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次は、どの県を食べようか?  作者: 落川翔太
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4.宮城県

4.宮城県


 晴斗はリビングのソファに寝転がり考えていた。次はどの県を食べに行こう。しかし、ぱっとここという県が思い浮かばないのである。

 月曜日であった。晴斗は自宅でゆっくりしていた。

「あなた、お昼出来たわよ」

 少しして、キッチンにいる彩乃に呼ばれた。

「今行く」

 晴斗はそう返事をして、ダイニングへ行くといい匂いがした。その日のお昼はチャーハンらしい。

 晴斗は早速、ダイニングテーブルに座る。その後、彼女もそこへやって来て、晴斗の正面に座った。

「いただきます」と、彼女はいつものように手を合わせた。「いただきます」と、晴斗も手を合わせる。

 晴斗は一口そのチャーハンを食べた。

「どう?」

 それから、彼女が訊いた。

「うん、うまいよ」

 晴斗がそう言うと、「あなたって、チャーハン好きよね?」と、彼女が言った。

「ああ。でも」

「でも?」

「彩乃の作るオムレツが一番だよ」

 晴斗がそう言うと、「そう? そう言ってくれて嬉しい」と、彼女は言って照れ臭そうに笑った。

「そうそう」

その後、彼女が口を開いた。

「何?」

「次は、どこの県を食べに行く?」

「ああ、そうだなぁ……。どうする?」

「うーん、どうしよう……。」

 彼女がそう言ってから、「あ、そうだわ!」と言って、テレビを点けた。それから、リモコンでチャンネルを変える。すると、ちょうどいつも観ている料理の番組がやっていた。

「どれどれ」

 彼女がそう言って、その番組を観始めた。晴斗もその番組を釘付けになったように見た。

「今日は宮城県か……。」

 それから、彼女が呟くように言った。

 その日の県は、宮城県だった。画面には牛タンや牡蠣かき、ホヤやずんだ餅などが映し出されていた。どれも美味しそうであった。

「牛タンいいわね」

 その後、彼女が言った。

「いいね。牡蠣も美味しそう」

 晴斗がそう言うと、「いいわね」と、彼女も言った。

「宮城料理、いいんじゃない?」

 それから、彼女が言った。確かに宮城の料理もアリだなと晴斗は思った。

「じゃあ、そうする?」

 晴斗がそう訊くと、「ええ、いいわね」と彼女がにやりと笑って言った。

 チャーハンを食べ終えた後、晴斗は早速、調べ始めた。東京に宮城料理のお店はあるだろうか。調べると、すぐにそのお店が出て来た。日本橋にあるようだった。それから、その夜、そのお店に行こうと晴斗は思った。

 午後六時半頃、晴斗たちは日本橋の駅に着いた。駅の改札を出て、少し歩いた所にそのお店はあった。二人は早速、中へ入った。

 女性の店員に案内され、二人は手前にあるテーブル席に座った。それから、二人はメニューを見て、注文を決める。牛タンと蒸し牡蠣。ホヤ刺しと金華サバの炉端ろばた焼き、それと生ビールを二つ注文した。

 少しして、すぐに生ビールがやって来た。晴斗たちは乾杯をして、ビールを一気に飲んだ。

うん、うまいと晴斗は思った。

 しばらくして、蒸し牡蠣とホヤ刺しがやって来た。

「おいしそう!」と、彼女が声を上げる。「だね」と、晴斗も頷いた。

「じゃあ、まずは牡蠣から……」

 彼女はそう言って、手を合わせた後、その蒸し牡蠣を一口で食べた。

「どう?」

 晴斗がそう訊くと、「うーん」と、彼女が目を輝かせた。「ぷりぷりしてて美味しい!」

 彼女は嬉しそうに言った。

「へー、いいね」

 それから、晴斗もその牡蠣を一口で頬張った。噛むと、ぷりっとしていてジューシーだった。それに牡蠣のクリーミーな味と甘さが口の中に広がった。

「うま!」

 晴斗も思わず目を大きくした。

「でしょ?」

 彼女が笑顔で言った。

「めちゃめちゃクリーミーで、ジューシー」

晴斗がそう言った後、「うん、もう一個食べたいよ」と、彼女はそう言ってにやりと笑った。確かに晴斗も、もう一つ食べたくなった。

 それから今度、彼女がホヤ刺しを食べた。

 彼女はそのホヤの刺身を噛みながら、遠くを見ていた。

「どう? おいしい?」

 晴斗がそう訊くと、「うん……おいしいけど、なんだろうこれ?」と、彼女が不思議な顔で言った。

「何て言ったらいいのか」

 彼女がそう言うので、晴斗もそれを一つ食べてみた。噛んでみると、ぷりっとした食感がした。それから、独特な塩味と甘みが出て来た。

「海の味がするね」

 晴斗がそう言うと、「うん、そんな感じ」と、彼女が言った。

「後、噛めば噛むほど甘みがある」

「そうね。なんだか癖になる味ね」

「うん」

「あ、これって日本酒とかお酒に合いそうじゃない?」

 それから、彼女がそう言った。

「ああ、確かに。これは飲みたくなる」

 それから少しして、牛タンと金華サバの炉端焼きがやって来た。

 彼女が早速、牛タンを一枚箸で取り、それを一口でぱくりと食べた。

「うん、美味しい」

 彼女は顔をほころばして言った。

「どれどれ」と晴斗は言って、その牛タンを一つ食べてみた。

噛むと、コリコリとした牛タンの食感とジューシーな肉汁が口の中に溢れた。塩加減も良く、とても旨かった。

「うまい! ああ、最高!」

 晴斗も思わず笑顔になった。

「次はサバを頂いちゃおう」

 晴斗は一度ビールで口を潤し、今度は金華サバの炉端焼きをつついて身をほぐす。箸で一口取り、それを口の中に放る。

 噛むとジューシーな油の乗ったサバが口の中でどんどんと溶けていく。また、炉端で焼いていることもあり、香りがよく食欲を増進させる。すぐに晴斗はビールで追いかけた。

「うん、うまいねー」

 晴斗は大げさに笑って言った。

「ね、どれも美味しいね」

 彼女も笑顔で言った。

 その後も、二人はビールを飲みながら、牛タンや金華サバを食べた。

ビールを飲み干し、一通り食べ終えた後で、再度蒸し牡蠣を二つ注文し、ついでに宮崎の地酒である日本酒も注文した。

 すぐに日本酒と蒸し牡蠣がやって来る。二人は蒸し牡蠣やホヤ刺しを食べながら、日本酒を嗜んだ。

 一通り食べた後、二人はそろそろ〆に何か食べることにした。彼女がメニューを見て、「これおいしそう!」と言って、みそ焼きおにぎりを指した。旨そうだなと晴斗は思い、それを二つ頼むことにした。それと、デザートのところに「ずんだ餅」があったので、それも二つ注文した。

 日本酒をちびちびと飲みながら待っていると、みそ焼きおにぎりがやって来た。味噌の香ばしい匂いがした。それから、ずんだ餅もやって来た。

 晴斗は一口、そのみそ焼きおにぎりを食べた。案の定、そのおにぎりは思っていた通りの味がした。ずんだ餅は、枝豆独自の味わいと甘さがあり、さっぱりとしていた。

それらを平らげると、晴斗はホッと一息を吐いた。どれも美味しかったし、宮城の料理を心行くまで堪能できたなと思った。

「美味しかったね」

晴斗が彼女にそう言うと、「うん」と彼女が頷き、微笑んだ。

時計を見ると、午後八時半を過ぎていた。そろそろ帰ることにして、晴斗は会計を済ませ、二人は店を出た。

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