表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

6話(欺瞞 ~トレース~)

   6話(欺瞞 ~トレース~)



           1

 天上世界/天空要塞都市


 ガイアルの捜索が難航している……。


 「まだ、見つからないの⁉」

 「はい、全捜査員を、各地にね、派遣しているのですが、目撃情報についてはね、皆無だそうでございます」

 「し、しかし……隠密【おんみつ】の天才とは、予測していたが……潜伏できる場所がないと、その効力も半減するはず……一体全体、どのような戦法で、我々をね、欺【あざむ】いている……。すごく奇妙だ!」

 「クラン隊長⁉」

 「うんっ⁉」

 「少しお時間をいただいてもよろしいでしょうか⁉」

 「うん、構わない。申してみなさい」

 「は、はい……実は、ですね? 先ほど、城下町の検問に当たっていた捜査員によると、何やら、地上に向けて、ダイブをする、謎の物体の目撃情報がね、多数に渡って、報告されていまして……」

 「な、なあに⁉」

 「か、可能性として、いかがでしょうか⁉」

 「バ、バカ! そんなこと、ありえる訳ないだろ⁉」

 「し、しかし……ですね? 難航している状況ですし、様々な視点がね、必要ではないでしょうか?」

 「もちろん、可能性はね、否定できないよ。しかし、すごく現実的に考えるとね、やっぱり、ありえないでしょ」

 「……そうですよね?」

 「…………。高さを鑑【かんが】みても、とてもダイブできる環境じゃない! だからといって、死ぬような、リスクを取るとも思えない!」


 ……すると!

 「も、申し上げます! 新情報でございます。謎の物体についてなのですが、どうやら、住民の一名がね、目撃していたとのことです。伺【うかが】ってみたところ、人影の可能性が、すごく高いことが分かりました!」

 「何だと⁉」

 「クラン隊長⁉ いかがなさいますか⁉」

 「……言うまでもない。大至急、地上世界にね、捜査員を派遣しな!」

 「は、はい、承知いたしました。そ、それでですね、隊長……⁉」

 「うん、何⁉ まだ、何かね、あるの?」

 「は、はい……どちらの大陸にね、なさいますか?」

 「……(怒)。ああ、どちらの大陸でもいい⁉ 徹底的にね、捜索しな!」

 「しょ、承知いたしました!」

 捜査員、至急、準備に取り掛かる……。

 ……。

 「し、しかし……あの小僧……完全にね、狂ったのかな? まさか、時間の流れに逆行をするとはね……。それがね、分からない年齢でもないはずだ。地上世界に干渉をするのは、禁忌を犯すということだ。決して、あってはならないことだ! ……一体、何を考えている⁉」



           2

 (ガイアルの回想)

 ⦅これは、僕のすごく遠い記憶だ……。そして、すごく儚【はかな】い記憶でもある……。僕とナギサは、スキを見て、故郷である街を脱出した……。そして、僕たちは、ある街で、身柄を拘束された……。すごくおかしな話である……。でも、今になると、すごく納得のいく話でもある……。当時、そのことが、理解できていれば……。一人の大人は言った……仕事をサポートしてくれるのなら、リールと僕たちの安全はね、保証すると……。僕は、妹のために、死に物狂いで働いた……すごく小さな身体を働かせて……。一日でも早く、この生活から、解放されたい……その一心だけをもって……。しかし、現実は、すごく残酷だった……。僕自身、便利屋でしかなかった……。僕の体力は、限界を迎えていた……。そして、妹のナギサは、さらに深刻だった……。ここから、先はね、話したくはない……。…………。誰も、助けてくれなかった……。恩を仇で返した……。この時、僕は、悟った……。人という生き物は、相手を見て選ぶ生き物だとね。《弱さ》を品定めしている……。常に、《強さ》というものを前提にね、据【す】えなければならない……。《弱さ》というものはね、全て排除する……。僕は、心に刻み……これから、生きていくことだろう……⦆

                                (ガイアルの回想)



