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マジックロッド  作者: さだきち


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Level 6 破滅の設計図と溶岩の洞窟


~ 溶岩の洞窟 ~



サイレント・シープの五人は、眩い光に包まれ、次の目的地である Level 6 の迷宮に転送されてきた。


「ここは……」カイルがあたりを見回す。


そこに広がっていたのは、切り立つ岩肌に覆われた薄暗い空間。まるで巨大な鍾乳洞や自然の洞窟といった雰囲気だった。しかし、その雰囲気は尋常ではない高熱を帯びていた。


「やたら暑いわね……」セレスが思わず呟く。


リリアンが少し先にあった深く暗い溝の底を見る。「なにこれ!?」リリアンは驚きで目を見開いた。


溝の底には、どろどろと溶けた灼熱の溶岩が、鈍い光と高熱を放ちながら音もなく流れていた。「ひゃあ……落ちたら一巻の終わりだな」とゼオンが恐る恐る下をのぞきながら言った。


ホログラムのフィンが姿を現す。「フィン!ここは何なの!」とセレスがフィンに問う。


「ええ、御覧の通り流れる溶岩に落ちたら命はありませんので、落ちないように気を付けてください」とフィンは淡々と答える。「そんなことは、わかってるよ!」カイルが苛立たしげに言った。



~ タリスマンへの案内 ~



「それで……申し上げにくいことなんですが、今回は、ある部屋まで私に案内させて頂きたいと思いまして……」フィンが気まずそうに言葉を濁す。


「なんで、申し上げにくいんだ?」カイルが聞く。


「こういったことは違反行為になっておりまして……しかし、ケビンさんからの依頼で、あなたたちを案内しろという事でしたので」フィンが説明する。


「これからご案内するのは、ある種の安全装置と言える設備になります」「安全装置?」カイルは聞き慣れない言葉に眉をひそめた。


「『タリスマン』と呼ばれるものなのですが……もし、泡が壊れて精霊世界に放り投げられる事があっても、一度だけこの世に転送される救済措置です」


フィンは続けた。「マジックロッド開発者のために用意された設備みたいなんですが……今回は特別にサイレント・シープのみなさんを、ご案内して差し上げなさいと言うことでしたので」


「それをケビンさんに指示されたの?」カイルが尋ねる。


「もちろん、それだけではなく、私自身もあなたたちを是非ともタリスマンにお連れしたいという考えなのですが……ダメでしょうか?」フィンは少し不安そうな表情を見せた。


「え?誰がダメだって言ったの?」リリアンが即座に言った。「こっちだって、ぜひ案内してほしいわよ、そんなの」セレスも力強く同意する。


「じゃ、案内してよフィン」カイルが言い切る。「わかりました。ではまず中央の道を進み、扉を開けてください」フィンはすぐにホログラムの立ち位置を指示した。


カイルとリリアンとセレスがフィンの案内に従って慎重に歩き出す。「しかし、あっちいなここ」ゼオンが汗だくでついていく。「ふふふ……」とアルウェンが涼やかに微笑みながら、優雅についていった。


「くれぐれも、落ちないように気を付けてくださいね……」と言うフィンの案内に従い、サイレント・シープの五人は、灼熱の迷宮の奥へと進んでいった。



~ 秘密の扉 ~



フィンに案内されたサイレント・シープの五人は、溶岩の熱が遮断された部屋や通路を抜け、迷宮の奥へと進んでいった。熱がこもる迷宮の中で、溶岩の放射熱が遮断される部屋に入ると、わずかな安堵感が得られた。


そして、四方が岩壁に囲まれた行き止まりまでたどり着く。


「とりあえず、ここになります。お疲れさまでした」とフィンが告げた。


「いや、行き止まりなんだけど?」リリアンが怪訝に尋ねる。


「そうですよね。ここはシークレットドアになっておりまして、コールが必要なんですが……」とフィンが言う。「コール?」リリアンが聞き返す。


「私のホログラムの声だと届きませんので、私が言った通りに、そこにいる誰かが壁に向かってコールして下さい。よろしいでしょうか?」フィンはリリアンに尋ねた。「いいわよ。さあ、どうぞ」リリアンが促す。


