Level 3 退路の遮断と強力な武器
~「切り裂きの剣」の行方 ~
ゴブリンの軍隊の指揮官が座っていた後ろには、小さな棚があり、そこに宝箱が置かれていた。
リリアンは宝箱を棚から机にドン!と置き、念入りに調べ始めた。「あれ?おっかしいわね?何もトラップがないのかしら?」いくら調べても罠が見つからない。
「じゃあ……”ディバイントラップ”をかけてみるね」とセレスがトラップを見つける呪文をコールする。しかし、トラップの反応はない。
「こんなこともあるのね」とリリアンは呟きながら、宝箱を開ける。すると、宝箱の中に鋭利な刃が美しくきらめく一振りの剣が入っていた。
「これは……」と思わずカイルがその剣を手に取る。
アルウェンが、その刃に少しだけ触れる。「Level 2 でこんなに魔力が強いものは珍しいわ……”切り裂きの剣”よ。良かったわね」とカイルに微笑む。
「いや、これはゼオンが持つべきだ」とカイルが言った。「え?なんで?」とゼオンがきょとんとする。
「強い武器は、より強い者が持つほうが活かせるはずだ」と言ってカイルはゼオンに渡そうとする。
しかし、ゼオンは受け取らない。「お前な……俺にはブレスがあるだろ?ブレスを吐くのと剣を振るのは同時にできない。でも、お前が持てば、ブレスと同時に使えるじゃないか」とゼオンが言う。
「まあ、ゼオンに一理あるわね」とセレスが頷く。「それに剣の扱いだけなら、俺よりカイルのほうがうまい」とゼオンが言った。
「そうなのか……わかった。じゃあ、使わせてもらうよ」と言ったカイルの顔は、嬉しさを隠せない様子だ。満足気に切り裂きの剣を腰に巻いた。
~ Level 3 へ ~
「じゃあ、いい?先に進むわよ?」リリアンが砲台の部屋から出た。あとの四人もリリアンに続いて部屋から出ていく。
先ほどレッド・ソーサーが入っていった通路をサイレント・シープの五人が歩いていく。やがて目の前にディメンション・シフトが現れた。
「やっぱりあったわね」とリリアンが言う。
フィンのホログラムが現れ、「やっと、Level 2 のクリアになりますね!おめでとうございます!」とフィンが言う。
「でもさ……こっちのDSになんで転送できないの?ここに転送できたら、どんどん先に進めるのに」とカイルが素朴な疑問を口にする。
「実は、入り口のDSと出口のDSは根本的に別の設計になっておりまして……難しいことは省きますが、入り口のDSと出口のDSが離れることによって精霊エネルギーが逆流しない仕組みになってるのです」とフィンが説明する。
「入り口のDSには、どこからでも転送できますが、出口のDSに転送する方法はありません。出口のDSは、例えばこのDSはLevel 3 の入り口にしか転送できません。一か所にしか転送できない設計になってます」とフィンが続ける。
「出口のDSはその場所に行かないと使えない……そういう設計になっております。よろしいでしょうか」とフィンが言う。
「わかった、わかった、もういいだろカイル?さ、先に進もうぜ」とゼオンが言う。
「では、DSの前にお集まりください」とフィンが言うと、サイレント・シープの五人がDSに近づく。
「それでは、Level 3 に転送します!」とフィンが言うと眩い光に包まれ、光が消えるとLevel 3 の迷宮が広がっていた。
サイレント・シープの五人は、天井を見上げていた。「天井あるね」とリリアンが言う。「そうだね」とセレスが頷く。
「ふふふ……」とアルウェンが微笑む。
サイレント・シープが、Level 3 に来ての第一声がこれだった。
~ シャッターによる退路の遮断 ~
「どうする?進むか?」ゼオンがみんなに尋ねた。
「そうね……回復呪文もほとんど使ってないし。街に戻るほどじゃないかもね」とセレスが答える。
