8話 昆虫採集から始まる非日常への入り口①
「——昆虫採集をしましょう。場所はカイツール周辺の森で、明日から出発です」
フリューが明日からの予定を半ば強制的に決定する。こういう時のフリューには誰も逆らえないが、同時にフリューが意味もなくこのような言動をとる事がないのは全員知ってる。
「おいおいフリュー、昆虫採集はともかく明日からいきなりカイツール行きは急すぎないか?そもそも何の為に昆虫採集を?」
そう。アリオンの言う通り、確かにそれは当然の疑問だ。昆虫採集とカイツール行きが僕の中で全く結びつかない。
「僕からも聞きたい。フリューの事だから、何かしらの考えがあっての事だと思うけど……」
僕の問いに対して、フリューは1枚の紙を示す。それは——、ギルドからの正式な依頼書だった。
▽▽▽
【依頼内容:黄金五本角カブトの納品】
カイツール周辺の森に生息するという黄金五本角カブトの納品を頼みたい。黄金五本角カブトはその希少さ故に研究が進んでおらず、生態にも謎が多い幻の昆虫だ。その謎の一端でも解き明かす事ができれば、それは学術的に(以下700文字程省略)
↑(原文ママ)
報酬だけで見れば、カイツールまでの旅費を含めても充分お釣りが返ってくる程の高額報酬。だが、問題が一つ——、
「見つからなかったら、どうする?」
至極当然の疑問をリアンが問いただす。
「当然、見つかるまで探すだけの話ですが、何か?」
『ラセン階段!!カブトムシ!!廃墟ノ街!!イチジクノタルト!!カブトムシ!!!』
フリューが有無を言わせぬ圧を放ち、その肩の上でゲイルが何やらよくわからないワードを喚き立てている。やはり怖い。
「では、明日からカイツール行きです。既にカイツール方面に向かう商隊の護衛依頼は確保してありますので寝坊だけはしないでください」
——と、まぁ、単なる昆虫採集にしては破格の報酬に釣られて幻の昆虫、黄金五本角カブトの捕獲遠征に出かける事が確定した。いや、最初から拒否する選択肢がなかった訳だけども。
改めて思うまでもなく、【無名の星屑】の実質的なリーダーはフリューだ。
こと戦闘面や対外的な意味ではアリオンがリーダーだけど、パーティの資金管理などの経済的な面でフリューがどれほど尽力してくれているかは僕達もよく知ってる。
確かに急な話ではあったが、これ程の一獲千金チャンスはなかなか訪れる物ではない。
だったら、フリューを信じて振り回されてもいいかな……と、僕はそう思った。たぶんアリオンとリアンも同意見——、だといいなァ……