フィンは微かにホログラムの口を開く。「フィーロ……ワーマ……ポラルト……レーメン、とコールして下さい」


リリアンはフィンが言った通り、「フィーロ……ワーマ……ポラルト……レーメン」と、壁に向かってゆっくりと、しかしはっきりとコールする。


すると、「ゴゴゴ……」と重々しい音を立てながら、目の前の岩壁の一部が静かに下に下がっていき、その後ろに緑色に光る扉が現れた。


「ふえー、迷宮の中にこんな仕掛けがあるのね」セレスが驚きの声を上げる。


リリアンが緑色の扉を開け、サイレント・シープの五人が、ゆっくりと部屋の中に入って行った。



~ 悲劇的な天才 ~



部屋の中に入ると、外の灼熱の洞窟とは一転し、ぼんやりとした薄明かりに照らされ、何か神聖な雰囲気で満たされていた。


部屋の中央には女神像があり、その前で一人の男が祈りを捧げていた。


男は、ボロボロの白衣をまとい、顔は極度にやつれている。無造作に伸ばされた白髪交じりの髪と、目の下に刻まれた深い疲労のクマが、彼が長期間にわたり過酷な使命に晒されてきたことを物語っていた。


サイレント・シープの五人が近づくと、男は驚きの表情でこちらを見た。


「もしかして、冒険者なのか?なぜ、ここに来れた?」男は警戒心を抱きながら問いかける。


「私はフロンティア・トラッカーのフィン・キャリブレイトです。私の案内でお連れしました」ホログラムのフィンが頭を下げる。


「あなたは……」カイルが代表して男に尋ねる。


「これは失敬。私はゼニス・ヴォルトだ。このマジックロッドの開発者だ」ゼニスが自己紹介をする。


「え!?あなたがゼニスなの?」リリアンが驚きの声を上げた。彼らが想像していた、邪悪な反逆者や狂気の科学者とは、あまりにもかけ離れた、使命に疲弊しきった一人の男の姿だったからだ。



~ 開発者の対話 ~



ゼニスはフィンに向き直る。「フィンくん……違反行為なのは承知だが、ケビンと話をさせてくれないか……どうしても、話しておきたいことがあるんだ……」


「は、はい!わかりました。ただいま、確認してまいります」フィンのホログラムが消える。彼はすぐに外部と連絡を取ったのだろう。


しばらくして、次に現れたのは、ケビン・フォーマのホログラムだった。


「ゼニス……一体、何があったんだ?」ケビンが苦しげに聞く。


「ふふふ、久しぶりだなケビン。お前に話せる機会があってよかった。この冒険者たちに感謝しないとな」ゼニスは微かに笑う。


これがあの、邪悪なモンスターたちを召喚し、冒険者の殺戮を繰り返した反逆者の姿だろうか。サイレント・シープの五人は、信じられないという顔をしながら、マジックロッドを生み出した二人の開発者の対話を聞き入った。



~ 制御の限界 ~



静寂の中、ゼニスは静かに話し始めた。その声には、長期間抱え込んできた罪の意識が滲んでいる。


「実は私は、マジックロッドの開発で、重大なミスを犯していた」ゼニスは告白した。


「お前の仕事は完璧だったはずだ……どこにミスが……」ケビンは、信じられないという口調で言った。


「ディメンション・シフト(DS)は、次のLevelの精霊世界に泡を作る出力装置になっている。そして、泡を作り迷宮を生成した後は、その迷宮内に精霊世界の魔力が逆流するのを防ぐ制御装置にもなる」ゼニスが説明する。


「その設計は万全なはずだ。それはインフラ担当の我々が確認した。問題なかったはずだ」ケビンは食い下がった。


「そうだな。Level 6 まではな……」ゼニスが口を開く。「Level 6 まで?」ケビンが怪訝な顔をする。


「問題は、制御可能な魔力の強さの上限にあった。例えば、Level 6 で生成される出口のDSは、Level 7 に泡を作ることのできる魔力を制御可能な上限とする」ゼニスが説明した。


「当初はLevel 8 まで、精霊世界に泡を作れると考えていた。Level 7 が理論限界だという可能性を、私たちは見落としていたのだ」


ケビンは、顔を真っ青に変えた。「つまり……Level 7 のDSもまた、制御可能な魔力の理論限界を超えていたということか……」ケビンは、今さらインフラの欠陥に気づき、絶望的な声を上げた。


「その通りだ。Level 7 のDSは魔力の逆流に耐えられない設計になっている。いずれ、Level 7 から Level 1 までのルートを辿って魔力が流れ出し、逆流した魔力は、我々の世界を滅ぼしてしまうだろう」ゼニスが、静かに破滅の設計図を語った。



