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4話(探索 ~ノーミス~)

   4話(探索 ~ノーミス~)



           1

 エルバー州/機械都市メルサ

 冒険者ギルド・メルサ支部


 ガイアル、例の依頼を持って、受付に向かう……。


 「よろしくお願いします」

 「ええ、エリバースさん⁉ ホントにね、よろしいのですか⁉」

 「はい、一度、下見にね、行ってきます。ひとまず、自身の目で、確認をしたいので」

 「は、はい……そういうことですか……それでしたら、私にね、許可をしない権利はございませんね」

 「はい、お気遣いいただいてありがとうございます」

 「かしこまりました。申請をいたしますね」

 (うん、受付嬢さんの反応を見ても、すごく危険な香りがするね。通常、呼び止めるという行為はね、余程のことがない限り、すごくありえないことだからね。……そうだね。ノーダメージらしいけど、一応、武具の準備はね、整えた方がよさそうだね)

 「お待たせしました。依頼先は、メルサの街から、北西方面にある、アルシギウの洞窟です。一応、街道沿いに案内板がございますので、迷うことはね、ないと思います」

 「はい、ありがとうございます。それでは、行って参ります」

 「はい、すごく余計なお世話かもしれないですけど、無謀な行動はね、お控えください」

 「いえ、お気遣い感謝いたします。肝に銘じておきますね」



           2

「さあ、まずはね、アイテムの調達だね。そして、先述のように、武具と……」


 道具屋(アイテム屋)。

「えっ⁉ 回復薬、それも、こんな高価な……あのリールがね、足りないんですけど(苦笑)」

 「何も言わないで、受け取ってくれ。これでも、足りないくらいだからな」

 (ウソでしょ⁉ すごく街全体にね、浸透しちゃってる感じじゃない)


 そして、武器屋&鍛冶屋でも……。

 「あ、あの……いくらなんでも、すごくブランドの品物じゃないですか……⁉」

 「いいんだよ。あの魔獣を退治してくれるなら……すごく安いくらいだよ」

 (分かってはね、いるけれど、すごく荷が重いよね……)


 ……そして、満を持して、出発?



           3

 エルバー州/フライベール街道

「さあ、想像がね、全くできないけど、少なくとも、ノーダメージということはね、想定をしておくことにして、今回の最重要課題はね、どれほどの収穫を持ち帰ることができるのかにかかっているよね。攻撃がね、一切効かない……したがって、弱点自体もないということだよね。したがって、攻撃系の類【たぐ】いはね、事実上、不可能ということだよね。防御系……若【も】しくは、回復系……でもね、あまり、現実的じゃないよね」


 分岐点……(案内板がある……)。


「うん、ここから、西方向だね。まあ、受付嬢さんも、北西方面にあると言っていたからね。うん、人間と違ってね、心が読めないから、ある意味、すごく厄介な存在なんだよね」


 ガイアル、分岐点を西に進む……。

 ……そして。


「うん、見えて来た……おそらく、あれのことだよね? なるほど、思っていたより、すごく大きいダンジョンじゃない⁉」


 アルシギウの洞窟に到着……。

 しかし……。


「ええっ⁉ あ、ああぁぁ……(パクパク)」

 ガイアル、一瞬、目の前の光景に、呆気をとられてしまう……。


「うん、ひとまず、待機!」

 と、ガイアル、一度、物陰に隠れて、様子を見ることに……。


 そこには、全身を鎧で纏【まと】った、超特大の魔鳥(魔獣)が、入口前に立ち塞がっていた……。

 ガイアル、息を凝らしながら……。

「……そうだね。これはね、僕の落ち度だろうね。具体的な特徴まで、聞かなかったからね。でもね、鎧に……兜に……纏【まと】われた魔獣……ね。そのようなタイプの魔獣は、僕の事前調査にはね、引っ掛かっていなかったな……。うん、常軌を逸しているよね。…………(悩)。……そうだね。引き揚げていては、下見にならないからね。ひとまず、可能な範囲でね、攻撃を仕掛けてみることにしよう」


 ……そして。

 ガイアル、[一大決心?]をして、魔獣の前に、飛び出していく……。


 「…………。…………」

 (うんっ⁉ 動かない……いえ、それ以前に、反応がない! 敵じゃないと舐めているのか……ホントに、気がついていないのか……。うん、論点はね、そこじゃない! あのね、それはそれで、僕にとってはね、すごく好都合だよ。それじゃあ、始めるとしよう)


 ガイアル、武器屋の店主から、受け取った重剣を構える……そして!