           3

 ガイアルが、メルサの街を後にした、その翌朝……。

 ホット傾向が強まる……。

 エルバー州/機械都市メルサ[ミュウ/レナード/ラックロ]

 「どうやら、ミュウさんのおっしゃっている通り、俺にはね、すごく不穏な香りが漂っていますね」

 「あら、すごくお察しがよろしいじゃない?」

 「まあ、俺たちも、ミュウさんに、すごく鍛【きた】えられていますからね」

 「はい、確かに、おっしゃる通りだと、僕もね、思います」

 「そうね。すごく優秀な部下に囲まれて、私【わたし】はね、すごく幸せ者だわ」

 「や、やめてくださいよ! すごく照れるじゃないですか⁉」

 「あら、褒めているのよ。そこはね、素直に受け取りなさい」

 「は、はい、そうですね」

 「レナードさんは、ホント、素直じゃないよね」

 「……(照)」

 「さあ、それでは、調査をね、開始するわよ」

 「「はいっ!」」

 「ああ、そうだわ。一応、伝えておくわね。二人共、日射病にはね、注意なさい」

 「はい、了解です!」

 「承知しました」

 「それでは、捜査開始よ」


 ミュウ達、三手に分かれて、街の様子を捜索およびメルサ支部所属の冒険者から、情報を集めることに……。



           4

 レナード……。

 「へえぇー……四人パーティーを組んで仕掛けたんですね?」

 「はい、全くダメでしたけどね」

 「しかし、すごく現実的な戦法でしょ?」

 「…………(困)」

 「えっと……どうかなさいましたか?」

 「ああっ⁉ いえ、すごく些細なことですので、お気になさらないでください」

 「聞かせてください! こちらも、すごく情報を欲【ほっ】しているので!」

 「あっ、はぁい……それでしたら……。あのね、私ね、記憶喪失にでもね、なってしまったのでしょうか?」

 「ええっ⁉ すごく大変じゃないですか⁉ 大丈夫なんですか⁉」

 「はい、お気遣い感謝いたします。あのね、私の気のせいでしたら、よろしいのですが、お話をした相手のことをね、思い出せないんです」

 「ええっ⁉ ホントですか⁉」

 「はい、お話をしたのはね、すごく鮮明に覚えているのですけど、相手のことだけはね……白い靄【もや】の中を彷徨【さまよ】っているような感覚なんです」

 「そ、そうですか……。あの、お話をした内容についてはね、いかがですか?」

 「えっ⁉」

 「覚えていらっしゃいますか?」

 「はい、すごく不思議なことに、すごくクリアに……だからこそ、すごくおっかないんです!」

 (ある人物に関することだけ思い出せない……。すごくクレイジーだね)

「あの、お話をした内容について、覚えている限りでね、構わないので、お聞かせ願えますか?」

 「はい、ご参考になるのでしたら、喜んでね、お話いたします」


 レナードに、事情を説明中……。

 ……そして。


 「はい、口元……ね。どうやら、あなたの意見がね、手掛かりになった可能性はね、すごく高そうですね」

 「ホ、ホントですか⁉」

 「実際に目撃をした訳じゃないので、あまり、説得力はね、ありませんが、すごくポイントを掴【つか】んでいると、少なくとも、俺はね、思います。機転が利く人には、すごく心強いシグナルだったと思います」

 「そ、その相手というのはね、やっぱり……」

 「すごく高いと思いますね」


 ラックロ……。

 武器屋&鍛冶屋。

 「なるほど、そのような提供をなさったのですね」

 「うん、悉【ことごと】く、討伐に向かった、冒険者がね、返り討ちにあったんだ」

 「それで、その後の展開はね、いかがだったのですか?」

 「ああ、使用した武具はね、返品されているよ。加えて、リールもね、支払われているよ」

 「うんっ⁉ 何だか、すごく距離を感じる物言【ものい】いですね」

 「うん、そのことについて、すごく引っ掛かってるんだよ」

 「……というと⁉」

 「思い出せないんだよ! 使用者の名前がね……」

 「それはね、すごく穏やかじゃないですね」

(すごくおかしい……。店主という職業柄、お客様の特徴を覚えていないのは、すごく不自然だね。うーん……ミュウさんとレナードさんの意見をね、照らし合わせてみないと……)