「じゃ、行こうぜ!」カイルが元気よく迷宮の奥に向かって歩き始めた。そのあとに四人が続く。
しばらく通路を歩いていくと、突然、背後からゴゴゴ……という音が聴こえた。「なんだ?」とカイルが言い、サイレント・シープの五人が後ろを振り向くと、ドスン!と何かが落ちてきた。
「これは……壁ね」とリリアンが呟く。
「ちょっとどいてくれ」とゼオンが進み出る。そして、その壁をガンガン蹴りまくるが、全くびくともしない。
「ちょっと、フィン!」とリリアンがフィンを呼ぶ。
ホログラムのフィンが現れる。「これは何なの?」とリリアンが聞く。
「これは、シャッターですね……Level 2 のように空が見えてたら、よじ登って乗り越える事も可能だったかもしれませんが……ここは天井もふさがれているし、良く出来ていますね」とフィンが説明する。
「良く出来ていますね、じゃねえよ。退路が断たれたってことか?」ゼオンがイラッとする。「あちゃー、回復呪文があるとか言って進んできたのが裏目に出たようね」とセレスが言った。
「まあ、しょうがないわね。どのみち進まないといけないから」リリアンが気持ちを切り替える。「そうそう。先に進むしかないよ」とカイルがまた歩き始める。
「お前ら、ホントめげないのな。感心するよ」ゼオンが言うと、またサイレント・シープの五人がそろって歩き始める。
「それでは、ご健闘をお祈りしております」と言ってフィンが消える。
~ ユニコーンとの戦闘とトラップ解除 ~
通路で扉を見かけたが、先を見るために一旦通り過ぎる。先に進み、四方が壁の行き止まりを確認すると、また扉まで戻ってきた。「じゃあ、行くぞ」ゼオンが扉を蹴破る。
部屋の奥から二頭の角の生えた馬が突進してくる。「うわわ!」とカイルが慌てて剣を抜く。落ち着いて陣形を整えるような間もなさそうだ。
「ユニコーンが二頭よ」とアルウェンが言う。
ゼオンがブレスを吐く。ブレスに焼かれ、ユニコーンがよろめく。リリアンが放った矢が、もう一頭のユニコーンの首筋に突き刺さる。ユニコーンの勢いが止まる。
セレスがゼオンの体をすり抜けていき、焼かれたユニコーンの頭をメイスで殴る。ユニコーンは力なく崩れ落ちる。
カイルが素早く踏み込み、矢が刺さったユニコーンの胴体を切り裂く。ユニコーンはその一撃で倒された。
「ブレス一発じゃ死ななくなって来たな」とゼオンが言う。「モンスターが強くなってきてるね」とセレスが言う。
「そうなると、切り裂きの剣の強さが際立ってるわね」とリリアンが言う。「あったぞ!」と部屋の奥からカイルが叫ぶ。そこには宝箱が置かれていた。
「よし、じゃいっちょやりますか」と腕まくりをし、リリアンが宝箱の調査を始める。
しばらくして、リリアンは宝箱の一部のパネルのようなものを丁寧に取り外し、中にあった魔法陣のような模様が描かれた、詠唱石の円盤を、呪文が発動しないように慎重に取り外した。
「それは、なに?」とカイルが聞く。
「”プリーストブラスター”よ。僧侶など法力の呪文を扱えるものだけを、麻痺させたり石化させるの。パーティーのライフラインを一瞬で奪う凶悪なトラップね」とリリアンが説明し、その円盤を放り投げる。「くわばらくわばら」とセレスが身震いする。
~ 新しい武器 ~
「じゃ開けるわよ……」リリアンが宝箱を開ける。
中にはショートソードが一振りと、棒に着いた鎖の先にトゲの付いた鉄球が付いた武器。「これは”フレイル”ね」とアルウェンが言う。「やった!これ欲しかったの。私のでいいよね?」セレスがフレイルを取る。
そして、何やら精巧だけど頑丈そうな機械仕掛けの武器が入っている。アルウェンがそれを持ち引き金を引いて見せる。カチンと金属的な音が響く。