「はあああぁぁぁー……ぁぁああぁぁん!」

 と、大きく降り抜く……。


 シュウウウウゥゥゥ…………ドオオオオォォォォーン…………!

 ものすごく火力を伴いながら、魔獣に攻撃が直撃!

 反動で地面が大きく揺れる……!


『こ、これはね……通常であれば、すごくありえないことなの。言うまでもなく、戦士が使用する高難易度な必殺技だからね(汗)。それを、僕がね、使用しているということは……』


 次第に、撒き散らされた、砂埃が晴れ……。


「ええっ、ウソでしょ⁉ ああぁぁ……」

 魔獣、ノーダメージ……。


 「…………。…………」

 しかも、無反応……。


 「ははぁ……わ、笑うしかないよね。これはね、じり貧になるだけだと思うけど、一応、店主さんがね、用意をしてくれた訳だしね……すごくダメ元だけど、使用してみようかな……」

 その後、ガイアル……重剣につづいて、弓矢……銃……導力砲……用意してくれたものを、次々と使用……。

 ところが……。


 「…………。…………」

 「ハアァハアァ……全くと言っていいほど、微動【びどう】だにしないね。もっとも、攻撃を仕掛けている僕の方がね、すごく疲弊をしているよ。まあ、焼け石に水だろうけど、魔法もね、試してみようかな……」


 ガイアル、物理攻撃につづいて、魔法攻撃を試すことに……。


 《魔法名、●●●といって、発動をしましょう! ●●●については、次項にて記載》


「うーん……さすがにね、すごく恥ずかしいんだけど、それに加えて、僕にはね、似合わないよ」


 そして、ガイアル、覚悟を決めて……!

「アイシクルカッター!」(水属性、上位魔法!)

「クリムゾンリバイバル!」(火属性、上位魔法!)

「アトラスイリュージョン!」(地属性、上位魔法!)

「サンダーヘイスト!」(風属性、上位魔法!)

 …………次々と、強力な魔法攻撃を放つ!

 その度、フィールドが大きく揺れる……!

 言うまでもなく、魔法使いが使用する高難易度の魔法である……。


 「…………。…………」

 そして、ガイアルの想定通り、ノーダメージ……。


 「ごほっ⁉」

 と、ガイアル、突然、全身の力が抜けて、その場に跪【ひざまず】く!

「ハアァ……ハアァ……ハアァ……。あのね、本職ではない者がね、このような、無謀な攻撃を繰り返すと、すごく身体に対する負担がね、絶大なの。正直……付き合ってられないよ。僕にはね、すごく重要なミッションがあるからね。それこそ、僕の本職にね、すごく支障が伴ってしまうよ。申し訳ないけど、エスケープさせてもらうよ」

 ガイアル、《隠形》を使用して、この場を離脱する……。


           4

 そして、夕暮れ……。

 ギルドに帰還……。

 「エ、エリバースさん⁉ だ、大丈夫ですか⁉」

 「うん、見届けて来ましたよ。まさに、不動の魔獣ですね」

 「い、いえ、そんなことより、すごく身体がね、震えていますよ!」

 「心配はね、いらないですよ。少し筋肉痛になっているだけですから……」

 「そ、そうですか……それでしたら、よろしいのですが……」

 「ああ……そうだ。ひとまず、結果をご報告しておきますね。体長5メートル……全く無反応な魔獣でしたよ」

 「ああっ、はい……そうですか……」

 「それでは、僕はね、失礼しますね」

 「は、はい……お大事に……」

 ガイアル、身体を引き摺【ず】るように、歩いていく……。

「ねぇ、ホントに、大丈夫なんだよね。でもね、すごくおかしいよね。そのような、魔獣ではなかったはず……」



           5

 ガイアル、ホテルに戻り、そのまま、ベッドに頭から倒れこむ……。

 「こ、これはね、ダメでしょ⁉ か、身体がね、壊れちゃう……。せ、成果をあげないと、リール泥棒だよ……。武器に……魔法に……そして、回復……あっ、そうだ⁉ 回復アイテムだ……」

