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Dream memory  作者: まっき
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呼ぶ声

扉の向こうで得たのは、答えではなく、さらに深い謎だった。

少女の言葉、屋敷の空気、そして名も知らぬ“存在”。

選択を迫られるには、あまりにも情報が足りない。

――それでも、運命は待ってくれない。

少女に案内されるまま、その場所へ足を踏み入れた。

薄暗い空間の中で、港は彼女から様々な話を聞かされた。

理解できたこともあれば、意味すら掴めない言葉もあった。


――その瞬間だった。


「めーーーーるーーーーー」


耳にまとわりつくような、不気味な声。

低く、間延びしたその響きは、空間そのものが鳴いているかのようだった。


「めーーーるーーー……」


一度きりではない。

何度も、何度も。

まるで誰かを呼んでいる――いや、“呼び続けている”。


少女の表情が、はっきりと変わった。


「……呼ばれた。行かなきゃ」


そう呟き、踵を返してどこかへ向かおうとする少女に、港は思わず声をかけた。


「待って。……行くのか?」


それでも少女は立ち止まらず、振り返りもせずに言う。


「ダメ。魔女様が呼んでいるの」


そして、不意にこちらを見ると、静かに問いを投げかけてきた。


「あなたは、どうしたい?」


突然の問いに、港は言葉を失った。

答えなど、持ち合わせていない。

何が正しくて、何が危険なのかすら分からないのだから。


少女は少し考えるように間を置くと、ぽつりと呟いた。


「……なら、これあげる」


そう言って差し出されたのは、小さな指輪だった。

古びているのに、不思議と目を引く。


「それ、付けててね。あなたを少しは守ってくれるはず」


港は困惑しながらも受け取り、思わず問い返す。


「……これは、何なんだ?」


しかし、その問いに答えは返ってこなかった。


「めーーーーるーーーー」


再び、あの声。

さっきよりも近く、強く感じる。


少女は小さく息を吐き、微笑んだ。


「もう行くね。バイバイ」


そう言い残すと、屋敷の内部へと続いているであろう扉を開き、

迷いなくその奥へと消えていった。


扉が閉まる音だけが、静かに響く。


港はその場に立ち尽くし、

手元の指輪と、閉ざされた扉を見つめ続けていた。

選択肢は与えられた。

だが、選ぶための材料は、あまりにも少ない。

残されたのは、正体不明の指輪と、少女の言葉だけ。


呼ぶ声の主は誰なのか。

“魔女様”とは何者なのか。

そして、この屋敷は何を求めているのか。


答えはまだ、扉の向こう側にある。

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