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第三十九話 わ、わた、わたしじゃありません。

~登場人物紹介~

【望月卯乃】主人公、17歳高校生、いじめられっこ、卯の化身。

【望月武雄】卯乃の父、和菓子屋を営む。

【望月達也】卯乃の弟、漫画家志望の中学生。

【猿渡花子】主人公をいじめる猿の化身、スポーツ勉強万能の委員長。

【鳥居 翼】猿渡の幼なじみで無二の親友、酉の化身。

【犬飼風美】猿渡を信奉する同級生、犬の化身。

【猿渡葉子】猿渡花子の母。

【上終智巳】卯乃達の担任の先生。

【六条宮玄仁】卯乃達の学校の理事長。

【辰巳黄一】吉祥院高校の生徒会長、辰の化身、黄竜の使い手

【 鬼 】人の心の中の世界に棲み着く生物。心世界でも現実世界でも人を食べ、人の心を支配して、人に悪事を働かせる。人から人へ感染する。

【ぷるるん戦士】12方位神の使徒である神獣によって、超能力を与えられた神の化身。鬼退治が仕事。

【望月卯乃】

わ、わたし、ちがう。

なんにもしてない。

わ、わたわた、わたし、無実だよーーー!

ウ、ウサギさん。

弁護して、わたし犯人じゃないよね。


【ウサギ】

そうだな。


挿絵(By みてみん)


【鳥居翼】

お待たせ~。


▼その時、頭上から声がした。

ぷるるん戦士に変身した鳥居翼だった。


【猿渡花子】

翼、早っ。


【鳥居】

飛んできたからね。

わあ、風美~、生きてたんだ~。


【犬飼風美】

うん、心配かけたね。

それより翼、大変。

この大事件の犯人わかったよ。


【鳥居】

えっ?本当?誰なの?


【犬飼】

ある意味、尊敬ものよ。

なんと、望月さんが犯人でしたー!

ぱんぱかぱ~ん♪


【鳥居】

うそっ。

望月さん。あなたのせいだったの?

ぷるるん戦士的な力で?


【卯乃】

ちがう~ちがうよ~。


【猿渡】

さ、冗談はおいといて、

望月さん、達也君は?


【卯乃】

え?達也?

あれ?いない。

なんで?

え?まさか達也が犯人?