 ガイアル、追い縋【すが】るように、回復薬を使用……。

「こ、これで、一晩休んで、回復してくれることをね、祈るしかないよね」


 疲労困憊のガイアル、祈願をして、眠りにつくことに……。



           6

 そして、翌朝……。

 ギルドにて……。

 「オ、オイ⁉ 昨日はさ、超大変だったみたいだね」

 「う、うん……そうだね。お二方のおっしゃっている通りだったよ。あれだと、さすがに、ビギナーでは、ダメだね」

 「やっぱり、すごく壮絶だったんですね。お疲れ様でした」

 「ふふっ。まあ、気にしないで。下見を決断したのはね、僕なんだから。君がね、気に病むことじゃないよ。あっ、そういえば、お二方はね、どうしたの? どうして、このような場所にね、集まっているの⁉」

 「まあ、受付嬢さんから、聞かせてもらったからね。おっと、名前を知らないとさ、超不便だよね。伝えておくよ。あのさ、俺の名前はさ、ダクフ・エリートって言うんだ。職業はさ、武闘家だ!」

 「えっと、僕はね、ネムル・サンクスと言います。僧侶を担当しています」

 「これはね、ご丁寧に。僕はね、ガイアル・エリバースと言うの。職業はね……ああ、そっか⁉」

 「うん、やっぱり、まだ、分かんないの⁉」

 「え、えっと……そうだね。って、ああっ⁉ と、盗賊……」

 「ええっ、マジかよ⁉ 盗賊なの⁉」

 「う、うん……そうみたいだね」

 「はああぁぁー……」

 「ええ、ネムルさん……どうしたの⁉」

 「ああっ⁉ い、いえ……盗賊ですか……。すごく珍しい職業ですので、少しだけ驚いてしまったんです」

 「なるほど、すごく職業人口が少ないんだね」

 「はい、そういうことですね」

 「うーん……盗賊……ね」

 「兄貴、どうしたんですか⁉」

 (まさか、ホントに、盗賊になるとはね……。うん、すごく不思議なご縁だよね)

