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マジックロッド  作者: さだきち


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Level 4 メダリオンの謎と水浸しの迷宮


~ 水浸しのLevel 4 ~



サイレント・シープの五人は街に戻り、いつものように回復と宿泊、そして教会に祈りを捧げたあと、Level 4 の入り口に転送されてきた。


「ざざー……ざざー……」と、穏やかな波の音が聴こえる。サイレント・シープの五人は、しばらく、心が落ち着くような、そんな余韻に浸っていた。


「おーい!」とその静寂を破るようにゼオンが声を出す。「説明、まったく無しかい!」とゼオンが言った。


「おやおや、どうされました?」とホログラムのフィンが応える。「どうされました?、じゃねえよ。Level 4 はどうなってんだよ?」とゼオンがイライラする。


「御覧の通り、一面水浸しです。どうしましょうかねえ?」とフィンが言う。「これって砂浜?」とリリアンが聞く。


「砂浜は砂浜ですが、これは海ではありません。海を作れるほど、精霊世界に大きな迷宮は作れませんから。差し詰め、ちょっと大きめの池って感じでしょうか」とフィンは説明する。


「これは……泳いで行けってこと?」とカイルが聞く。「泳ぐのは無理でしょうねえ……」とフィンが答える。


「でも、大きな池程度の広さなんだよね?」とセレスが言う。「距離の問題というより、この水たまりも精霊世界の魔力で生成されたものですから。水の中は魔物がうじゃうじゃいるんですよねー」とフィンが説明する。


「裸で入ったら食われちまうし、かと言って装備を固めて行ったら重さで泳げないか……」とゼオンが腕組みする。「泳げたとしても、水の中で戦うのは無理よ。弓も飛ばないわ」とリリアンが言う。「ふふふ……」とアルウェンが微笑んだ。



~ フロンティア・ハウス職員のヒント ~



そのとき、ディメンション・シフトから誰かが転送されてきた。その人たちが、ホログラムのフィンに声をかける。


「ようフィン!お前も仕事か?大変そうだな。頑張れよ」と気さくに声をかけてくる。「お疲れ様です!皆様もお勤めご苦労様です!」とフィンが頭を下げる。


「え?だれ?この人たち?」とセレスがフィンに聞く。「ああ、フロンティア・ハウスの職員ですよ。食材となる魚を獲りに来てるんですね」とフィンが答える。


「ええ!?あの刺し身とか、ここの魚だったの!?」とカイルが驚く。「一応、地のものっちゃ、地のものか」とゼオンがよく分からない事を言う。


「お疲れ様でぇす」とリリアンが可愛らしく小首をかしげてフロンティア・ハウスの職員に話しかける。


「いまから漁に出られるんですか?」とリリアンが聞く。「ああ、お前ら冒険者か?」と職員が聞く。「実はそうなんですよー」とリリアンが答える。


「じゃ、メダリオンを取ってきな。Level 2 に三つか四つくらいあったと思ったけど」と職員が言う。「え?メダリオンってそんなにあったの?」とリリアンが驚く。


「え?それで?メダリオンを見つけたらどうするの?」とリリアンが聞く。「そりゃお前、取引所に持っていくんだっけなあ?俺もよくわからねえけどよ」と職員が言って、仕掛けた網を引く準備に取り掛かった。


