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君の姿と、この掌の刃  作者: 日諸 畔
エピソード3「共に来い」
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「共に来い」part.10

 銃弾が飛来した方向と角度から、狙撃手は治安維持局近くの上層階にいると想定できる。恐らくは探知の機能があるオーヴァーを使っている。見晴らしがいいとは言え、まともに狙撃できる距離ではない。


「動くぞ。ホトミ、肩」

「ううん、大丈夫」


 カムイで探知されているのであれば、隠れていても関係なく発見されるだろう。しかも、あの威力だ。止まっていては建物ごと撃ち抜かれるだろう。


『リザ、頼む』

『おまかせー』


 仮説を確認するため、探知をかける。治安維持局自体は損壊が激しく配置は不可能だ。その隣の建物は、今にも崩れそうになっている。ここも違う。

 付近で適した場所はないか。


「そこか」


 治安維持局から三軒離れたところにある無傷の建物だ。それは屋上に設置され、タケキ達を狙っている。砲と呼んでも過言でない程の大型狙撃銃が二挺。

 狙撃銃の傍らには四人の姿を確認した。観測手と狙撃手が二人一組になっている基本的な編成だ。観測手と見られる人物は双眼鏡のような物を手にしている。それが探知用のオーヴァーなのだろう。そうであれば、タケキ達がカムイ行使したことを探知できても不思議ではない。


 相手の位置はわかったが、圧倒的に不利な状況は変わらない。ならば、出し惜しみはしていられない。気休め程度の移動をしながら、リザの力を使うことを前提に対応を思案する。


「リザ」

「はいなー」


 カムイでの対話ではなく、声に出してリザを呼ぶ。リザもすぐさまタケキに同調し、音での発声をした。


「え? 女の子?」

「後で話す」


 突然の声にリョウビが驚くが、構ってはいられない。タケキとほぼ同じ長身に向かい、問いかける。


「あれは連射できるのか?」

「いや、一発ごとに装弾が必要ですよ」


 その返答で対策が固まった。ホトミが賛成するかは疑問だが、無理を通すしかない。


「わかった、あんたはここに居てくれ」


 リョウビを置いたタケキ達三人は、来た道を戻りつつ簡単に打ち合わせる。長話をしている時間はない。


「ホトミ、リザのカムイは使えるな?」

「たぶん。リザちゃん、頼める?」

「まっかせてー、ホトミ姉さん」


 途中、案の定ホトミの反発があったが、他に手がないという理由で押し通した。

 その代わりに、必ずまた三人で食事をすると、重い約束が課せられてしまった。


 狙撃された大通りに戻る。タケキ達の乗っていた車両は黒煙を上げ、運転手の骸は炎に包まれていた。


「さぁ、やろうか」


 狙撃手の方向に正対し、遥か先の銃口に向け手招きをする。タケキにしては露骨すぎる挑発だ。続けたままの探知で把握する限りは、四人の兵士はそれを意に介していない様子だ。冷静に観測手が狙撃手へ指示を出している。

 タケキの背後ではホトミがリザのカムイを行使し、盾を形成している。繊細な作業には、多少の時間が必要だ。これを見られてはいけない。


「来るぞ」


 狙撃手の意思が高まるのをカムイ越しに感じる。間もなく引き金が引かれるだろう。


「できたよ」


 タケキの目の前に、ホトミの盾が展開される。通常よりも薄い盾が、少しの隙間を空けて十六枚。リザの膨大なカムイと、ホトミの技術が合わさったからこそできる芸当だ。

 相手からは盾が一枚あるだけに見えるだろう。これで油断してもらえるとは思わないが、防ぐのが精一杯と認識させることは可能だろう。



「大丈夫だよ」


 背中越しにホトミの声が聞こえる。


 引き金が引かれた。

 それを感じてから五秒と経たず、銃弾が二発タケキの元へ到来する。通常では考えられない速度と精度。中佐が自慢したくなるのも理解できる。


 銃弾は盾を突き破りながら直進する。盾と盾の隙間で徐々に威力を落とし、九枚目を貫いたところで停止した。

 盾を層にするのは、リザの力を直接使えず、カムイを借りることしかできないホトミの策だ。


「行ってくる」


 タケキはホトミに向かって右手を上げた。次弾を装填する時間を与えてはいけない。


「行ってらっしゃい」


 ホトミは微笑んだ。


「リザ、いいな?」

「うん」


 リザは力強く頷いた。

 タケキとリザは狙撃手に向かい、飛翔した。

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