 「どうしよう……⁉ お客様の名前を覚えていないなんて、商売人として、すごく不覚だ」

 「いえ、店主さんだけではね、ございませんよ」

 「ええ……」

 「道具屋の店主さんも、同じようなことをね、おっしゃっていましたから」

 「ホントですか⁉」

 「はい、おそらく、偶然なのではなく、必然なのでしょう」

 「そ、そうなんですね……ふぅー……」

 と、どこか、安堵【あんど】をした様子が窺【うかが】える……。

 (うん、人という生き物の特徴が、すごく如実【にょじつ】に現れてるよね。自分だけだと、すごく不安が否【いな】めないけど、他の方がね、同様の現象に困っていると、すごく安堵【あんど】しちゃうものなんだよね。まあ、これはね、自然の摂理だから、問い質【ただ】さないでおくとしよう)


 (レナードとラックロの回想)

 遺跡メンテナンス時……。

 「えっ⁉ テントですか⁉」

 「ええ、おそらく、こちらでね、一晩を過ごしたのね」

 「まあ、当時はね、コールド傾向ということもあって、すごく遭難のおそれもあったと思いますし、すごく賢明な判断なのではないでしょうか?」

 「……そうね」

 「ラックロさん⁉ 論点はね、そこじゃないでしょ⁉」

 「うん、そうだったね」

 「…………(考)」

 「ミュウさん⁉ どうかしましたか?」

 「はい、先ほどから、すごく考え込んでいると、お見受けしますが……」

 「テントがね、二張り使用された形跡がね、あるわ」

 「う、うん……それほど、奇妙なことではないと思いますが……」

 「……そうね。見た目はね。でもね、よくご覧なさい。凹【へこ】みがね、四つあるのよ」

 「「⁉」」

 「無論、すごく幽【かす】かなのだけれどね」

 「つまり、四人滞在していた……そのように、おっしゃりたい訳ですね」

 「ええ、その可能性が、すごく濃厚でしょうね」

 「しかし、俺たちがね、想定していたのは、すごく厄介な相手だと思っていましたが、そこまで、考える必要はないみたいですね」

 「いえ、それはね、違うわよ」

 「ええ、どうしてですか⁉」

 「あのね、たとえ、情報力に長【た】けていても、見落とすことはね、充分にね、ありえることよ。特に、今回のような、すごく不確定要素が加わるとね」

 「不確定要素……ですか?」

 「ひょっとして、コールド傾向のことですか⁉」

 「うふふっ、ご名答。おそらく、長居をする訳にはね、いかなかったでしょうから、最低限の処理だけをして、紛れたのでしょうね」

 「うーん……すごく間抜けだと、言いたいところですが……強【あなが】ち、当てはまりませんね」

 「完璧な隠蔽【いんぺい】をね、阻害する……すごく結果論だけれど、私【わたし】たちの行動がね、察知された結果よ」

 「何というか……すごく皮肉ですね」

 「複数の情報を察知した結果……片方の選択を迫られた心境……果たして、当人の心中はね、いかがなのかしらね」

 「はあぁー……俺には、すごく無縁な世界ですね」

 「は、はぁい……すごく究極の選択を迫られたんですね」

                           (レナードとラックロの回想)



           5

 ミュウ……。

 冒険者ギルド・メルサ支部

 「ええ、要請者はね、二人なの⁉」

 「はい、そうですね。当ギルトに所属していた、ダクフ・エリートとネムル・サンクスです」

 「していた……⁉ どうして、過去形なのかしら?」

 「はい、実は、ですね。二人はね、お亡くなりになりました」

 「……⁉ 何ですって⁉ それはね、やっぱり、魔獣の討伐がね、要因なのかしら?」

 「いえ、違います。その後のダンジョン探索の際……帰還することなく、お亡くなりにね、なりました」

 「あら、そうでしたのね。ご冥福をお祈りいたしますわ」

 「いえ、彼らもね、冒険者ですから、致し方ないことだと思っていますよ」

 「いいえ、それでも、すごく悲しいわ」

 「はい、財宝と引き換えになってしまったようなものですから、なおさら、すごく無念ですね」

 「あら、財宝がね、おありでしたの?」

 「ええ、彼らのおかげで、メルサの街の予算がね、すごく潤沢になりました。すごく小さな町ですから、お世辞にも、財政が良いともいえないです。したがって、彼らの功績はね、今後も、語り継がれていくことでしょう」