「”クロスボウ”ね。五連式で、この部分に五本まで矢をセットできるわ。引き金を引くだけで発射できるわよ」とアルウェンが指さしながら説明する。
「はい、どうぞ」と言ってアルウェンが微笑みながらクロスボウをリリアンに渡す。「え?いいの?」とリリアンが驚く。「私には重くて、上手く撃てないわ」とアルウェンが言う。
「それじゃ……」リリアンがクロスボウを受け取り、にやつきながら満足そうにしげしげと眺める。
「あと貴重な触媒が結構あるわね」とアルウェンが宝箱の中を覗き込む。それらを革袋に詰めながら、「これは俺が持ってくよ」とカイルが言う。そして、残ったショートソードをゼオンが拾う。
「それ、どうすんの?」とカイルが聞くと。「訓練場で習わなかったか?」ゼオンがにやりと笑い、ロングソードとショートソードを両方持ち、構えて見せる。
「サブウェポンか!」とカイルが言う。「二刀流だぜ。強そうだろ?」ゼオンがロングソードとショートソードを鞘に納める。
「かなり装備が充実したけど……問題はどうやって、ここから脱出するかね」とリリアンが言う。「とりあえず、奥のほうに扉があるわね」とセレスが指さす。
そしてサイレント・シープの五人はその扉から、部屋を出ていった。
~ レプラコーンとピクシー ~
うねうねと曲がる通路を歩いていく、サイレント・シープの五人。しばらくすると少し開けた広間に出た。扉が二つあり、一方の扉をゼオンが蹴破る。五人はすぐさま部屋に入り、戦闘の陣形を整え武器を構えたが、部屋の中には何の気配も感じられなかった。
「何だ……不発かよ。まあ、そうそう何かあるもんでもないか」ゼオンはよくわからない納得を呟き、五人は部屋の外に出た。
「じゃ、こっちの扉は……」ゼオンが前に出ようとするのを、アルウェンが制した。「ん?なんだ?」ゼオンが驚く。「私が開けたほうがいいこともあるのよ」とアルウェンが意味ありげに微笑む。
アルウェンが扉を静かに開けると、部屋の中で何かがうごめく影が見えた。カイルが剣に手をかける。しかし、アルウェンがその手を抑える。「一体なんなの?」とリリアンが聞く。
部屋の奥から小さな小人が三体と、羽の生えた妖精が二体あらわれた。「レプラコーンとピクシーよ」と言ってアルウェンが微笑む。
「友好的なモンスターよ。こちらが手を出さない限りは、何もしてこないわ」とアルウェンが微笑む。「へえ、そういうこともあるのね」とリリアンが言う。
「クピパポクププププピパペポコポ」とレプラコーンが声を出す。何を言っているのか、さっぱりわからない。しかし、アルウェンは微笑みながら、「うん、うん」と頷いている。
「え?え?なんて?」とセレスが思わず尋ねる。「三日前に、別のパーティーが、この部屋に来たそうね」とアルウェンが翻訳した。
そしてアルウェンが、ピクシーのささやきに耳を傾ける。「どこに行けばいいか聞かれたから、この部屋を出た先の分かれ道を、左に行けって教えてあげたらしいわ」と言ってアルウェンが微笑む。
「ホントかよ……」ゼオンは疑っている。「でも、他に情報が無いんだから、とりあえず行ってみようぜ」とカイルが部屋の奥の扉を開けた。そして、サイレント・シープの五人はその扉から部屋を出ていった。
~ アルカディア軍の尾行 ~
しばらく通路を歩いていると、言われた通り分かれ道があった。
そのとき、左のほうの扉が開き、中からアルカディア軍の部隊が歩いてくるのが見えた。
「しっ、隠れて」とリリアンが仲間に指示する。咄嗟に物影に身を隠す、サイレント・シープの五人。
よく見ると、部隊は死体袋を運んでいる。どうやら全滅したパーティーの回収のようだ。
「行くわよ。足音を立てないで……見つからないように」とリリアンが指示をする。