~ 呼ばれた理由 ~



その瞬間、静かに話を聞いていたアルウェンが口を開いた。


「それが……私が呼ばれた理由ね」


驚いたサイレント・シープの面々がアルウェンを見た。ゼニスもまた、彼女を見つめた。「あなたは……」と尋ねる。


アルウェンは、薄明かりの中で静かな威厳を放っていた。


「私たちは四元の契り(フォース・エレメント)……予言者ロード・マードックの呼びかけで集い、一度は精霊世界の魔力で世界が滅ぶことを防いだ。しかし、また精霊世界の魔力で世界が滅ぼされようとしている」アルウェンが語る。


「私の話はいいから、そちらの話を進めて」アルウェンは先を促した。


「あなたがあの、アルウェン・ソレス……フォース・エレメントがいらっしゃったとは……うおっほん」ゼニスは咳払いをした。「そうですね、今はこちらの話を進めます」



~ 責任と決意 ~



「それで……マジックロッドをシャットダウンする事を、政府に提案したってわけか……」ケビンが言うと、ゼニスは深く頷いた。「その通りだ」


「なんで、それを政府は却下したんだ?」ケビンが疑問を口にした。


「それは、俺がバカだった」ゼニスが深くうつむく。「どうせマジックロッドをシャットダウンするんだったら、例のLevel 8 を作る魔力爆発を試させてくれと提案してしまったんだ。それが勘違いされて……」


「研究成果を試したいだけの、危険な狂人だと思われて却下されたのか……」ケビンが、政府の誤解に気づく。


「そもそも、Level 7 を作る前に気づけたはずだ……目先の目的達成や成功に目が眩み、きちんと考慮しなかった。どうかしていたよ……俺の責任だ」ゼニスが苦しげに告げた。


