5 共闘中(精霊暴走/対話フェーズ)
闇に包まれた古びた廃屋。空気は張り詰め、どこか冷たく重たい。
その中心から、怒りの精霊の気配が激しくうねりをあげている。
「どうせ……誰も俺をわかってくれない……!」
その声は荒れ狂う嵐のように、心の奥底の孤独と憤りを吐き出していた。
紫乃は震える手で精霊のコアを見つめる。
そこには激しく揺れる赤黒い炎のような光が宿っている。
「怒ってる……寂しさが積もって、壊れそう……!」
彼女の瞳には、精霊の感情が痛いほど映り込んでいた。
体力の限界を感じつつも、その“視える”力に集中し、必死にコアの動きを追う。
朱音は霊衣を身にまとい、静かに一歩ずつ精霊に近づく。
彼の表情は厳しくも決然としていた。
「なら、教えてやるよ。共鳴するってことが、どういうことか──」
その言葉に紫乃は鼓動が高鳴るのを感じ、思わず叫ぶように告げる。
「そこです! コアが揺れてる……いまなら、浄化できる!」
朱音はすかさず霊具を構え、声を張り上げて詠唱を始める。
「紡げ、想いの糸──!」
彼の周囲に青白い紐のような光がゆらめきながら渦を巻き、まるで意志を持つかのように精霊のコアへと絡みついていく。
荒々しく揺らぐその光は、怒りの波動を放ち、周囲の空気を震わせていた。しかし、その激しい輝きは次第に穏やかになり、まるで過去の痛みを涙として流すかのように透明な光へと変わる。
穏やかに揺らめきながら、その光はゆっくりと消え、静寂だけが残された。その瞬間、部屋に静寂が訪れた。
紫乃は息を大きく吸い込みながら、肩で息をしている朱音を見つめる。
「すごい……先輩、かっこいい……」
彼に聞こえないくらいの小さな声で呟くが、朱音は汗を拭いながら、少しだけ微笑んで答えた。
「お前の“目”がなかったら、俺だって危なかった。よくやったよ、バディ」
二人の絆は、静かに、しかし確実に深まっていった。