 「あ、あのさ、もし、ガイアルさんが、構わないのなら、パーティーをさ、組まない?」

 「ええ、藪から棒にね、どうしたの⁉」

 「い、いや、超気になることがあったものでさ」

 「すごく気になること……」

 「ああ……。あのさ、体長5メートルというのはさ、ホントなの?」

 「う、うん……そうだね。見た目だけの判断だから、正確な大きさまではね、測っていないけど、多分ね、それくらいの大きさはね、あったと思うよ」

 「そうなのですね……」

 「どうやら、俺たちが見たときとは、別人みたいだな」

 「……そういうことだね。一度、整理をした方が、いいみたいだね」

 「ああ、俺から、説明をさせてもらうよ」


 ダクフ、ガイアルに魔獣について説明をする……。


 「なるほど、すごく肥大化をしているね」

 「ああ、俺たちが目撃した時の約5倍だな」

 「ねぇ、鎧はね、身につけていたの?」

 「いえ、そのようなものはね、していなかったと思いますよ」

 「うーん……超食い違いが激しいな……」

 「うん、そうだね。……。ねぇ、討伐にね、参加をした、冒険者の方々というのはね、分かるかな?」

 「ああ、受付嬢さんに聞けば、分かると思うよ。それがね、どうしたの?」

 「兄貴……考えてくださいよ。おそらく、僕たちの意見がね、食い違っているということは、他の冒険者の方々もね、食い違っている可能性がね、すごく高いでしょ⁉」

 「ああ、確かに!」

 「しっかり、お願いしますよ」

 「ふふっ」

 「うんっ⁉」

 「うん、ごめんね。すごく仲良しな兄弟だなぁと思ってね」

 「ああー……俺たちさ、兄弟じゃないよ」

 「ええ、そうなの⁉」

 「うん、兄貴はね、僕の幼なじみなの。ホントのお兄ちゃんみたいにね、僕のこと、守ってくれていたの」

 『ホントのお兄ちゃん……ね。僕なんかより、よほど……』

 「ガイアルさん⁉ 大丈夫……超悲しそうな顔をしてるけど……」

 「ああ、ごめんね。私情を挟んでしまってね……申し訳ない」

 「ああ……」

 ネムル、心配そうにガイアルのことを見つめる……。

 「あのね、そんなにね、悲しそうな顔をしないで。ひとまず、今はね、魔獣のことをね、何とかしないと」

 「ああ、はい……そうですね」

 「ひとつだけ、はっきりとしていることがあるからね」

 「ええ、ホントですか⁉」

 「うん、おそらく、あの魔獣はね、何らかの要因によって、肥大化をしている……その意味がね、分かるかい⁉」

 「ええ、どういうこと……ですか⁉」

 「原因を突き止めなきゃ肥大化をつづけるおそれがあるってことだろ⁉」

 「ええ、そんな……それだと、怪物みたいじゃない⁉」

 「うん、少なくとも、対処方法をね、見つけないと……」

 「で、でもさ、戦ったあんたもさ、分かってると思うけど、ノーダメージなんだよ! 無敵の魔獣相手にさ、どうやって、対処をするんだよ!」

 「無敵というのはね、現実的にいって、すごくありえないよ」

 「うん、どうして、そのように、思うのですか⁉」

 「自然の摂理というものだよ。肥大化をしている現実……防具を纏【まと】っている現実……所謂、進化をしていると捉えてもね、いいと思うの」

 「はい……すごく説得力のある意見ですね」

 「まあ、情報集めを始めてみるか⁉」

 「うん、そうだね。一人でも多くのね、目撃情報が欲しいよね」


 ……そして、ガイアル達、冒険者の参加者の確認のため受付に。



           7

 「お待たせいたしました。これまで、申請をなさったのはね、全員で八名ですね。詳細はね、こちらの機密事項でね、ご確認ください」

 「いえ、ありがとうございます」(ガイアル)