「ゼニス、お前だけの責任じゃない!どちらかと言えば俺が気づくべきだったんだ……俺の責任だ」ケビンが、自らも責任を負うと言った。


「いいんだケビン、もう過ぎたことは仕方ない」ゼニスは静かにケビンの言葉を制した。


「俺が責任を持ってマジックロッドをシャットダウンしておくよ……あとのことはケビン、お前に託した。よろしく頼む」


その一言に、重苦しい空気が、そこにいる全員の胸を締め付けた。ゼニスは、自らの命と引き換えに世界を救うことを決意していた。



~ 最後の願いと拒否 ~



ゼニスはケビンに目を向け、静かに、しかし有無を言わせぬ口調で依頼した。


「ケビン、すまないがマジックロッドに警告を発してくれ。誰も入って来れないように。今いる冒険者や職員や軍の部隊も、全員が退出するように」


「わかった……しかし、お前はどうするんだ?脱出できるのか?」ケビンが問い返す。


「ははは、できるわけないだろ」ゼニスは、少し自嘲気味に笑った。「せめて……Level 8 の景色を見てから死ぬよ」


彼はそう言って、魔法陣が書かれた詠唱石の円盤を手に持って眺めた。それは Level 8 への最後の挑戦を意味していた。


「最後まで俺はバカだな……笑ってやってくれ」とゼニスが言う。


「そんなことはない!お前は生涯をマジックロッドに捧げた。これは全てお前の功績だ……」ケビンが、やりきれない表情で呼びかけるが、ゼニスはただ微笑むだけだった。


「というわけで……ごめんなさい、まだ名前も聞いてませんでしたね」ゼニスは、初めて真正面からサイレント・シープの五人に目を向けた。


カイルが真っ直ぐ前を見据えて答える。「サイレント・シープのカイル・ブレイクです」

「ゼオン・フレイムだ」

「リリアン・アローよ」

「セレス・ヴォイドです」

「私が……アルウェン・ソレスよ。もうご存じのようですけど」アルウェンが穏やかに微笑む。


五人は、それぞれ名を名乗った。


「ここまで来てもらって申し訳ないが、いますぐマジックロッドから脱出してください、サイレント・シープの皆さん」ゼニスは穏やかな表情で言った。


「これから、Level 7 まで行くんですよね?」カイルが聞く。


「その通りだが……それが、どうかしたかね?」ゼニスが戸惑いながら聞き返す。


カイルは、ゼニスの目をまっすぐ見つめたまま、力強く宣言した。「最後までお手伝いさせて下さい!一緒に行きます!」


「そんな事を言われても……危険だよ?」ゼニスは、予想外の申し出に戸惑いを隠せない。


「こいつは、言いだしたら聞かないからな。逃げられませんよ?」ゼオンが口元を緩ませて言う。


「私たちに捕まったのが運の尽きね」セレスがおどけた表情を見せた。


「あなたより、私たちのほうがよっぽどバカなんで」リリアンが静かに、しかし強い意志をもって言った。


「ふふふ……」アルウェンが微笑み、カイルの決意を肯定する。



~ 最後の保険 ~



「そうですか……しかし、ついてくるなら条件があります」ゼニスは、彼らの揺るぎない決意に折れ、そう言った。「条件?」カイルが聞く。


「この女神像にお祈りしてください。これは我々が開発したタリスマンと呼ばれる安全装置です。ここで祈ると、特殊な法力の力が与えられ、精霊世界に放り出されても助かる可能性があります」ゼニスが説明する。


そして、サイレント・シープの五人は、一人ずつ女神像の前で祈った。彼らは、何かの力が体に浸透していくのを感じた。


「これでいいですか?」カイルが尋ねる。


「だけど……正直言って、我々開発者でも、実際にタリスマンの力を使った者はいない……本当に助かるか分からないよ?……それでも行くかい?」ゼニスは、これが最後のチャンスだとばかりに最終確認をする。


その言葉に、サイレント・シープの五人は、深く、迷いなく頷いた。


「それじゃ……」ゼニスは扉に向かってゆっくり歩きだし、扉を開ける。


ゼニスに続いて、サイレント・シープの五人が部屋を出ていった。その背中を見送ったケビンは、「ゼニス……」と静かに呟き、そしてホログラムは消えた。



~ Level 7への手掛かりを探して ~



サイレント・シープとゼニスは、溶岩の熱が漂う通路を歩き、いくつかの部屋を通っていった。その間も、彼らの心は、マジックロッドの抱える破滅的な欠陥と、ゼニスの自己犠牲の決意という重い真実で満たされていた。


そして、広めの部屋に辿り着き、そこで一旦落ち着く。「どこにDSがあるのかなあ……」カイルが辺りを見回しながら呟く。


「どこかには、あるはずよね」セレスが言う。「そりゃ、どこかには、あるんだろうけどさ」ゼオンが苛立ちを隠せない。


「ごめんなさいね。手伝うなんて言って、DSにも辿り着けないみたい……」リリアンがゼニスに謝罪した。


「いやいや、俺一人でも結局は一緒の事だから。まあ、どこかにはあるわけだから、気長に探そう」ゼニスは穏やかな顔で彼らを安心させた。



~ 設計書という代償 ~



「それよりも、実はあなたたちに言ってない問題がある」ゼニスが、重い口調で切り出した。


「問題ってなんですか?」セレスが尋ねる。


「俺はアルカディア軍……スタンド・ワンと取引してしまったんだ」


「取引?」リリアンが眉をひそめた。


ゼニスは持っていたショルダーバッグから、使い込まれた一冊のファイルを取り出す。「これはLevel 7 のディメンション・シフトの設計書だ」


「はあ?」ゼオンはそれがどういう意味か分からず、怪訝な顔をする。


「マジックロッドが消滅したら、またマジックロッドが再建されるはずだ。そのときに、この設計書があれば、いまのLevel 7 のDSの欠陥を克服できる。……理論上はな。実際に作って見ないとわからないが」


「そんなのスタンド・ワンなんかに渡したら、大変なことになりますよ!」リリアンが声を荒げた。軍がマジックロッド再建の主導権を握ることは、ケビンたちの志とは完全に逆行する。


「おそらく、大丈夫だろう。アルカディア軍にマジックロッドを開発できるような技術はない。結局はケビンたちに開発が任命され、遅かれ早かれケビンたちの手元に渡るさ」とゼニスは言う。


「ただ……マジックロッド再建に関する実権をアルカディア軍が握ることになってしまうだろうな」ゼニスは苦い顔をした。「ケビンの立場が悪くなってしまう……できれば、軍には渡したくなかったが、マジックロッドからみんなを避難させたり、マジックロッド消滅を警告するために、軍を利用せざるを得なかった」


