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次は、どの県を食べようか?  作者: 落川翔太
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1.北海道

「次は、どの国を食べようか?」の続編になります。


あれから、四年。

二人の結婚!? そして、出産??

山崎晴斗と小坂彩乃のセカンドストーリーです。

どうぞ、日本各地の料理と共に、ご堪能下さいませ。


※注意

一応、上記の作品の続編になります。こちらからお読み頂いても平気ですが、上記の作品をまだ読んでいなければ、そちらから読むのをお勧めします。ですが、こちらを先に読んで、その後に読んでも問題はありません。

1.北海道


 その日、山崎晴斗やまざきはるとは妻の彩乃あやのと新婚旅行で京都へ来ていた。二人は嵐山の旅館に一泊二日で泊まっていた。

その夜、二人が部屋で懐石料理を食べていた時、ふと彼女が口を開いた。

「ねえ、あなた。私達って、世界の料理を食べ歩いてきたじゃない? だけど、日本の料理ってまだよね」

 彼女にそう言われて、晴斗は確かにと思った。

 それから、晴斗は四年前のことを思い出した。四年前、晴斗はフランス料理店で彼女と出会い、そこで意気投合した。そして、二人で世界の料理を食べ歩いていたのだった。

 懐かしいなと晴斗は思った。

「ああ、確かに」

「ねえ、あなた。今度は、日本中の料理を食べ周らない?」

 それから、彼女がそう言った。

「日本中の料理か。いいかも」

「でしょ?」

「東京で?」

「うん、そうよ」

「分かった」

 晴斗がそう言うと、「やったー」と、彼女は言って喜んだ。

「それで、最初はどこへ行くの?」

 それから、晴斗がそう訊くと、「うーん、どこがいい?」と、彼女が訊き返した。

「俺はどこでも。てか、東京に四十七都道府県の料理屋なんてあるのかな?」

 晴斗は疑問に思ったことを口にした。

「あるんじゃないの?」

 彼女はそう言った後で、「ちょっと調べてみるね」と言って、バッグからスマホを取り出すと、すぐに調べ始めた。

「あ」

 それからしばらくして、彼女が声を上げた。

「どうだって?」

「なんかね、今読んだ記事によれば、東京に四十二都道府県の料理屋しかないみたい……。」

「四十二か。じゃあ、全部はないんだね」

「うん、そうみたい。因みに、ないお店は東京、埼玉、神奈川、栃木、兵庫なんだって」

「へえー。関東四県と兵庫か」

「そうだね」

「じゃあ、それ以外の県はあるんだね。まずは、王道の県から攻めるか?」

 晴斗がそう言うと、「王道の県?」と、彼女が訊いた。

「そう。北海道とか、沖縄とか、大阪辺りなんてどう?」

「うん、いいと思う」

「よし! じゃあ、まずは北海道から行くか」

 それから、晴斗がそう言うと、「うん」と、彼女が頷いた。

 そして、京都旅行から帰った一週間後の月曜日。

その日は、彼女の経営しているフランス料理店が定休日であったので、その日の夜に二人は北海道料理を食べに行くことにした。

新橋駅から徒歩三分の所に、そのお店はあった。

午後六時半頃、店内に入り、晴斗たちは年配のスタッフの女性に席を案内される。席に着き、二人はメニューを眺めた。

「ジンギスカン、旨そうだな」

 晴斗がメニューを見て言った。

 そのお店では、北海道グルメの一つである「ジンギスカン」が食べられるのだという。晴斗がネットで北海道料理を調べた際に、ジンギスカンが出てきた。それを見た晴斗は、ジンギスカンが食べたくなった。「ジンギスカンはどう?」と彩乃に訊くと、「いいわね」と彼女は答えた。

 早速、晴斗は生ビールを二つとそのジンギスカンを注文した。

 それから少しして、生ビールが到着したので、二人で乾杯した。

 晴斗はビールを一口飲む。そのビールは冷えていて、美味かった。彩乃も一口飲む。

「失礼します」

 年配の女性店員がそう言って、大きなフライパンを持ってテーブルに置いた。それから、その女性店員は鍋に火を点けた。

「お待たせしました」

 それから今度、その店員はジンギスカンの肉と野菜を持ってきた。

「今からお作り致しますね」

 その店員はそう言って、肉のお皿に乗った牛脂を菜箸で取り、フライパンにまんべんなくそれを塗った。それから、ジンギスカンの肉を半分くらい真ん中に乗せ、炒め始めた。その後、もやしやニンジン、ピーマンなどの野菜たちを手でつまみ、肉の周りに乗せて、軽く炒めた。

「お肉に火が通れば、もう食べられますよ」

 それから、店員は笑顔でそう言った。

「分かりました」

 晴斗がそう言うと、「では、ごゆっくりどうぞ」と彼女は言って、その場を立ち去った。

 ジンギスカンはとてもいい匂いがしていた。そろそろ肉が焼けてきた頃合いだった。

「もう食べられそうね」

 彩乃がそう言った。「うん」と、晴斗は頷いた。

「いただきます」

 彼女はそう言って、鍋の肉に箸を伸ばした。それから、彼女は肉をふうふうして、口へ放り込んだ。

「どう?」

 晴斗は訊いた。

「うん、おいしい!」

 彼女は嬉しそうに言った。

「本当?」

 それから、晴斗も焼けた肉を取り、一度ふうふうしてから口へ運んだ。噛むと、ミルキーなうまみと味付けされたタレの甘さを感じられた。

「ホントだ! うまい!」

 晴斗もそのおいしさに絶賛した。

「野菜ももういい感じじゃない?」

 それから、くたくたになった野菜を見て、彼女が言った。

「そうだね。食べよう」

 そう言って、晴斗は今度、野菜だけを掴んでそれらを食べた。ジンギスカンのタレの味が少しするだけだった。

「一緒に食べると美味しいんだよね」

 それから、彼女がそう言って、肉と一緒に野菜も取る。そして、お肉をふうふうしてから野菜と一緒に食べた。

「うん、いい感じ。おいしい」

 彼女はそう言って、笑顔を見せた。

 その後、晴斗も肉と野菜を一緒に食べた。一緒に食べると、おいしいのはもちろんで、先程より肉の独特の味や臭みが気にならなくなった感じがした。

「本当だ! うまいうまい」

 それから、晴斗はすぐにビールを飲んだ。ビールで追いかけると、さらに美味しくなった気がした。晴斗は幸せを感じていた。

 一通り食べ終えて、二人は残っていた肉と野菜を先ほどの店員がやったようにして焼いた。

 ビールを飲み干した晴斗はメニューを見る。札幌のビールを見つけた晴斗は、それを注文した。その後、彩乃もビールを飲み切ると、彼女も同じビールを注文した。

 すぐにそのビールがやって来た。

ちょうど肉も焼けてきたので、二人でそれらを食べた。それから、二人は札幌のビールを飲む。そのビールも美味しかった。

食べ終わった頃には、午後八時を過ぎていた。晴斗は満腹になった。彼女も同じ様であった。それから、会計を済ませて、二人はそのお店を出た。

「おいしかったね」

 店を出て、彩乃が言った。

「うん、旨かった」と、晴斗は満足して言った。

それから、二人は駅まで歩いた。

「一県目の北海道は制覇だね」と、彼女が言った。

「うん」

「次は、どうする?」

 それから、彼女がそう訊いた。

「次は……。」

 晴斗はそう呟いた後、一度黙った。

――次は、どの県を食べようか? 

そう考えながら、二人で駅までの道を歩いた。

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