 「いえ、ギルドとしても、このような事案はね、見過ごせないですから。それに、事情をお聞きすると、なおのことね」

 「まあ、俺たち、パーティーを組むからさ。パーティーの登録、よろしく頼むよ」

 「はい、かしこまりました。少なくとも、単独で挑むより、すごく賢明かと存じます」

 「ねぇ、受付嬢さん⁉」

 「あら、ネムル君⁉ どうしたの⁉」

 「あのね、根【こん】を詰め過ぎないようにね」

 「ええ、私⁉」

 「うん、すごくまじめでしょ⁉」

 「……そうだね。ネムル君のおっしゃっている通りだね。肝に銘じておくよ」

 「うん、僕もね、頑張るよ!」

 「ふふっ。決して、過信しないようにね」

 「うん、もちろんだよ!」

 「ネムル、行くぞ!」

 「ああ、待ってよ!」

 「それでは、僕たちは、これで失礼しますね」

 「ええ、エリバースさんもね、身体第一でね」

 「はい、肝に銘じます」



           8

 ……そして。

 僕たちは、三手に分かれて、各々、聞き込みに回った……。


 ダクフ……。

 「ええ、そうなの⁉」

 「うん、確かね、3メートルくらいだったと思うよ」

 「ああ、俺たちの時の3倍だね」

 「ねぇねぇ、ダクフさん⁉ 肥大化しているというのはね、ホントなの⁉」

 「ああ、どうやら、否定できない現実だよ」

 「そうなんだ……。俺も、力になれるといいんだけどね」

 「まあ、どうしても、対処できない場合はさ、お願いすると思うから、その時はさ、よろしく頼むよ」

 「ああ、任せておきな!」


 ネムル……。

 「ええ、4メートル……それに、防具を身に纏【まと】った……なるほど、そのタイミングでね……」

 「あら、始めから、身に纏【まと】っていた訳じゃないの⁉」

 「うん、どうやら、後者に参加者をしていた人ほど、進化している印象だね」

 「ねぇ、私たちとネムル君たちでね、すごく隔【へだ】たりがね、あるの⁉」

 「うん、それはね、否定することのできない事実なの」

 「まあ、必要になったら、声を掛けてよね。いつでも、駆けつけるからね」

 「うん、ありがとう」

(うん、肥大化説……すごく濃厚になってきたね)


 ガイアル……。

 「なるほど、四人パーティーでね、戦ったのはね、あなた方なのですね?」

 「うん、すごく万全を期【き】っしてね、挑んだつもりだったんだけどね」

 「うん、すごく的を射た発言だと思いますよ。後衛から、魔法使いによる、魔力攻撃……前衛から、戦士による、火力攻撃……回復をメインとした僧侶……そして、中立のポジションに身を構えた魔法剣士……すごくバランスのとれた編成でね、組んでいると思いますよ」

