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君の姿と、この掌の刃  作者: 日諸 畔
エピソード1 「私を探して」
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「私を探して」part.14

「あ、ごめん。つい気になっちゃって。本題を続けよ」


 タケキの唖然とした表情を見て、ホトミは慌てて言葉を取り繕った。

気になったのは本当だが、優先順位を間違えた。ホトミは危機を脱して気が緩んでいることを自覚した。


「ごめんタケ君。反省します」


 タケキに聞こえないよう、口の中だけで呟いた。


「リザ・バーストンさん。話の続きをしたいところなんだが、俺達はここから出ていくつもりなんだ。君はどうする?ここから動けるかい?」

『リザって呼んでよ。まぁいいけど。私はサガミさんに着いていくよ。せっかく見える人を見つけたんだから、離しまーせん』


 タケキはホトミにも聞こえるよう、あえて声に出して問いかけた。リザはタケキからの呼び名が気に入らず頬を膨らますが、すぐに気を取り直し答える。


『私ね、私が見える人を探してたの。それで、私を探してもらおうと思ってね。あっ、私ね、今カムイでしょ?でね、別に体があってね、それを探してもらいたいの。でも私に気付いてくれる人がいなくて困ってたんだよ。頑張って呼んでるのに全然。酷いと思わない?サガミさんが来てくれてホント良かったよ』

「別に体って、今の君は何なんだ?」


 説明に理解が追い付かないタケキは、リザの言葉を遮る。もう少し整理して説明してくれないものだろうか。


「タケ君、リザちゃんは何て?」


 困惑するタケキを見てホトミが声をかける。ホトミにはリザの声を感じられないため、タケキからの伝言でしか会話を把握できない。


「彼女は体が別のところにあるらしい。で、その体を探してほしいって言ってる」

「そっか……他には?」

「これからみたいだ」

「伝言、大変だね」

「かなりな」

「暫く黙ってるね。困ったりキリがついたら教えて」


 ホトミはタケキの返答から心情を察する。二人の交わす言葉はいつも多くない。当のリザは続きを話したそうに二人を見ていた。


『もう話してもいい?サガミさんにわかってもらえて私嬉しいよ。そこのお姉さん、えっと、ホトミさんだっけ?年上なのに凄く可愛いよね。目なんかもう、くりんくりんで』

「頼む、本題に戻ってくれ。君はなぜ今の、カムイの状態なんだ?別に体があるって、どういう意味なんだ?」


 細かく会話の軌道修正をしなければ本題が進まない。タケキはリザの性格を少し理解した。


『うんうん、話す話す。最初からね。えっとね、私は元々普通に生活してたんだけど軍の人に連れていかれてね。家族とも離されて。あれは辛かったなー』


 遠い目をして語るリザ。それの体験はタケキ達の過去と似ていた。もう忘れてしまったはずなのに、胸がちくりと痛む。


『それで、いろいろされてね。ほらここ。痕があるでしょ?女の顔にだよ。これは特に酷くない?』


 リザが額にかかった前髪を持ち上げた。そこには、タケキ達を襲った男にあったものと似た手術痕があった。


『そしたらね、カムイのことが少しわかるようになって、人の心も少し読めるようになったの。あの人達、私で悪い事するつもりだったんだよ。詳しくはわからなかったけど。』


 全身で怒りを表しながらとりとめのない説明をするリザ。その雰囲気に飲まれたのか、タケキは自覚なく微笑を浮かべていた。ホトミは見て見ぬ振りをした。


『それでね、私考えたんだよ。これは死ぬしかないなって』

「えっ……」


 リザはこれまでと同じように軽い口調で続ける。決心の後、カムイで軍の施設を破壊し脱走したリザは自分を殺せる相手を探し回ったそうだ。

無意識に防御してしまうため、モウヤ軍の兵器では彼女を傷つけることさえできなかったらしい。


『だからね、考えたんだ。カムイで防いじゃうんだから、カムイで殺してくれる人がいるんじゃないかなって。カムイの国ならって思って行ってみたんだ』


 さも簡単な事のようにリザは言う。彼女にとっては、空を翔ぶことも、高速で移動することも容易いことのようだ。

国境を越えたリザは、カムイが多く貯蔵した基地を見つける。そして、彼女は発見されるためにわざと塀に穴を開け侵入したと言った。タケキは息を飲んだ。タケキの中に疑惑が生まれる。


『それで、見つけたの。私を殺してくれそうな人』

「待ってくれ。それは、いつの話だ?」


 タケキは必死に声を絞り出した。ホトミが心配そうに覗き込むが、それに気付く余裕はなかった。


『うーん、時間の感覚が怪しくてね、あんまりわからないけど、何年か前だと思うよ。それでね、その人、私の頼みを聞いてくれたんだ。こう、お腹をスパッとやって』


 タケキの中で疑惑が膨らむ。


「そいつは、何歳くらいだった?」

『たぶん私と同じくらい。ちょっと好みのタイプだったよ。あはは』


 疑惑が確信に変わる。


「その時、雨が降っていなかったか?」

『よくわかるねサガミさん』


 確信が補強される。


「君を殺したのは、俺だ」

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