと、逃げ場なく染み込んでくる。
「……やめろ……!」
誰に向けた言葉か分からないまま叫ぶ。
門はさらに開こうとし、焔が噴き上がる。
次の瞬間、胸を打ち抜くような熱が来た。
右胸が内側から爆ぜ、真っ赤に染まっていた視界が白く飛ぶ。意識が途切れかけ、膝が崩れた。それでも、手は門から離れなかった。
痛みが限界を超えた、そのとき。
レイアの中で何かが音をたてて弾けた。
感情なのか、枷なのか、はたまた別の「ナニカ」…
怒りでも恐怖でもない。
このまま終わるわけがない、という生存本能そのものだったのかも知れない。
両腕に異変が走る。
筋肉が張り、皮膚の内側から何かが盛り上がる感触。裂けるような痛みとともに、表層が変質し始めた。爪は人間のような丸いものではなく尖り何物をも穿つような爪に…腕からは黒い鱗が湧き出すように現れ、同時に淡い桃色の脈がその縁を走る。
熱が違う。
焔が侵食するのではなく、圧縮され、抑え込まれる感覚。
「……え?」
自分の腕を一瞬見下ろし、思わず呟く。
「これ……龍化……?」
教えられた覚えはない。
意図したこともない。身体が勝手に選んだ自衛手段だった。
黒と桃色に彩られた龍の腕が、門の縁にめり込む。爪が鎖を噛み、金属が悲鳴を上げた。焔が腕に絡みつこうとするが、鱗がそれを拒む。完全な龍化ではないため身体は焼ける。だが、今までより確実に耐えられる。
「……今しか、ない……!」
歯を食いしばり、全身の力を叩き込む。
門の内側から押し寄せる力が一瞬乱れた。
鎖が悲鳴を上げ、床に縫い止められた錨が引きずられる。門がゆっくりと閉じていく。
だがここで最後の抵抗が来た。
赤黒い焔が、爆発するように噴き上がった。
閉じかけの細い隙間からは逃げ場がなかった。
右胸から肩、背中へ。
熱が流れるのではなく、レイアの身体へと刻まれる。
皮膚が焼け落ち、再生し、また焼ける。
何度も、何度も。
意識が千切れそうになる中で、それでも押し続けた。
腕の鱗は砕け、脚が崩れ、再生しては壊れた。
その度に桃色に光るいく筋もの光は明滅を繰り返し光量を上げていく。
最初に扉を押し始めて数刻ほどだっただろうか。やがて――。
重い音とともに、門が噛み合った。
鎖が沈黙し、焔が引き戻される。
まだだ。
終わらぬ。
必ず…探し出す。
その声を最後に、気配は引いた。
レイアは、その場に崩れ落ちた。
呼吸ができない。胸が焼け、痛みが残っている。震える手で触れると、感触が違った。
右胸から肩、背中にかけて。
消えない純黒の焔の痕が、刺青のように刻まれている。
龍の腕は、ゆっくりと人の形へ戻っていく。
完全ではない。痺れと熱が残り、違和感が消えない。
「……偶然、かな……」
掠れた声で呟き、それでも立ち上がろうと膝をつく。
門は沈黙していた。
焦土の広間に、重い静寂が降りる。
本体が完全に顕現したわけでもなくあの圧力…
これが獄門龍…
間違いなくこの世界に於ける上澄みの怪物だろう…
それを理解した上で、レイアは地面にパタリと倒れ伏した。
さてさて!楽しんで頂けましたでしょうか!おもろいやん!頑張ってくれぃ!等のお気持ちがあればぜひ評価の方お待ちしております!それではまた次回お会いいたしましょう!