 「そのようにね、言っていただけると、すごく嬉しいね」

 「おそらく、役割分担という観点からはね、すごく理想的でしょう。したがって、連携プレイについてはね、僕から、申し上げる点についてはね、皆無ですね」

 「……そうですか……だったら!」

 「だからこそ、お尋ねします! 当時の状況について、できるだけ、詳しくね、お聞かせ願います!」

 「うん、私の分かる範囲内でしたら、喜んでね、ご提供をするよ」

 「あのね、魔獣にね、すごく奇妙な点は、ございませんでしたか⁉ どのような、些細なことでもね、結構ですので」

 「うん……そうだね。全く攻撃を仕掛けてこないのはね、すごく拍子抜けだったよね」

 「無抵抗ということですか⁉」

 「うん、回復はね、使用する機会がなかったからね」

 「バリアをしているご様子はね、ありましたか?」

 「うんうん……残念ながら、それもね、なかったよ」

 「継続して攻撃を続けてみましたか?」

 「……そうだね。継続についてはね、すごく微妙な時間だったんだけど、一斉攻撃はね、試してみたよ」

 「一斉攻撃……」

 「うん、複数の攻撃にはね、対応できないかもしれないと、踏んでいたからね」

 「それで、結果は⁉」

 「残念ながら、ダメだったよ」

 「うーん……色々、試していますね」

 「ああっ⁉ そういえば……」

 「ええ、何かね、ありましたか⁉」

 「あのね、私のね、勘違いかもしれないんだけど……」

 「いいえ、結構ですよ。お話しください」

 「うん、口元がね、すごく僅【わず】かなんだけど、開【あ】いていたの」

 「えっ、ホントですか⁉ 具体的にはね、どのような、状況の時ですか⁉」

 「うん、確か、攻撃をね、立て直している時だったと思う」

 「……(考)。ねぇ、先ほど、回復の機会がなかったとおっしゃっていましたよね?」

 「う、うん……そうだね。こちらも、ノーダメージだったからね」

 「ねぇ、回復だけでなく、防御などの支援……所謂、身体強化もね、使用していないじゃないんですか⁉」

 「うん、そうだね。攻撃されるおそれがなかったからね。攻撃強化はね、かけたけど、防御強化はね……」

 「もしかして……」

 「うん、何かね、分かったの⁉」

 「ああ、ごめんね。すごく語弊のある反応をしてしまって……」

 「うんうん……気にしないで。でもね、何かね、分かったら、教えてね。私たちだって、すごく辟易【へきえき】しているから」

 「うん、了解です。何か、分かったら、お伝えしますよ」

 「うん、ありがとね」

 「いえいえ、とんでもございません」


 ……そして、一通り、事情聴取を終えて、総括することに。


 「うーん……俺が聞いた限り、超情報が弱いよ」

 「ネムルさんは⁉」

 「うーん……僕もね、これといって……」

 「ガイアルさんはさ、どうだったの⁉」

 「うん、僕もね、決定的な情報はね、すごく皆無だったね」

 「そっか……」

 「でもね、可能性はね、すごく軽微だけど、ないこともないの?」

 「ああ、所謂、推測ってことか⁉」

 「うん、そういうことになるね」

 「ああ、推測でもさ、この際、構わないよ。話してくれよ」

 「うん、僕からもね、お願い!」

 「うん、そうだね。思考停止はね、すごくマイナスだからね」


 ガイアル、ダクフとネムルにひとつの仮説について話す……。


 「なるほど、攻撃を吸引している……と来たか⁉」

 「うん、すごく突拍子な発想だけど、すごく辻褄【つじつま】がね、合わない訳じゃないよ。だって、冒険者全員の意見を総括するとね、すごく特徴がね、バラバラだもん」

 「ああ、吸引して、栄養分を得ているとなると、超リアリティーだよね」

 「まあ、何度も言っているように、ひとつの可能性だからね。すごく俯瞰【ふかん】的にね、捉えての判断というのはね、否定しないけれど、過信はね、あまりよくないと思うんだよね」

 「ああ、それはさ、理解してるよ! でもさ、試さない手はないだろ⁉」

 「うん、僕もね、兄貴に賛成です! 突破口がない状況ですから、賭けてみる価値はね、あると思いますよ!」

 「もとより、そのつもりだよ。言ったよね? 思考停止はね、人間としてね、生きることを諦めた敗北者だとね」

 「あははぁ……ガイアルさん、すごく辛辣【しんらつ】だよね」

 「よーし! この際、やってみようじゃないか! それに、記念すべき、パーティーのお披露目に相応【ふさわ】しい……初陣【ういじん】だよ」

 「うん、準備を整えたら、早速ね、出発するよ」

 「ああ、そうだな」

 「うん、反攻開始だね」



           9

 エルバー州/フライベール街道

『ねぇねぇ、ガイアルさん? あのね、お話できないのであれば、スルーしてくれても、構わないんだけど……どうして、先ほど、兄弟について、お話をね、した時、すごく過敏に反応をしたの?』