「え?ピクシーから聞いたのは左の扉だろ?そっちに行かないの?」とカイルが聞く。「バカ、静かにしろ。あいつらは街に戻るはずだ……あっちに付いていくのが確実だろ」とゼオンが言った。
こうして、サイレント・シープの五人は、アルカディア軍の部隊を静かに尾行することになった。
~ 密談と禁じられた召喚呪文 ~
アルカディア軍の部隊のあとを、足音を立てずに尾行していくサイレント・シープの五人。
しばらく通路を進んでいくと、アルカディア軍の部隊は少し広い広間に出た。三方向に扉がある。中央の扉から冒険者のパーティーらしき者たちが出てきた。冒険者のパーティーとアルカディア軍の部隊が、親しそうに話しているのが見える。
サイレント・シープの五人は、気づかれないようにそっと近づいていった。冒険者のパーティーを見ると、なんとあのレッド・ソーサーの六人だった。五人は、その会話に聞き耳を立てた。
「……そうか、お前らはストライカーだったな。冒険者にしては、見どころがある奴らだ」とアルカディア軍の隊長らしき男が言う。
「その件について、お聞きしたいことがあるのですが」とライオットが言った。
「スタンド・ワンと連絡が取りたいのですが」とライオットが聞く。「それは……軍の極秘任務だからな。我々にもその件については情報連携が無いんだ。すまないな」と隊長が答える。
「最近、対象がマジックロッド内で、禁じられた召喚呪文を使用しているようで……それで、冒険者のパーティーが被害を受けているようです」とライオットが報告する。
「ああ、それについては我々も聞いてるよ。だからこの通り、最近は忙しくなってる」と隊長が言う。
「まあ、お互い大変な任務だが、君たちは引き続き対象の捜索をよろしく頼むぞ。それじゃ」と隊長は軽く敬礼をし、アルカディア軍の部隊は右の扉に入っていった。
ライオットは、アルカディア軍の部隊に対して、姿勢を正し敬礼した。アルカディア軍の部隊が扉に入って行ったことを確認すると、「行くぞ」とライオットが言い、レッド・ソーサーの六人は、左の扉に入っていった。
~ 罠と流砂 ~
そして、サイレント・シープの五人が、そろりそろりと物陰から出てくる。「どうやら行ったようね……私たちも行くわよ」とリリアンが合図をする。「え?どっちの扉?」とカイルが言う。「右!」とゼオンとセレスの息が合った。「ふふふ……」とアルウェンが微笑む。
サイレント・シープの五人は右の扉に入って行った。
しかし、アルカディア軍の部隊は見当たらない。部屋の四方は壁になっていて、入ってきた扉以外の扉も見当たらない。
「何なのよ、もう!」リリアンが怒りながら、壁を探り始める。「どこに消えたんだ……?」ゼオンも、うろうろとあたりを見回す。
「何だろう?これ?」カイルが何かの装置のレバーを見つけ倒してみる。「うわ!バカ!さわるな!」ゼオンが叫ぶのもむなしく、部屋全体の床が開き、パーティー全員が下にある砂場に落とされた。
その直後に強烈な流砂が発生し、サイレント・シープの五人はなすすべもなく、ものすごいスピードで流されていく。「うわぁ!」「ひゃー!」「ひえー!」「きゃあ!」……もはや、誰の悲鳴かもわからない。
ズサー!ドン!ドサ!、「むぎゅう……」と下敷きになったカイルの呻き声が聞こえる。
サイレント・シープの五人は、どこか広い部屋まで流されてきた。よろよろと立ち上がった五人は、とりあえず陣形を組みながら、あたりを見回す。
~ ドラゴンライダーの出現 ~
「どこだろう?ここは……」とカイルが呟く。
部屋の奥のほうから、何かが羽ばたいてゆっくり近づいてくる。「ばさり……ばさり……」真紅の羽ばたくドラゴンにまたがる、銀色に輝く鎧と鉄仮面を装着した騎士が姿を現した。