 「ねぇ、どうして、平然とね、していられるのかしら?」

 「ええ、私……お気に障【さわ】るようなこと、申し上げましたか⁉」

 「いえ、私【わたし】が、申し上げたいのはね、そのようなことではなくて……。えっとね、単刀直入にね、申し上げるわ。どうして、財宝がね、こちらに届いているのよ⁉ まさか、彼らの幽霊がね、届けてくれた訳ではないわよね」

 「ああっ⁉ ホントですね! 財宝に浮かれて、すごく肝心なところをね、見落としていました!」

 「どうやら、受付嬢さんも、記憶がないご様子みたいね」

 「は、はい……当ギルドにね、しょ、所属者がいたんですね。……も、申し訳ございません。全く思い出すことがね、できません!」

 (遺跡につづいて、こちらのダンジョンでも、所謂、英雄死……二度つづけて……ね。すごく偶然と考えるのは、聊【いささ】か、ありえないわね。加えて、すごく短期間での出来事……すごく必然と考えるのが、すごく妥当でしょうね。しかし、どうして、寄付なんて行為にね、及んだのかしら? 足取りを追われている側の立場でしたら、少なくとも、形跡を残す行動はね、すごくリスキーなはず……。……そうね。よく分からないわね)


 ……そして、合流!



           6

「そうね……。情報を照らし合わせてみると、ある人物の可能性がね、すごく浮き彫りになってきたわね」

 「しかし、どこか、腑【ふ】に落ちないですよね? 行動そのものは、完全にね、殺人鬼そのものですよ。でもね、同時にね、すごく親切心も兼ね備えている……同じ人物なんですかね? まさか、単独じゃない可能性も……」

 「いえ、単独行動でしょうね。性格を想定すると、すごく厳しいわね。比較的、自由の利く状況じゃなきゃ行【おこな】えないことばかりよ」

 「あの、僕も、よろしいですか?」

 「ええ、話してご覧なさい」

 「えっとね、罪滅ぼしという可能性もあるのではないでしょうか?」

 「却下ね」

 「ええ、どうしてですか⁉」

 「あのね、すごく常識的に考えて、同時進行はね、ありえないわ。すごくダブルスタンダードよ」

 「うん、ミュウさんのおっしゃる通りですね。ラックロさんの意見をね、鵜呑【うの】みにしちゃうと、すごく矛盾が生じます。すごく申し訳ないけど、俺もね、ラックロさんの意見は、却下だね」

 「まあ、気にしないで。僕も、可能性について、推測してみただけだから」

 「うーん……しかし、途絶【とだ】えちゃいましたね」

 「そうね。全く、証拠を残さないという点においてはね、相当の手練【てだ】れであることは、間違いないわね。真偽のほどはね、直接、相【あい】まみえないと、すごく困難を極めるでしょうね」