「あ、お忙しいとこ、すみませぇん。ありがとうございました」とリリアンが微笑みながらぺこりと頭を下げた。



~ 即座の帰還 ~



「みんな!集まって!」とリリアンが呼びかける。サイレント・シープの五人が、リリアンのところに集まってくる。


「フィン!街に戻して!」とリリアンが言う。「まったく……なんだこりゃ」とゼオンが呟く。「ふふふ……」とアルウェンが微笑む。


そして、サイレント・シープの五人は、また街に戻っていくのであった。



~ 取引所の「記念品」~



「いらっしゃいませー」取引所のカウンターのお姉さんがにっこり微笑む。その笑顔がまぶしい。


「あのー……これなんですけど」と言って、リリアンがメダリオンをカウンターに置く。


「まあ!おめでとうございます!見つけたんですね!」とお姉さんがメダリオンを手に取って確認する。


すぐにお姉さんがカウンターの後ろの棚から何かの瓶を持ってきた。そしてリリアンに、「はい、どうぞ」と満面の笑みで瓶を両手で丁寧に持ち、差し出す。


「こ、これは……」とリリアンが両手で瓶を受け取り、お姉さんに聞く。「記念品でございます」とお姉さんは、何がそんなに楽しいんだってくらいの満面な笑みで答える。


「これは、なんだ?」とゼオンが目を凝らして見る。瓶の中に、精巧な船の模型が入っていた。いわゆる「ボトルシップ」ってやつである。


「これ、もらってどうすんの?」とカイルが聞く。「知らないわよ」とリリアンが戸惑う。「何の解決にもなってねえな……」とゼオンが呆然とする。


「まあ、でもまた、マジックロッドに行ってみたらどう?何か起こるかもよ?」と意味ありげなことを言いながらアルウェンが微笑む。


みんなが、涼やかに微笑むアルウェンを見る。しばらくの沈黙の後、「そ、そうね…… Level 4 に戻ってみようか……」とリリアンが戸惑いながら言った。



~ ボトルシップとLevel 4の船 ~



そして、また Level 4 の迷宮に転送されてきた、サイレント・シープの五人。「ざざー……」という波の音が聴こえる。


「ちょっと、貸して」とカイルがリリアンからボトルシップを受け取り、ちゃぷちゃぷと浅瀬に入り、水に浮かべてみる。ボトルシップがプカプカと波に揺れている。五人は、しばらくそれを眺めていた。


「ええい!くそ!」とゼオンがボトルシップを拾い上げ、思いっきりぶん投げる。「ああー!」カイルが叫ぶ。ボトルシップはぽちゃんと落ちて、水の中に沈む。


「どうすんだよ!」とカイルがキッとゼオンを睨む。「別に無くなっても惜しくはないんだけどね……」とリリアンが諦めの表情を見せる。


「あれ?浮かんでこないな……」とゼオンが言うと、ブクブクと水面に泡が浮かんできた。


次の瞬間、ザッパアァァン!と、大きな水しぶきを上げ、船が飛び出てきた。


「うわあ!」カイルが水しぶき浴びて驚く。船から凄まじい勢いで木の板が飛び出してきて、ずん!と砂浜に突き刺さる。「のわあ!」とゼオンが驚いて飛びのく。


「あら、濡れないで乗れるのはうれしいわね」とアルウェンが優雅に微笑みながら板の上を歩いていく。「ス、スロープ?」とリリアンも恐る恐るアルウェンの後についていく。


「何このアホな仕掛け……」とセレスも呆然としながら後に続く。「最初に言っとけよ!」と怒りながらゼオンも板を上っていく。「すげー!」とカイルは目を輝かせている。


全員が乗船すると、木の板がカタカタと折りたたまれ格納される。そして、いつの間にか船の舵を取るアルウェン。最初から船の帆は張られていた。


「じゃ、行くわよ……」とアルウェンが優雅に舵を回す。サイレント・シープの五人を乗せた船はゆっくりと動き出すのだった。



~ 焚き火と懐かしい香り ~



船での移動はあっという間に終わり、サイレント・シープの五人は次の陸地に降り立った。


「たった、これだけ?」とカイルが物足りない顔をする。「そりゃ、そうだわな」とゼオンが木の板を降りていく。


「別に大海原を旅するわけじゃないしね。こんな狭い迷宮で船とか大袈裟なのよ」とセレスが後に続く。「はいはい、降りて降りて」とリリアンが手を叩き、カイルが渋々船を降りる。「ふふふ……」とアルウェンが微笑んだ。