「そんな……Level 3 に来るはずがないわ……」と珍しくアルウェンがうろたえた表情を見せる。
「何なの?」リリアンが聞く。「”ドラゴンライダー”よ。今の私たちじゃ、絶対に勝ち目はないわ」とアルウェンが答える。
「相手は一体だけだ……やってみなきゃわからないさ」とカイルは剣を構える。
サイレント・シープの五人は、陣形を固め臨戦態勢をとった。
~ 絶体絶命、そして「永劫の凍星」~
ゼオンがドラゴンにブレスを浴びせる。しかし、ドラゴンの硬いうろこに遮られ、全く効いていない。リリアンがクロスボウを乱れ撃つが、全ての矢が弾かれる。
ドラゴンが息を吸い込み、赤い喉元に赤い光が灯る。
「この際、もう仕方がないわね……」アルウェンがそう呟き、両手を振り上げる。あたりが暗くなり、空気が冷たくなっていく。「なんだ?なんだ?」カイルが異様な空気を感じた。
暗闇の中、アルウェンの両眼だけが眩く青白く光る。
「アイスウォール!」アルウェンのコールが異様に響き渡る。次の瞬間、絶対零度の氷の壁が、青白い光を帯びて突き出してきた。
ドラゴンの口から地獄のような業火が吐き出される。ゼオンのブレスとは比べ物にもならないその炎は、アルウェンのアイスウォールに阻まれる。
「やっぱり、万全ではないわね……」アルウェンの額から汗が流れ落ちる。アイスウォールが徐々に溶け始めていく。しかし、ドラゴンのブレスも次第に勢いを失っていく。
ガシャァン! ついにアイスウォールがひび割れて崩れてしまう。しかし、間一髪、ドラゴンのブレスも吐き切って止まっていた。
次の瞬間、ドラゴンの体が回転し、長いしっぽを打ち付けてきた。カイルとゼオンとリリアンの三人が、一気に吹っ飛ばされた。
~ レッド・ソーサーの介入 ~
「何やってんだ!お前ら!」と向こうから冒険者のパーティーがやってきた。レッド・ソーサーの六人だ。
地の奥底から響き渡るような角笛の音がする。「ウンダバルの角笛……」アルウェンが音のするほうを見ると、ミナが角笛を吹いている姿が見える。
銀色の騎士が頭を抱え苦しんでいる。ドラゴンが羽ばたくのをやめて下に降りてきた。
胸当てと槍を装備したレッド・ソーサーの女性が、物凄い勢いで飛び出し、槍で銀色の騎士の胴体を貫く。
ライオットが右側面から近づいて飛び上がり、銀色の騎士の胸のあたりを切り裂く。黒装束の男がドラゴンの頭を踏み台にして、銀色の騎士に接近する。凄まじい速度で手刀を振り抜くと、銀色の騎士の首が跳ね飛んだ。
ドラゴンライダーは騎士の部分が本体だ。彼らはその事を知っていた。
~ 過去の因縁 ~
部屋の奥のほうから、カイルとゼオンとリリアンが、ふらふらと立ち上がってきた。「お前ら!こんなところで何をやってたんだ!」とライオットが怒鳴る。
「待って……私たちは、ただ街に戻りたかっただけなの」とアルウェンが説明する。「ふん!じゃ、向こうから行けるから、さっさと戻れ」と言って、ライオットは扉を指さした。
「さすがね。さっきの氷の壁……”ハイエイシェント”ね。限られた者しか使えない古代の精霊術……」とミナが話しかけてきた。
「私たちだって、あのブレスをまともに食らってたら全滅してたわ」とミナが言ったとき、「ミナ!」と言うライオットの声がした。「少しだけ待って!」とミナが言う。
「さっきの角笛……リックルの……あなた娘?」とアルウェンが言うと、「ちげーわ!孫だわ!てめー何歳だと思ってんだババア!」とミナが激高する。
「ひどいわね……まあ、いいわ。あなたミナ・ブランケット?」とアルウェンが聞く。
「その通りよ。おじいちゃんは数年前に死んだわ。あなたが初恋のひとだったって。だから色んな話を聞かされてたの」とミナが言う。
