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3 野営地・夜の焚き火そば
朱音は手際よく薬草茶を淹れ、小さな湯のみを紫乃に差し出した。
淡い湯気がゆらゆらと揺れ、部屋の静けさを和らげている。
「ほら。緊張してるだろ。これ、俺の特製。眠りやすくなるから」
紫乃は一瞬驚いた表情を見せ、ゆっくりと湯のみを受け取る。
「……優しいんですね、意外と」
その言葉に朱音はいたずらっぽく目を細め、にやりと笑みを浮かべた。
「そう?お前だけ特別にしてるかもよ」
紫乃は思わずむっとして顔をそむける。
「……からかわないでください」
朱音はそれを楽しむかのように、にやにやと顔を崩しながら言った。
「照れてんの?可愛いじゃん」
紫乃の頬がわずかに赤く染まり、目を逸らす。
彼女の内心は、意地を張りつつも心がじんわり温かくなるのを感じていた。
朱音はそんな紫乃の反応を見逃さず、さらに距離を詰めるように目を輝かせる。
「さあ、まずはリラックスしろ。明日はもっと大変だからな」
ふたりの間に流れる空気は、言葉以上に意味深くて温かかった。