 「そうですね……。捜査はね、振り出しですね」

 「まあ、しょうがないですよね」

 「……そうね。ひとまず、彼らがね、探索したと思われる、ダンジョンにね、行きましょう。嘆【なげ】くのはね、洗いざらい、調査をしてからにしましょう」

 「それも、そうですね」

 「はい、幽【かす】かな、可能性にね、賭けてみましょう」


 ミュウ達、情報収集をもとめて、アルシギウの洞窟に向かう……。



           7

 エルバー州/アルシギウの洞窟


 ミュウ達、ガイアル達が訪れていた、洞窟の入口から……。


 「うーん……これといって、特異的な点はね、ないですよね?」

 「うん、そうだね。ダンジョンというより、秘密基地といった方が、理【り】にかなってるよね」

 「……そうね。少なくとも、見た目はね」

 「ええ、見た目ですか⁉」

 「目を凝らすと、何かね、あるんですか⁉」

 「凝らすもなにも、すごく明快でしょう」

 「「ええっ⁉」」

 「財宝をね、持ち帰っているでしょう。これがね、何を意味しているのかね、お分かりかしら?」

 「「え……」」

 「そ、そうですね……(考)」

 「はい、僕ね、分かりました!」

 「うふっ。そのようね」

 「所謂、隠しダンジョンがね、あるということですよね?」

 「正解よ」

 「ふふっ。ラックロさん……すごくやるじゃない⁉」

 「えへへ、ありがとう、レナードさん」

 「うふふっ」

 ……。

 「さあ、後はね、隠しダンジョンの入口ですが、やっぱり、ギミックなんですかね?」

 「ええ、強【あなが】ち、レナード君の推測はね、間違ってはいないわね」

 「うぅ⁉ すごく棘【とげ】に刺さる言いまわしですね(苦笑)」

 「こちらをね、ご覧なさい」

 「ええ、柱ですか⁉」

 「まあ、すごく奇怪なものだとは、僕もね、思っていましたが……」

 「ねぇ、耳を近づけて、ご覧なさい」

 レナードとラックロ、ミュウに諭されるように、中央の柱に耳を当てる……。

 ……すると。

 「「⁉」」

 「ああっ⁉ 何、これ⁉」

 「ミュウさん、これって……⁉」

 「ええ、すごく風の流れを感じるでしょ。おそらく、空洞になっているのでしょうね」

 「なるほど……確かに、隠しダンジョンですね」

 「あははぁ……でもね、すごく器用な方がいるものですね。僕には、とても……」

 「ええ、開発の真意はね、二の次にして、私【わたし】たちの最優先課題はね、ある人物の足取りを探ることよ。おそらく、あまり、時間はね、経っていないでしょうから、すごく軽微かもしれないけれど、証左【しょうさ】はね、残っているかもしれないわ」

 「そうですね……。さあ、そうと決まれば……」


 しかし、レナードの決意も虚【むな】しく……。


 エルバー州/フライベール街道

「ええ、明日、改めて……ですか⁉」

 「ええ、言っておくけど、コンディションの管理はね、冒険者にとって、すごく基本的なことよ。コンディションを整えて、武具などの準備を揃える……ダンジョン探索にはね、それ相応【そうおう】の身構えがね、すごく必要なのよ」

 「はぁぁい……すごくまともすぎて、反論するところがありません」

 「うふふっ。素直でよろしい!」

 「まあぁ、まあぁ、レナードさん……充電期間ということにね、しておきましょうよ」

 「うん、そうだね」


 ミュウ達、メルサの街に入る……。

 ……と、その時!