「そんなこと……いま聞かされても……生きてるうちに本人の口から聞きたかったわ」とアルウェンが残念そうな顔をする。
「知らねえわ。もういいわ。ライオットいきましょ」とミナが言うと、レッド・ソーサーの六人は左の奥の扉から出ていった。
「何の話をしてたの?」とカイルがアルウェンに聞く。「ううん、ただの昔話よ」とアルウェンが微笑む。「それにしても……あなたたち……大丈夫?」とアルウェンが心配する。
「強烈な一撃だったけど、まあ、なんとか」とカイルが言う。「すげえ奴だったな。どうやって倒したんだ?」とゼオンが言う。「とりあえず、みんな何ともなくて良かったわ」とリリアンが言う。
「これから、どうしよっか?」とセレスが言う。そしてサイレント・シープの五人は、部屋の中央で、お互いに顔を見合わせた。
~ 戦略的な賭け ~
「ライオットはあそこの扉を指さしてたよな?」とカイルが確認する。「そうね。あの扉ね」とセレスが言う。
「じゃ、行こうぜ」と言ってカイルが歩き出す。
「ちょっと待って!」とリリアンが言う。「なんだ?どうしたの?」とカイルが振り返る。
「ちょっと考えさせて」とリリアンが考え込む。「どうしたんだ?」とカイルがゼオンを見る。「さあ、わからん」とゼオンが言う。
「もしかして、あっちに行くか迷ってるの?」とセレスが左の奥のほうの扉を指す。「ははーん、そういうことか……」とゼオンが頷く。
「どういう事だよ?」とカイルがさっぱりわからないという顔をする。「あれだよ。Level 2 の時もあいつらが向かった先に Level 3 の DS があっただろ?」とゼオンが言う。
「ああ……そういうことか」カイルがようやく理解する。「このまま一気に Level 4 に行けたらラッキーじゃない?」とリリアンが言う。
「まあ、そうね。それに考えてみれば、ライオットが指さしてた扉も、街に戻れるかどうか確かではないわけだし……どうせリスクを取るなら、よりリターンが高いほうに賭けるのもアリかもね」とセレスが言う。
「じゃあ、あっちに行ってみるか」と言って、カイルが左の奥のほうの扉を指さした。
「あなたたちは、どうする?」とリリアンが聞く。「じゃ、カイルにのるか」とゼオンが言う。「そうね」とセレスが頷く。「何だよ、俺のせいになるのかよ……ま、いいか」とカイルが言う。
「じゃ、決まったわね。行くわよ」とリリアンが左の奥の扉に向かって歩き始める。「ふふふ……」とアルウェンが微笑む。
そして、サイレント・シープの五人は、左の奥の扉から部屋を出て、長い通路を通り、その先の扉までたどり着いた。
~ Level 4 への高速クリア ~
「とはいえ……何が出るかわからないから、心の準備はいい?」とリリアンが、扉の前でみんなに確認する。四人は無言で頷く。「それじゃ、行くぜ」と言ってゼオンが扉を蹴破る。
そこには、思った通り Level 4 に続くディメンション・シフトがあった。「やっぱりね」リリアンはしたり顔を見せる。
「よっしゃあ、いい展開だ!フィン!」とゼオンが嬉しそうにフィンを呼ぶ。ホログラムのフィンが現れる。
「あれ?みなさん、どうしたんですか?ものすごい早さで Level 3 のクリアになっちゃいますけど?素晴らしいですね!」とフィンが驚きの声を上げる。
「色々あったけど、終わりよければ全て良しだ!」とゼオンが言うと、カイルも喜びの笑顔を見せる。
「じゃあ、みんな DS に近づいて」とリリアンが呼びかけると。いつものように、みんなが DS に近づいてくる。「では、行きますよ……」とフィンが言うとサイレント・シープの五人は、眩い光に包まれた。
光が消えると五人は Level 4 の迷宮の入り口に立っていた。しかし、すぐに入り口の DS から街に戻ったのは、言うまでもない。