そして五人は迷宮の通路を歩いていく。しばらくすると、珍しく半開きの扉があり、そこから香ばしい匂いがただよってきた。


リリアンがそっと扉を開けると、中で老人が焚き火をして魚を焼いていた。「美味そうだなあ……」とカイルの腹が鳴る。「もしかして換気?これ?」とセレスが扉を指さす。


サイレント・シープの五人が、その老人に近づいていく。「よくきたね……さ、こっちに座って食べなさい」と老人は優しく微笑む。


「じゃ、遠慮なくごちそうになります!」とカイルが焼けている魚を取り、かぶりつく。「もう!」とリリアンが呆れ顔をする脇で、ゼオンがもうひとつの魚にかぶりついていた。


「超うめえ」ゼオンが呟く。「ふふふ……」とアルウェンが微笑んだ。



~ ベインとの再会 ~



その瞬間、アルウェンの顔を見た老人が、驚きで目を見開いた。


「おお……アルウェン……アルウェン……」老人の頬を涙が伝う。それを見たアルウェンも驚きの表情に変わる。「まさか……!ベイン!あなたベインなのね!」とアルウェンはその老人に抱き着く。そして二人は抱き合ったまま、しばらく時が過ぎた。


「なに?なに?」とリリアンがセレスの顔を見る。セレスはわからないとばかりに首を振る。カイルとゼオンは夢中で魚を食っている。


「それで、ベイン……何でこんなところで、魚を焼いてるの?」とアルウェンが尋ねる。「ははは……お前もあれか?ロードが枕元に立ったか?」とベインが穏やかに微笑む。アルウェンが無言で頷いた。


「俺は……あれだ。フロンティア・ハウスの職員になって、魚を獲る名目でマジックロッドに入れたんだ」と言ってベインは身分証を見せた。「いいなエルフは。そんな若い子たちと一緒で。全然変わらないんだな……あの頃と。一目でわかったよ」とベインが言う。


「そんなことないよ。世代間ギャップで苦労してるわ」とアルウェンが微笑む。「そうだったの!?」とリリアンが驚く。


「私たちが力を失って……あれから、どうしてたの?」とアルウェンが聞く。「お前はどうなんだ?」とベインが聞き返す。「私?幸せだったよ」アルウェンが微笑む。「そうか……良かった……良かった」とベインの目に涙がにじむ。



~ 最後の願い ~



「俺はもう歳だ……最後の奉公と思ってな。ゼニスって奴を追ってるんだ」。「ゼニス?」とアルウェンが聞く。


「ああ、お前はまだ知らないのか。どうやら、そいつが各地で魔物を召喚してるらしいが……まあ、いい」とベインは核心までは話さないと言った様子だ。


「アルウェン……お前には、もう関わらないでほしいと思ってる。お前は十分に犠牲になった。幸せなんだろ?その幸せな場所に、戻る気はないのか?」とベインはアルウェンを見つめる。


「そんなわけには……私も覚悟して来たんだから」とアルウェンが言う。「そうか……そうだよな。それに新しい仲間にも恵まれるようだし」とベインは、一心不乱に魚を食ってるカイルとゼオンを見て微笑んだ。


「よっこらせと……じゃあな」と言って老人は杖をつきながら、扉を開けて出ていった。


「ベイン……」とベインが去っていった扉を見つめるアルウェン。アルウェンの別の姿に触れたリリアンとセレスが、話しかけられないまま、アルウェンを見ていた。



~ 今の私たち、今の場所 ~



「いやー、美味かったなあ」とカイルが満足そうに言う。「迷宮であんな美味いもの食えるなんて。俺も Level 4 に通って魚獲って暮らそうかな」とゼオンが並んで歩く。


「あのひと……どんな人なの?」とリリアンが思い切ってアルウェンに聞いてみる。「ふふふ……もう昔の話よ」と言ってアルウェンが微笑む。


「ゼニスがどうのって言ってたけど……」とセレスが言ったとき、「それは、ベインが言いたくなさそうだったから聞くのをやめたわ」とアルウェンが微笑み、遮った。


「私はもうサイレント・シープの一員だし、あなたたちが大事なの。これから私たちに危機が訪れたとき、私も共に戦うし、何もなければ何もないで、あなたたちと一緒に過ごすだけよ」とアルウェンが言う。


