6.福井県
6.福井県
その一週間後の月曜日。
晴斗たちは、お昼ご飯に親子丼を食べながらいつもの料理の番組を観ていた。
その日は、福井料理であった。それを観ていた晴斗は福井料理もいいなぁと思った。
それから、二人は今度、福井料理を食べに行くことに決めた。
夜六時半に、二人は神楽坂駅に到着した。そこから五分程歩いた所に、その福井料理のお店があった。早速、二人はその店へ入った。
女性の店員に案内され、二人は奥のテーブルに座った。すぐに晴斗たちはメニューを見て、何を注文するか決める。
福井では、越前おろしそばが有名だということで、晴斗はそれを頼むことにした。彩乃は、舞茸の天ぷらが乗った季節の野菜天おろしそばを頼むと言った。舞茸は福井の名物らしい。それから、「へしこ」という鯖の糠漬けと、蟹を地酒で漬けたという「酔っ払いセイコ蟹」、それと生ビールを二つ注文した。
すぐに女性の店員が生ビールを持ってきてくれた。二人は乾杯し、一口飲んだ。生ビールは冷えていて旨かった。
それからしばらくして、へしこがやって来る。
「いただきます」と早速、彼女は言って、その刺身のように切られたへしこを一枚、箸で取り食べた。
「うん、おいしい」
彼女は首を縦に振って言った。その後、彼女はビールを飲んだ。
どれどれと晴斗も気になって、それを食べてみる。噛むと、独特な味が口の中に広がった。
それからすぐに晴斗はビールでそれを流し込む。濃い目の味付けだなと晴斗は思った。
「しょっぱいね」
晴斗がそう言うと、「うん」と彼女は頷き、「これはお酒が進むね」と言って笑った。
「だね。後、ご飯も欲しくなる」
それに、白飯が食べたくなるような味でもあった。
「確かに」
その後すぐに、「お待たせしました」と言って、店員がそばを持ってきた。
晴斗の前に、越前おろしそばが置かれ、彩乃の前に、舞茸の天ぷらが乗った野菜天おろしそばが置かれた。
「おいしそう!」
「だね」
湯気が立っていて、いい匂いもした。
早速、彼女はそばを啜った。
「うん、おいしい」
彼女はおいしそうにそのそばを啜っていた。
その後、晴斗もその越前そばを食べた。
「おいしい」
そのそばは、ほんのりと甘い風味がした。大根おろしがいいアクセントになっていて、ピリッと辛い大根とそばを食べると、口の中がちょうどいい味わいになった。
「ね」と彼女が言って、今度は舞茸の天ぷらを食べた。
サクッと言い音がした。
「うん、この舞茸もおいしい」
彼女が嬉しそうに微笑んだ。
「いいね」
晴斗はそう言って、もう一口そばを啜る。そのそばはサッパリとしているが、上品であった。
「お待たせしました。酔っ払い蟹でございます」
そばを食べていると、女性の店員がそう言って酔っ払い蟹をテーブルに置いた。
大皿に大きめの蟹が乗っていた。
「わ! すごい!」
晴斗は思わずそのでかさに驚いた。彼女もびっくりしていた。
「こちらのはさみで小さく切って、お召し上がりください」
その女性店員はそう言って、蟹を切る専用のはさみを渡してくれた。
彩乃はそのはさみを受け取ると、早速、蟹の足を切断した。それから、蟹の胴体の前の部分を取り外し、後の甲羅を取る。すると、卵と味噌が出て来た。
「ほら、卵と味噌だよ」
「本当だ」
「食べてみてよ」
そう言われて、晴斗はその卵と味噌を食べた。
「うん、うまい!」
卵はプチプチとした食感がしていて、味噌は濃厚でクリーミーだった。
その後、彼女もそれらを一口食べた。
「うん、美味しいね」
彼女が嬉しそうに言った。
その後、彼女は胴体を半分に切り、半分にしたところについた身をほじり始めた。見ると、沢山の身がそこから出て来た。
「ほら、あなたもやってみて」
彼女にそう言われて、晴斗ももう半分の蟹の胴体を掴み、そこから蟹の身を取った。どんどんと蟹の身が出て来た。
「うん、おいしい」
彼女はそれを終えると、すぐにその身を食べた。晴斗も一通り身を剥がすと、それを箸でつまんでそれを食べた。
「うん、うまいうまい」
蟹の身はジューシーで美味しかった。思わず顔がほころんでしまう。
その後、彼女が足の部分をハサミで食べやすいように切り、それを食べた。晴斗も切ってもらったその足の部分を食べた。足の方が身はぎっしり詰まっているためか、食べ応えがあり、そちらの方が美味しく感じた。
「ねえ、あなた。最近、全然アレが来ないのよ……。」
福井料理を食べた三日後、仕事を終えて晴斗はいつものように自宅でゆっくりとしていた時、彩乃が不思議な顔をして言った。
アレって? と、晴斗は訊こうとした。が、その後、彼女が言うそれが生理であることだとすぐに分かった。
「マジか。一度、病院に行ってみたらどうかな?」
晴斗がそう言うと、「うん、そうしてみる」と、彼女が言った。
それから四日後の月曜に、彼女は病院へ行った。
病院から戻って来た彼女が、晴斗を見るなりこう言った。
「ねえ、あなた。私、妊娠したみたい」