【猿渡】

この家でパソコンいじれそうなの、

達也君だけでしょ。

犯人かどうかわかんないけど、

話聞かんと。


【卯乃の父、武雄】

いや。わたしも一応店の売り上げ

パソコンで管理しとるけど。


【北大路警部】

お父さん、残念ながら最も容疑が高いのは達也君です。

これは捜査令状です。

失礼ながら、家の中を捜索させていただきますよ。

おい中村巡査。

君はここに待機して、

何かあったら本部に無線連絡。ええな。


【中村巡査】

はい。


【猿渡】

わたし達も行きます。


【北大路警部】

君たちはここにおんな。

達也君はもう、この前の先生みたいに、

バケモノになっとるかもしれへんのやで。



▼同行を止められて真剣な表情になる卯乃たち。

見つめあいながら猿渡が口火を切った。



【猿渡】 

みんな。


【全員】

うん。

プルルン、クプルプ、チャマヘス、バカム、変身。



▼卯乃、猿渡、犬飼が同時に変身の呪文を唱えた。

すると、輝く光と風の中から、美しいぷるるん戦士が現れた。

卯の化身の卯乃。

猿の化身の猿渡。

犬の化身の犬飼。

そして飛んで駆けつけた鳥居。

全員想いは同じだ。


【猿渡】

わたしたち、

正義の味方ぷるるん戦士ですよ。

お力になれます。


【北大路警部】

頼もしいな、ほんなたのむわ、助けてくれ。


【卯乃】

お父さん、おばあちゃん、

達也必ず連れて帰ってくるし、

待っとってね。


【武雄】

卯乃。


【卯女】

卯乃。まかせたで、望月の女の強さ。

見せてくれ。


【卯乃】

うん。

警部さん、達也の部屋は2階の奥です。


【北大路警部】

よし行こう。



▼北大路警部を先頭に卯乃達は家の中へ入っていった。

▼一方、辰巳の五竜たちは、比叡山の封印を破って京都の街中に出現した無数の鬼と激しい空中戦を演じていた。


▼竜の化身辰巳五竜が一人、辰巳 たつみげんは黒竜を操る。

黒竜は水脈を司り水を武器にする。


玄の操る黒竜に、無数の鬼が襲いかかってきた。

その鬼の姿、さしずめ人ほどもある巨大な蚊。

迎え撃つは、いかめしい漆黒の竜にまたがる玄。

長大な長刀をふりかざす。

あまりに長く、あまりに鋭いその刃は、

激しい水流によるものだ。


一振りすれば、たちまち数十の鬼が墜落してゆく。

鬼の血と水の刃のしぶきを浴びて、

月光がその姿を照らす。


▼辰巳五竜が一人、辰巳蒼太たつみそうたは青竜を操る。

青竜は木脈を司り植物を武器にする。


巧みに青竜を操る蒼太。

無数に散らばる鬼の大軍を、

引き付けては引き離し、

引き離しては引き付けて、

縦横無尽に飛び回る。


気がつけば、天空いっぱいに散らばっていた鬼の大軍が

夏の蚊柱のように一つの群れになっていた。


▼そこへ地上から駆けつけた赤竜。辰巳紅介たつみこうすけ

赤竜は火脈を司り火を自在に操るまさにドラゴン。

好戦的に輝く赤い瞳。

荒ぶる息はすでに炎をちらつかせている。


千載一遇の好機。

赤竜は、青竜が作り出した鬼の蚊柱にむかって、

下から一気に火炎を吐き出した。


轟く炎の轟音。灼熱の風。

その業火に焼かれる鬼の軍団は、阿鼻叫喚の渦となった。

黒い煙の尾を引きながら、

次々地上へ墜落してゆく鬼。


▼これら無数の鬼を生み出すは、

後ろに控える子鬼。

子鬼とはいえ、その体格はおよそ10メートル。

雑魚の鬼とは段違いのまさに強敵。


▼それに挑むは、辰巳五竜が一人、白竜を操る辰巳秋彦たつみあきひこ

五人の中で最も躰が大きな秋彦。

その大きな躰にしても不釣合いに巨大な鉄槌を持つ。

白竜は金脈を司り、金属を自在に操る竜だ。

重厚長大な鉄槌も秋彦が持てば体の一部にすぎない。


雄叫びを上げて子鬼にその鉄槌を振り下ろす秋彦。

しかし巨大な子鬼は以外に素早く、秋彦の鉄槌を軽くかわした。

それに比べ、大きな動作で戦う秋彦と白竜に、

子鬼が生み出した無数の蚊のような幻鬼が襲い掛かる。

瞬く間に全身から出血をする白竜と秋彦。

それでもなお、恐ろしい形相で子鬼を睨む秋彦。

まとわりつく幻鬼にかまわず次の一撃を繰り出すべく体勢を立て直す。


▼そこへ辰巳五竜の首領、黄竜が使い手、辰巳黄一たつみこういちが現れた。

黄竜は地脈を司り、大地の波動を自在に操る。

黄一は黄竜の上に立ち上がり両手をかざした。

黄一に襲い掛かる無数の幻鬼。しかし黄竜の素早い動きについてゆけない。


黄一が、そのかざした手の向こうに巨大な子鬼を捉えた。


【黄一】

テ・ペヨ・ヴォーター


▼黄一が渾身の声量でそう叫ぶと一瞬視界が揺れた。

そしてその手から放たれた強力な大地の波動が一気に子鬼にぶつかった。


重厚な装甲のような子鬼の体にヒビが入り、

その動きが一瞬静止した。

その瞬間、白竜にまたがった秋彦が巨大な鉄槌を振り下ろす。


【秋彦】

いやぁっ!


ドガアァァン!


▼砕け散る子鬼。

それと同時にその空間一帯を支配していた幻鬼が、

まさに幻のごとくに消えた。


しかしそれは侵入してきた鬼の一部にすぎない。

すぐさま別の子鬼が繰り出す無数の幻鬼が、

次々と打ち寄せる怒涛の波のように辰巳五竜に襲い掛かってきた。

撃ち漏らした鬼たちは京都の町を空襲している。

地上を侵攻している鬼は空中の鬼よりさらに数が多い。


逃げ惑う京都の街の人々。

その中にも、落書き鬼に感染し、

燃え盛る街の中で一心不乱に落書きをする人々が少なからずいる。


【紅介】

雑魚ばっかだけど、数が半端じゃあねぇ


【蒼太】

とても地上の鬼までは手がまわりません。

鬼門にいる他の十二使徒を回してもらいませんか?


【玄】

辰巳本家のほうも心配だ。ここだけにかまっていられないぞ。


【秋彦】

黄一、ここは俺たちにまかせて助けを呼んできてんか。


【黄一】

いやだめだ。

どれだけこの街に犠牲が出たとしても、ここは俺たちだけでくい止める。

比叡山の結界を破って出てきたこいつらは、

今世間にはびこってる落書き鬼由来の鬼じゃない。

鬼門の戦力を割いて、もし鬼門が突破されたら、

世界が滅ぶ。


【蒼太】

確かに。こいつら鬼門の別動隊ってところでしょうね。


【紅介】

なんだよ。

鬼門戦争と落書き鬼事件が同時進行してるって事?

これ全部あの筋肉バカのスサノオが書いた筋書きかよ。

できすぎじゃね?


【秋彦】

偶然じゃろ。


【黄一】

たぶんな。落書き鬼事件に便乗したんだと思う。

或いはアマテラスの奸計かもな。


【紅介】

ハァ~。あっちの神様は単純でいいね。

こっちの神様はどこまで俺たちの事考えてくれてんだか。


▼戦いながら会話を続ける辰巳五竜の戦士。

徐々に深手を負い始めた。


【黄一】

とにかくみんな、辰巳五竜の初陣を華々しく飾ろうぜ。

絶対みんな生き残って、神様たちに人間のしぶとさを見せつけてやろう。


【全員】

おう!



▼まさに雲霞のごとく押し寄せる鬼の軍団。

迎え撃つは5人の竜の戦士。

あちこちで火の手の上る京の街からは黒い煙が立ち上る。

晴れ渡っていた月夜はその煙で覆われ、

炎の照り返しを受けて不気味に赤く染まっていた。



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