「これから知るべき時がきたら、自ずと知る時が来る。それまでは、私たちは私たちの進む道を歩いていくべきだわ」と言ってアルウェンがにこりと微笑む。


「そっか、そうだよね……」とリリアンが言った。リリアンとセレスは、それ以上聞くのをやめた。



~ 禁じられた召喚魔法 ~



そのとき、迷宮の奥から何か騒がしい声が聞こえてきた。全力で走ってくる冒険者のパーティーが、サイレント・シープには目もくれず、そのまま走って通り過ぎる。


急に迷宮内が赤く点滅しだした。フィンのホログラムが現れる。「緊急避難警報が出ています!一旦街に脱出してください!」とフィンが警告する。


「なに?なに?何が起こったの?」とリリアンが聞く。「禁じられた召喚魔法により、魔物が召喚されたようです」とフィンが説明する。


「魔物たってさ、迷宮に魔物がいるの当たり前だろ?むしろ、それを狩りに来たんだしさ俺たち」とゼオンが言う。


「違うんです!強さが桁違いなので……出遭ってしまったら、確実に全滅しますよ!しかも、救出までにどれくらいかかるか……最悪の場合、消失しますよ!」とフィンが声を荒げる。


向こうからは、死体を回収するはずのアルカディア軍の部隊も逃げてくる。「お前ら何やってんだ!早く逃げろ!」と隊長らしき男が叫んだ。


「何かあったんですか!」カイルが尋ねる。「向こうでストライカーが戦っているが……長くはもたんだろう。お前らもさっさと逃げろ!」と言ってアルカディア軍の部隊は走っていった。


「”ストライカー”って?確かレッド・ソーサーのこと?」とセレスが言う。「あっちか……」とカイルがみんなが走ってきた方向を確認する。



~ 恩を返す時 ~



「よし、助けに行こう」とカイルが言う。「なに言ってんの、あんた!?」とリリアンが驚く。


「俺、思ったんだけど」とカイルが言い、「何だ?」とゼオンが聞く。「俺たちはレッド・ソーサーに一度は助けられた」とカイルが言う。「死んじゃいますよ!あの時とは状況が違います!」とフィンが叫ぶ。


「俺だけでも行く」とカイルは通路の奥に歩き出した。「しょうがねえな」とゼオンが後に続く。


「死ぬときは一緒よ」と言ってリリアンも歩き出す。「こうなったら、やってやるわよ」セレスもついていく。「ふふふ……」とアルウェンが微笑む。


「みなさん……せめて、死なないで戻ってきてくださいね……」とフィンが祈った。


こうして、決死の覚悟を決めたサイレント・シープの五人が、迷宮の奥に向かって進んでいった。



~ レッド・ソーサーの終焉 ~



決死の覚悟を決めたサイレント・シープの五人が、通路の奥の扉に辿り着く。そしてゼオンが勢いよく扉を蹴破った。


「ひいぃ!」とセレスが青ざめた。部屋には、4体の黒焦げの遺体が横たわっていた。そのうち1体の胸当てと槍はかろうじてわかるが、あとの3体はもはや判別不能だ。


そして、上半身と下半身が逆の向きで倒れているライオット……腕もあらぬ角度に折れ曲がっている。


「バカね……ここに……来ちゃダメ……」か細い女性の声が聞こえた。「ミナ!!」と叫びながらアルウェンが駆け寄り、血だらけのミナを抱きかかえる。


「大丈夫よ……あなたたちはまだ若い。その生命力なら、灰になっても生き返るわ」とアルウェンが泣きながら声をかける。


「おそらく無理よ……あなたたちだけでも逃げて……そ、ごふっ、けほっ。そこにいるわ……」と言い残し、ミナはこと切れた。「ミナ!」とアルウェンがミナを抱きかかえ号泣する。


