スズメと俺
しばらく見つめあったが、状況は変わらない。
目の前には来たときよりボロボロの神殿、固く閉ざされた扉、そして落胆している鳥。
もう何かをする気力もでないので、トボトボと来た道を戻る。スズメも弱々しくどこかへ飛び去っていった。
「はぁ……どうしよう……もうどうしようもないよな……」
ーーー行きに無視した宝箱だ。こんなところ、誰も来ないからずっと放置されているのだろう。もういっそのこと、この宝箱に入ってミミックとして余生を暮らすのが良いかもしれない。そんな馬鹿なことを考えながらなんとなく開けてみると、中には地図が入っていた。
目に飛び込んでくる「神殿(3LDK)」の文字。何かしらの契約書。そこに書かれた、引越し届、という大きな字。期待を込めて良く読むと、どうやら神殿の主は別の所に引っ越していたようだ。なんということだろう、書類には、隣の大陸の神殿が現住所だと記されている。
そうか、そうだったのか!あの神殿には元から鳥の精霊はいなかったのか!もう既に引っ越してて、他の神かなんかが使っていたんだ!
一気に活力が湧いてくる。これは行くしかない、本当の鳥の精霊が住む神殿へと。
意気揚々と走り、コウモリもどきとハイタッチしながら丘をかけていく。そして目の前にあった茂みを飛び越えると、
そこにはドラゴンと、スズメがいた。
「チュンチチ!チュンチチ!!」
スズメは泣きそうになりながら必死に札を投げつけているが、今にも焼き鳥になりそうだ。
「グオオーーーーー!!!」
ドラゴンが火をふく。
「!!!チュチュ!?」
「危ない!」
咄嗟にもっていた短剣をドラゴンに投げつける。
カキン!といい音がした。ドラゴンがこちらを睨み付ける。
「あ……」
まずい。もう武器もない。
「ああ……」
「チュン!チュンチチ!!」
!!スズメの声が現実に呼び戻す
そうだ。こいつは俺の大好きな鳥の敵なんだ。そう思うと、恐れが憎しみへと変わる。
ーーー倒さなければ。
伝家の宝刀、シームルグの羽!
我が家に伝わる伝説の道具。当たればどんな生き物も確殺だ。外す訳にはいかない。良く狙って投げなければ。
ドラゴンもこちらの様子を伺っている。隙がない。もし避けられたらおしまいだ。
ーーー「チュンチチ!!!」
ドラゴンに光の雨が降り注ぐ!
その瞬間、ドラゴンが目を閉じた!今だ!
思い切り羽を投げつける!!
羽は炎を纏い、加速しながらドラゴンに刺さり、大きな爆発が起きる!!
ーーードパーン!!!!
……なんとか勝てたようだ。
……「ハハハハハ!!!」「チチチチチ!!!」
小躍りでもしたい気分だ。