5話 スキル深化→進化
——完敗だった。『3分くらいなら大丈夫』なんて、ナメてかかった結果がこれだ。ベテランテイマーの使役する魔物が弱い訳がないって、少し考えればわかる筈なのに……
「大丈夫?怪我はないかい?」
目を覚ますと、ダン教官が心配そうにこちらを見ている。
「完全に……ナメてました……」
「そうだね。前より成長しているのは確かだけど、これが実戦なら君はもう死んでいてもおかしくない」
「はい……」
——返す言葉もない。僕は少しばかり成長したからといって調子に乗っていた。とはいえ、落ち込んでばかりもいられない。まだまだ鍛錬は続くのだから。
「先程の鍛錬を見て思ったのだけど、アルマ君のスキル【魔鎧装】は、魔力を物質化させて外骨格を形成するスキルだったよね?つまり、魔力の物質化なんだから自身の身体から切り離された場所にも外骨格による構造物を造れたりしないのかい?」
「……ッ!?一度だけ、そういうのができた事があります」
僕は過去を思い返しながら、その時の事をダン教官に話した。
——、簡単にまとめると、過去にサイクロプスの討伐依頼を遂行していた時、最前線で戦ってたリアンがサイクロプスの一撃を回避し損ねてあわや直撃——というタイミングで咄嗟に僕が、地面から外骨格で造った障壁を展開してリアンを守ったという話だ。
「あの時は無我夢中で、正直たまたまできただけというかなんというか……」
「いや、君ならできる!!!なぜなら、スキルの拡張性とは自己認識の問題だからだよ。スキルの効果に沿った内容であれば、できると思った事はだいたいできる!!!」
「チートスキルやハズレスキルなんて、誰かが勝手に決めた都合でしかないんだ!!!どんな力も、使いこなしてこそ意味がある!!」
——ダン教官の言葉は、まさしく目から鱗だった。スキルの拡張性とは、自己認識……
【魔鎧装】の特徴は魔力を物質化させる事——、ならば、魔力さえ通れば壁や地面からでも外骨格による構造物を形成できる筈……
ひとまず練習として、円柱をイメージしてみる。
——【魔鎧装】、発動!!!
魔力を送り込むつもりで床に軽く手をついてみると ——、
——イメージ通り、円柱状の構造物が出来上がった。
「すごい!!すごいぞアルマ君!!!よし、この調子でもっと練習しよう!!あと、実戦での活用方法も考えないとね」
——目の前の世界が、急に広がったかのようだった。今まで【魔鎧装】は外骨格を纏うだけの自己強化スキルだとばかり思っていたが、こんな事もできるなんて……
それからはダン教官と一緒に、色々なアイデアを考えてはそれについて議論した。
自分のできる事が広がっていく、その感覚がただひたすらに嬉しくて楽しかった。