「逃げるべきだわ!!」セレスが必死に警告する。「もう……遅いわ……」とアルウェンが顔を上げる。その視線の先で、巨大な羽を羽ばたかせ、鋭い爪を持つ、漆黒のドラゴンたちがゆっくり近づいてくる。


「ブラック・ドラゴンが4体よ」と言ってアルウェンが、ミナの持っている角笛をそっと掴んだ。



~ 盟約の執行者 ~



「ごめんね……ゼオン、あなたが犠牲になって。できるだけ時間を稼いでほしいの」とアルウェンはゼオンにウンダバルの角笛を渡す。


「逃げられる人は逃げて……あなたたちだけでも生き残って」とアルウェンが、真剣な表情で言う。しかし、カイルとリリアンとセレスは、ブラック・ドラゴンの恐怖に飲まれ、青ざめたまま動く事すらできない。


「ええい!くそ!」とゼオンがやけくそになって、角笛を吹く。地の底から響き渡るような轟音が鳴った。その音にブラック・ドラゴンたちの動きが一瞬止まったが、すぐにまた、じりじりと近づいてくる。


「おおおおおおおお!!」アルウェンが両手を振り上げ叫ぶ。あたりは暗くなり、ブラック・ドラゴンたちが淡く紫色に光る。アルウェンの目が青白く輝いた。


アルウェンの呪文の詠唱が異様な声で響き渡る。次の瞬間、凍てつく空気があたりを覆っていく。


「我は四元の契り、永劫の凍星」

「水精霊に選ばれし盟約の執行者なり」

「遥かなる無限の極致、絶対零度の王よ、今こそ応えよ」

「地獄より来たれ邪の化身、暗闇より来たれ魔の化身、全ての災いの根源を指し示せ」

「精霊の力をここに示し、破滅よ!無に還す凍てつく槍となれ!」


巨大なつららが、隕石群のようにブラック・ドラゴンたちに降り注いだ。その威力はもはやこの世のものを超越しており、無数の轟音、飛び散る血肉、原形を留めぬほど蜂の巣にされながら、ブラック・ドラゴンたちの命は塵と消えた。


そして、アルウェンは力なく崩れ落ちた。あたりは明るくなり、静けさを取り戻す。



~ ストライカーへの任命 ~



「アルウェン!!」とリリアンが駆け寄りアルウェンを抱きかかえる。「私は大丈夫……無理しすぎただけ。それよりその子たちを……」と言うとアルウェンは気を失った。


カイルとゼオンは、レッド・ソーサーの6人の遺体を、回収しやすいように運んで並べた。ゼオンはミナの手を取り角笛をにぎらせた。


すると、扉を開けてアルカディア軍の部隊が入ってきた。「おお?やけに早いな。こっちだ!早く回収してくれ!」とカイルが手を上げる。


「ふん、俺たちは死体回収ではない」と隊長らしき男が言う。「なんなの?あなたたち?」セレスが聞く。


よく見ると、彼らは戦闘服を着て装備を固めている。「スタンド・ワンだ。我々は軍の特命を受けている」と隊長が言い、セレスにカードを渡す。「只今よりサイレント・シープの五名を、ストライカーに任命する。追って沙汰を待て」と隊長が言い、入ってきた扉に向かって歩いていった。