 『……そうだね。隠すほどのことでもないから、お話しておくよ。パーティーだしね。うん、実はね、妹がいるの』

 『ええ、妹さん⁉』

 『うん、ある事件がキッカケでね、幼い頃、両親をね、亡くしているの。それで、僕がね、妹の面倒を見ていたの』

 『な、亡くした……ご、ごめんなさい。すごく不謹慎だったよね』

 『気にしないで。僕から、お話をしたんだから。君がね、謝ることじゃないでしょ』

 『あ、ああ……は、はぁい……。そういえば、妹さんはね、現在、どちらにいるの?』

 『うん、僕たちの地元だよ』

 『もしかして、リールはね、全て、ガイアルさんが……』

 『……そうだね。親代わりだからね』

 『地元には、帰っていないの?』

 『うん……そうだね。仕事がね、すごく忙しくてね……年に二度ほどかな……』

 『ダ、ダメだよ、そんなの! 最低、毎月はね、帰ってあげなきゃ!』

 『ええっ⁉』

 『もし、僕がね、妹さんの立場なら、もっと一緒にいたいなぁ……って、思うから』

 『ネムルさん……』

 『リールを稼ぐことだけがね、全てじゃないよ! そばにいてあげることだって、すごく大切なことだよ』

 『そばにいてあげること……ね』

 『ごめんなさい。すごく無礼がすぎたね』

 『いえ、ネムルさんのおっしゃる通りだよ。……そうだね。もう少し、帰ってあげなきゃいけないよね。…………』

 『うん、すごく嬉しいと思うよ』

 『ふふっ、そうだね。ネムルさん、ありがとね』

 『いえ、お役に立てたのなら、すごくよかった……。ガイアルさんのおっしゃっていたように、僕たち、パーティーなんだからね。悩みごとはね、一緒に解決しないとね』

 『……そうだね。すごく大切なことだよね』

 『あっ、ごめんなさい。僕……思わず、タメ口で話してしまって、すごく馴れ馴れしかったですよね?』

 『ふふっ。あのね、僕たちはね、パーティーでしょ?』

 『えへへ、そうだね』



           ⒑

 ガイアル達、物陰から……。

 「「「ああぁぁ……」」」

「これはね、すごくまずいかもしれないね」

 「ああ、そうだね」

 「でもね、ガイアルさんの推測通りかもしれないよ」


 魔鳥(魔獣)、さらに、肥大化……。

 (あれだけ、攻撃を与えたからね。……そうだね。目視で確認する限り、6メートルは超えているよね)

 「あのさ、作戦について、教えてくれない?」

 「うん、そうだね。あのね……ゴニョゴニョ」

 ガイアル、二人の耳元で作戦を伝える……。

 「うん、にわかにはね、超信じ難【がた】いんだけど……」

 「そうだね。すごく逆転の発想だもんね」

 「でもね、試してみる価値はね、あるでしょ?」

 「ああ、超おもしろそうじゃん。それで、魔獣が倒せるなら、こんな安上がりな方法はね、ないよ」

 「はい、そうですね」

 「それじゃあね、作戦開始だよ」

 「ああ!」

 「了解!」


 ガイアル達、勢いよく、物陰から、飛び出す!


 「…………。…………」

 「うーん……相変わらず、全く反応がないよね」

 「ああ、超複雑だよね」

 「でもね、すごくケガの功名【こうみょう】ですよ。この巨体で、攻撃を繰り出すことを思えばね……」

 「ああ、巨人と小人【こびと】だもんな」

 「ふふっ。さあ、お話はね、おしまいだよ。ネムルさん、お願いね!」

 「うん、了解!」


 「…………。…………」

 不動の魔獣……。


 ネムル、詠唱を始める……。

 「我々の奥底に眠る……治癒の魂よ、今ここに、大地の加護をもって、我々に力を与えたまえ! アトラスブロークン!」

 (地属性の支援魔法)


 ガイアル達の防御力が強化される……。


 「…………。…………」


 「二度目、いくよ!」

 ネムル、再度、発動……(詠唱中、ネムル、ガイアルの言葉を思い出していた……)。

「ええ、魔獣より硬くするの⁉」

「そうだね。君がね、おっしゃっていたように、所謂、逆転の発想だよ」

 「うん、ありがとう(照)」


 ―そして。

 ネムル、四度に渡って、支援魔法を繰り返した……。

 すると……。


 「…………。……う、うううぅぅぅ……」

 「はっ⁉ ねぇ、動き出したよ!」

 「うん、ようやく、開演だね」

 「はああぁぁ……」

 魔獣、次第に、鼻息が荒く……。

 「で、でもさ、素直に喜んでばかりも……活動をするということはさ……」

 「うん、そうだね。初お目見えだね」

 「バカ! どうして、そんなに、冷静なんだよ⁉」

 「あ、兄貴、落ち着いてください!」

 「これがさ、落ち着いていられる訳ないだろ⁉」


 魔鳥(魔獣)、口から、レーザーらしきものをスタンバイ……!


「ダ、ダメだ! もう、間に合わない! でもさ、逃げるぞ!」

 「は、はい!」

 「逃げちゃダメ!」

 「「ええっ⁉」」

 「あんた、何、言ってるんだよ⁉ 防御強化したからって、無抵抗に攻撃を受けるなんてさ、超ありえないだろ⁉」

 「あのね、話はね、最後まで、聞きなよ! こちらも、ノーダメージだからね」

 「だ、だから、どうして、そんなに、れいせ……ええっ⁉ ノーダメージ……」


 「ハアアァァー……!」

 魔鳥(魔獣)、ガイアル達、目掛けて、レーザー攻撃を放つ……!