「ケビンと話せることがわかってればな……」ゼニスが悔しそうに顔を歪める。


「すみません……俺たちが来るのが遅かったばっかりに……」カイルが、思わず謝罪の言葉を口にした。


「いや、悪いのは俺だよ。間が悪かったのさ。とにかく今は前に進むしかない」ゼニスがカイルに笑いかける。


「そうね……過ぎたことを悔やんでも仕方ないわ。今は前を向いて進まないと」アルウェンがそう言って微笑んだ。



~ 再びスタンド・ワンの監視下に ~



そのとき、ガチャリという音と共に扉が開き、何者かが部屋に入ってきた。


武装したアルカディア軍の部隊、スタンド・ワンだ。


「ゼニスさん……例のものは持ってるだろうな?」隊長は、彼らの会話を聞いていたのか、無表情に言う。


ゼニスは無言でファイルを持ち上げて見せる。それを見て、隊長がにやりと笑った。


「よし、じゃ、ついてこい!さっさと行くぞ!」隊長が言うと、スタンド・ワンは扉を開けて部屋から出ていく。


「ちっ」と舌打ちをして、ゼオンが怒りを隠せない。


そしてサイレント・シープとゼニスは、再び軍の思惑に巻き込まれる形で、渋々スタンド・ワンの後についていくのだった。



~ 梯子の悲劇 ~



スタンド・ワンは足早に通路を進んでいった。溝の底に溶岩が流れていることなど、彼らにとっては障害ではないらしい。バンバンと扉を開け、いくつかの部屋を通り過ぎると、彼らはある巨大な溝の前で立ち止まった。


兵士たちが慣れた手つきで梯子を組み立て、それを倒して向こう側の岩壁に渡す。溶岩が流れ、蒸気が立ち上る溝を、その脆弱な梯子で渡ろうというのだ。


まず隊長から、四つん這いになってしっかりと梯子を掴みながら、慎重に渡っていく。梯子はきしみ、重さに耐えているのが見て取れた。


ひとり、またひとりと兵士たちが向こう側に渡っていく。そして、最後の兵士が渡り終えようとしたその瞬間、バキッ!と乾いた音を立てて梯子が折れた。


「うわあぁぁ!」


兵士は悲鳴を上げながら落下し、ジュッという激しい音と共に溶岩の中に溶けてしまった。サイレント・シープの五人は、その無慈悲な結末を見て絶句した。


しばらくの沈黙の後、向こう側から隊長の怒声が飛んできた。「何をしてる!お前ら!ボケっとしてないで飛んで来い!早く!」


「アホだなあいつ……」ゼオンが呆れ顔で呟いた。


「ええ、アホだわ」リリアンも続く。「うん、アホね……」セレスも頷いた。


カイルは後ろに下がり、助走を付けようとする。「おい!待て!ちょいちょい……」ゼオンが慌ててカイルを制する。



~ アルウェンの静かな力 ~



「仕方ないわね……アルウェン!お願い!」リリアンが両手を合わせて拝むポーズをする。


「そんなにかしこまらなくて、いいわよ……」アルウェンが穏やかに微笑んだ。


「レビテイト……」


アルウェンが静かに呪文をコールする。次の瞬間、サイレント・シープの五人とゼニスの体は、わずかに宙に浮いた。


アルウェンは、まるで湖面を滑るように、溝の上を浮かびながら優雅に進んでいく。「ゆっくりでいいから……落ち着いてついてきてね」とアルウェンが手招きをしながら、穏やかに微笑む。


カイル、ゼオン、リリアン、セレス、そしてゼニスは、アルウェンが作った魔力の流れに乗り、ゆっくりと溝の上を滑っていく。


「すげー!俺、飛んでるわ」カイルが思わずはしゃぐ。


「別に飛んでるわけでもないけどな……浮いてるだけというか……」ゼオンは文句を言いながらも、この状況を楽しんでいるようだった。


そして、溝の向こう側に着くと、リリアンは隊長に向かって顔を上げ、皮肉を込めて言った。「来ましたけど?何か?」


「ふん!」隊長は背を向け、何事もなかったかのようにスタンド・ワンを率いて通路を進んでいく。彼らにとって、サイレント・シープの能力も、失われた兵士の命も、ただの道具に過ぎないらしかった。



~ Level 7への転送 ~



「よし!ここだ」隊長が扉を開けると、そこには Level 7 に行くディメンション・シフトが眩い光を放っていた。


「フロンティア・トラッカーを呼べ!」隊長が怒鳴ると、「呼びました?」とホログラムのフィンが現れる。


「早く集まれ!グズグズするな!」隊長が急かす。


やがて、眩い光に包まれ、サイレント・シープ、ゼニス、そしてスタンド・ワンの全員が、Level 7 の迷宮の入り口に転送された。



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