スタンド・ワンの隊員の一人が振り向き、「お前らは向こうの扉から出ろ!」と言って、もうひとつの扉を指さした。そしてスタンド・ワンの部隊は部屋を出ていった。


「どうする?」とカイルが言う。「とにかく、その扉に行ってみましょ」とリリアンが言い、カイルとゼオンでアルウェンを運んだ。


その扉を開けると、Level 5 へのディメンション・シフトが光っていた。「こういうことね……」リリアンが言う。


「おおお!サイレント・シープのみなさん!よくぞご無事で……良かった……本当に良かった」とフィンが涙ぐんだ。


そして、サイレント・シープの五人は Level 5 の迷宮に転送された。そして、すぐに Level 5 の入り口のDSから、街へと戻った。



~ 魔力枯渇と安息の間 ~



街に戻ると、倒れたアルウェンを抱えて、まず真っ先に教会へと直行した。


アルウェンを祭壇に寝かせ、教会の司祭がオーブを掲げて法力の呪文を唱える。


「どうなんでしょうか?アルウェンは……」リリアンが心配そうに司祭に尋ねる。「今のところは、何とも言えませんねえ……」と司祭が答えた。


「この世界は魔力に覆われていて、我々も生きるために魔力が必要なのです。アルウェンさんは、その生きるために必要な魔力が、ほとんど残ってない状況です」と司祭が重々しく説明する。


「魔力がなければ、起き上がることもできない……か……」とセレスが呟く。「おっしゃる通りです」と司祭が頷く。「今はただ、魔力の回復を待つしかありません。アルウェンさんが回復できるように祈りましょう」


アルウェンは教会の奥にある安息の間に移され、そこで様子を見ることになった。安息の間とは、治療に時間がかかる場合などに使われる宿泊設備であり、その部屋のベッドにアルウェンは寝かされていた。


サイレント・シープの四人は、フロティア・ハウスに宿泊しながら、代わる代わるアルウェンの様子を見に来ては、彼女の回復を祈った。



~ 奇跡の回復 ~



三日目の朝、アルウェンが寝ている安息の間の窓が眩く光り輝いた。アルウェンは窓の外を見た。窓の外には、一人の美しい女性が優しく微笑んでいた。


「お母さん……?」アルウェンが呟く。


「起きなさいアルウェン……」女性がアルウェンに優しく話しかけると、アルウェンはもう一度この世に生まれ出たかのような、生気が体にみなぎるのを感じた。


アルウェンは、ゆっくりと目を開いた。そこには、心配そうにアルウェンの顔を覗いている、リリアンとセレスの姿が見えた。


「アルウェン!大丈夫なの!アルウェン!」とリリアンが目を見開き、アルウェンに呼びかける。


「あら、どうしたの?」とアルウェンが優しく微笑む。「どうしたの?じゃ、ないわよーもう」とリリアンが安堵の表情を浮かべる。「三日も寝てたんだからね……もう、目覚めないかと思ったよ。良かったー」とセレスもアルウェンの顔を見て安心した表情を見せた。


「ごめんね、心配かけちゃって。無理しすぎたみたいだわ」とアルウェンが微笑む。


「ううん、回復してくれて良かったわ」とリリアンが笑いかける。「本当よ。もう、あんまり無理しすぎないでね」とセレスも微笑む。


そのとき、ガチャっと安息の間の扉が開いた。カイルとゼオンが部屋の中に入ってきた。


「目を覚ましたのか!アルウェン!」とゼオンが嬉しそうな顔をして言う。「良かったー!一時はどうなることかと思ったよ」とカイルも喜んでいた。


「ありがとう。あなたたち……」とアルウェンも三日ぶりの再会を嬉しそうに微笑んだ。こうして安息の間で、再びサイレント・シープの五人が揃った。



~ フィンの実体 ~



そのとき、一人の男が部屋の中に入ってきた。「だれ?」とリリアンが尋ねる。


プラチナブロンドの髪に、淡い水色の瞳。清潔な黒いハイネックの制服。その姿を見て、リリアンの顔が驚きに変わっていく。


「え!?フィン?実物?」とリリアンが言う。「あははは。実際にお会いするのは初めてでしたね。アルウェンさんの様子を見に伺ったのですが、お元気そうで何よりです」とフィンが安堵の表情を見せる。


「あ、申し遅れました。実はサイレント・シープのみなさまをお呼びするべく、お迎えに上がりました」と言って、フィンは落ち着いて姿勢を正し、ゆっくりと頭を下げた。


「お迎え……?」とカイルが言うと、サイレント・シープの五人は、何のことかわからないとばかりに、お互いに顔を見合わせた。



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