 「「ううっ……」」

 「あ、あれ⁉ ホントだ! 全く痛くも痒くもない……信じられない……」

 「そ、そうですよね?」

 「ねっ、言った通りでしょ」

 「ひとまず、無傷なことは、超朗報なんだけどさ、だからといって、根本的な原因がさ、解消した訳じゃ……」

 「うん、そうですよね。それとも、魔獣のスタミナ切れをね、待つんですか⁉」

 「あ、ははは……そんな戦法……聞いたことないよ」

 「それはね、聊【いささ】か、語弊があるかなぁ……」

 「「ええっ⁉」」


 「ウウウウゥゥゥゥ……⁉」


 「えっ⁉ ウソだろ⁉ どうして、魔獣がさ、ダメージを受けてるんだよ⁉」

 「は、はい……すごく驚きですね。これはね、完全な自爆ですよ」

 「……そうだね。自爆……そのように、解釈をしてくれてもね、結構だよ」


 「アアアアア……ハアアァァー……!」

 暴走した魔鳥(魔獣)、攻撃を繰り返す……。


 「あちゃ……完全にご乱心だね」

 「確かに、すごく解【げ】せないですもんね」

 「まあ、そうだね。自身のすごくおいしいところをね、奪われている訳だしね。吝【やぶさ】か、穏やかじゃないだろうね」

 「ああ……魔獣といっても、それくらいはさ、分かるよな……」

 「あはは、すごく気の毒ですね」

 「ネムルさん……魔獣にね、情けはね、無用だよ。……そうだね。情けはね、《弱さ》だからね」

 「ええっ⁉ それはね、どういう……」

 「オイ⁉ 倒れるぞ!」

 「「……⁉」」


 「ウオオオォォォーン!」

 魔鳥(魔獣)、力尽きて、倒れる……。

 ドオオオオォォォォーン……!

 強烈な揺れが、しばらくつづく……!


 「や、やった……僕たちね、魔獣をね、討伐しちゃったよ!」

 「あ、ああ……ほとんど、静観していただけだけどね」

 と、ダクフとネムル、撃破をした魔獣に歩み寄る……。

 そして、ハイタッチ!


 (ホント、兄弟みたいだよね。…………(目を閉じる)。ひとまず、討伐はね、完了をしたけど、残念ながら、第二段階……はね……)


 「ねぇねぇ、ガイアルさんもね、こっちに来なよ!」

 「うん、僕も、なの⁉」

 「今さら、何を言ってるの⁉ 俺たち、パーティーじゃん! 全員で、健闘を讃えないとね」

 「ふふっ。それもそうだね」

 ガイアル、遅れて、ダクフとネムルに、歩み寄っていく……。


 そして、お互いの健闘を讃え合って、メルサに帰還をした……。




           ⒒

 帰還をした頃には、辺りはすっかり暗闇に包まれる……。


 エルバー州/機械都市メルサ

 冒険者ギルド・メルサ支部


 「お帰りなさいませ!」

 「「「え……」」」

 「おおー……勇者さま一同のご帰還だ!」

 「あ、あの……みなさん……」

 「さあぁさあぁさあぁさあぁ、お三方、VIPルームにご案内!」

 「ちょ、ちょっと⁉ 受付嬢さん……」

 ガイアル達、受付嬢に背中を押されて、ギルドのVIPルームに案内をされていく……。


 「しかし、ホントに、倒してしまうとはね……」

 「ホントだよね? どのような、戦法で倒したんだろうね」

 「まあ、詳しいことはね、またの機会にしようよ」

 「そうだね。すごくおめでたい日だからね」

 冒険者一同、歓喜に包まれていた……。


 一方、VIPルームに案内された、僕たちは、言葉の通り、特別待遇を受けた……。

 英雄証という、全く聞きなれない勲章【くんしょう】を授与され……そして、とんでもない価格の報奨金を受け取った……。

 無論、パーティーで、山分けをすることに……。

 騒がしくも、長い夜が更けていく……。


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