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9 紫乃の夢の中:精霊との対話(場面:白い空間)
意識を失った紫乃は、真っ白な空間に立っていた。
上下も、時間も存在しない場所。
ただ、かすかなぬくもりと、何かの“気配”がそこにあった。
「君は──どうして、そこまでして“視よう”とするの?」
振り返ると、そこには少年の姿をした精霊が立っていた。
髪は淡く揺れる光でできており、目には深い悲しみが宿っている。
「あなたは……さっきの、精霊……?」
精霊は小さく頷く。
「そう。僕たちは“怒り”の連なりだった。誰にも理解されなかった想い。ぶつけることも、癒されることもなく、重なり合って──壊れそうだった」
紫乃は胸に手を当て、小さく頷く。
「……あなたの気持ち、全部はわからないかもしれない。でも……わかりたいって、そう思った。先輩も、きっと……同じだったはずだよ」
精霊はしばらく黙ったあと、ふっと微笑む。
「共鳴、って不思議だね。君の心に触れたとき、少しだけ“怒り”が溶けた。……ありがとう、紫乃」
「……!」
「目を覚まして。君の“大切な人”が、君のために戦ってる」
白い空間が、優しく光に包まれる。