 ⦅あの、もしかして、冒険者の方々ですか⁉⦆

 「「「⁉」」」

 と、ミュウ達の前に、一人の女性が……。

 「あの、みなさんにね、お伝えしたいことがあります!」



           8

 エルバー州/機械都市メルサ

 喫茶店……。

 『ええ、それはね、ホントなのかしら⁉』

 『はい、私……ちょうど、街を出ていまして、明け方にね、戻って来たんです。その時、一人の男性の方が……』


 《僕に……優しく……しないで……。優しさは……弱さの象徴……だから……》

 さらに、謎の煙の噴射についても、教えてくれた……。


 ミュウ達、女性と別れ……。


 「どうやら、決まりのようね」

 「はい、正体にね、近づくことができただけでもね、進展したと捉【とら】えましょう!」

 「うん、しかし……ミュウさんの想定通りでしたね。話を聞く限り、単独行動のご様子ですし……」

 「ええ、遺跡にダンジョン……隠れ家としては、すごく最適なところよね」

 「な、何者なんでしょうか?」

 「分からないわね。でもね、すごく強靭【きょうじん】な心の持ち主であることはね、理解できたわ」

 「「ええっ⁉」」

 「それを踏まえてね、レナード君、ラックロ君、あなた達にね、ひとつの決断をね、下してもらうわ」

 「「あぁ……」」


 ミュウ、レナードとラックロに、ある決断を迫る……。


 「よろしくて? 始めと終わりに、あなた達の覚悟をね、確認するわ」

 「は、はい……よく分かりませんが、お願いします」

 「はい、僕も、異論はね、ありません」

 「ええ、了解したわ。それでは、始めの確認よ。すごく危険なミッションにね、なると思うわ。それでも、構わないかしら?」

 「はい、俺たちはね、冒険者ですから。それ相応【そうおう】の覚悟はね、備えているつもりです!」

 「僕も、ミュウさんにね、すごく鍛【きた】えられましたから、弱音を吐くつもりはね、毛頭ございません!」

 「ええ、あなた達の覚悟はね、すごく伝わったわ。ええ、それでは、お話をね、始めましょう」


 ミュウ、レナードとラックロに、自身が導き出した可能性を打ち明ける……。



           9

「いいこと。一度、地獄を味わった者の覚悟というのは、私【わたし】たちがね、思っているほどのレベルではないわ。全て擲【なげう】ってでも、貫き通す……とんでもない神経をした持ち主よ。無論、並大抵の覚悟で臨めば、返り討ちに合うのは、必須【ひっす】でしょうね」

 「「ゴクリッ!」」

 「おそらく、死すことも厭【いと】わない……そのような覚悟があるからこそ、躊躇【ためら】うことなく、魂【たましい】を穿【うが】つことがね、できるのよ。自身の存在意義がね、保【たも】てなくなるから、壊れることがないように、自身の心を守るように……そして、抗【あらが】いつづけているのよ。悪魔に侵食されるのを、拒【こば】んでいるという、解釈もできるわね。これまでの彼の行動からお察しするに、すごく静かなところをね、求めていたはずなのよ。でもね、ゆく先々でね、運悪く、とても大きな事件に遭遇をしてしまった……おそらく、彼にとってはね、すごく誤算の連続でしたでしょうね。そして、抗【あらが】いつづけているということは、彼にとって、すごく達成したい目的があるはず……そのように、私【わたし】はね、想定をしているわ。無論、邪魔者はね、全て排除する……すごく強い信念をもって襲い掛かってくるでしょうね」

 「「ゴクリッ‼」」

 「すごく皮肉なことに、彼にとって、功績はね、すごく弊害でしかなかったのよ。おそらく、熱【ほとぼり】が冷めるまで、しばらく、行動は慎むでしょうね。でもね、私【わたし】はね、彼を刺激するべきではないと思っているわ。人というのはね、それ相応【そうおう】の悩みというのをね、抱【かか】えているものよ。しかし、悩みの大きさはね、各々、すごく異なるわ。彼がね、どのような対象にね、当てはまっているのか、第一の課題はね、その分析よ。闇雲にね、悪魔と決めつけて、抹殺するのはね、見解次第では、私【わたし】たちの行為そのものがね、悪魔に毒されてしまうおそれがあるのよ。さあ、私【わたし】のお話はね、以上よ。それでは、改めてね、聞くわ。今のお話を聞いても、覚悟はね、お変わりないかしら?」

 「は、はい! 彼自身、もしかしたら、ホントはね、孤独なんて、嫌いなのかもしれない。俺はね、そのような解釈がね、できました」

 「レ、レナード君……」

 「僕も、変わりません! 彼の本心とは、正反対のことを行【おこな】っている可能性だってありますよね。所謂、自己欺瞞です!」

 「ラ、ラックロ君……。ホント、すごく驚かされたわ。私【わたし】はね、すごく怖気【おじけ】づくとね、思っていたから。すごく意外だったわ」

 「まあ、ミュウさんの後輩ですから」

 「はい、僕も、同感です」

 「ええ、あなた達の覚悟はね、どうやら、本物【ほんもの】のようね。分かったわ。遠慮なく、付き合ってもらうわよ」

 「はい、了解です!」

 「こちらこそ、よろしくお願いします!」


                             STORY 1  完


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