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第三十六話 上終先生の正体

~登場人物紹介~

【望月卯乃】主人公、17歳高校生、いじめられっこ、卯の化身。

【望月武雄】卯乃の父、和菓子屋を営む。

【望月達也】卯乃の弟、漫画家志望の中学生。

【猿渡花子】主人公をいじめる猿の化身、スポーツ勉強万能の委員長。

【鳥居 翼】猿渡の幼なじみで無二の親友、酉の化身。

【犬飼風美】猿渡を信奉する同級生、犬の化身。

【猿渡葉子】猿渡花子の母。

【上終智巳】卯乃達の担任の先生。

【六条宮玄仁】卯乃達の学校の理事長。

【 鬼 】人の心の中の世界に棲み着く生物。心世界でも現実世界でも人を食べ、人の心を支配して、人に悪事を働かせる。人から人へ感染する。

【ぷるるん戦士】12方位神の使徒である神獣によって、超能力を与えられた神の化身。鬼退治が仕事。



▼ここは昨日の高野川での戦いで重症を負った

卯女と犬飼と上終先生が入院している病院。

大学付属の大きな病院だった。

望月武雄、卯乃、達也、

猿渡葉子、花子、

そして途中で合流した、鳥居翼の6人は、

武雄が運転する店の配達用のワゴン車で、

お見舞いにやってきた。

▼卯女の病室の近くまでやってくると、

なにやら慌ただしい雰囲気。

看護士が小走りで出入りしている。

▼武雄たちが病室に入ると、

卯女の主治医の男性の医者がいた。


(武雄)

先生。どうかされましたか?


(主治医)

えっ?あ、今取り込み中ですので。


(武雄)

わたくしこの病室でお世話になってる、

望月卯女の息子の武雄です。


(主治医)

あ、息子さんですか!

ちょうどよかった。

昨日は電話でどうも。

あの、大変なことになってまして。


(武雄)

はあ。


(主治医)

お母さんの卯女さんが、

今朝から行方不明なんです。

まだ一人で出歩けるような状態じゃないのに。


▼その病室に看護師が入ってきて、

主治医に声をかけた。


(看護師)

先生、先生。


(主治医)

ん?


(看護師)

こちらの卯女さんと一緒に入院した犬飼さんも見あたらないって、さっき連絡が。


▼その会話を聞いて驚く猿渡と鳥居。


(猿渡)

えっ?風美が?


(主治医)

なんと。

あの子こそ絶対安静なのに。

とても動けるような体じゃない。

そう遠くへは行けないはずだから、

手の空いてる者は手分けして探しなさい。


望月さん、そういう事ですので、

もしそちらに本人から連絡がありましたら、

すぐ病院に知らせてください。


(武雄)

わかりました。


(主治医)

君、君、他に居なくなった患者がいないか至急調べてくれ。


(看護師)

はい。


▼そう返事をしてこの看護師は病室からあわただしく出て行った。

▼看護師に続いて部屋を出て行こうとした主治医に

心配そうな顔で卯乃がたずねた。


(卯乃)

あの、上終先生は?


(主治医)

かみはて・・・ああ、一緒に運ばれてきた

高校の先生ですね。

この病棟の5階で今面会謝絶になってます。


(卯乃)

面会謝絶って、そんなに悪いんですか?


(主治医)

容態は安定してます。


(卯乃)

そうですか。

でもお父さん、どうしよう。

わたしたちもおばあちゃん探す?


(武雄)

そうやな。


▼その時、病院の中でどよめきが起こった。

患者や職員がつぎつぎに窓辺に集まり、

病棟裏の庭をのぞきこみはじめたのだ。

▼卯乃たちのいる病室に

またさっきとは別の女の看護士があわてて入ってきた。


(看護師)

先生!大変です。


(主治医)

今度はなんだね。


(看護師)

この病棟の裏庭に不審な集団がたくさん集まってます。


(主治医)

はあ?

不審な集団?


(看護師)

この病室の窓からも見えます。


▼その看護師は叫ぶようにそう言うと、

窓辺のカーテンを開き主治医に確認するよううながした。

▼窓から下の様子をうかがう主治医。

卯乃たちもその後ろから眺めた。


(卯乃)

なにあれ?

宗教?


(主治医)

なんだあれは。

患者が居なくなったり、

不審者が現れたり、

どうなってるんだいったい。

とにかく警備の人間に言って帰ってもらいなさい。

あと、わたしにいちいち報告するな。

わたしは自分の患者のことで精一杯なんだ。

部長に言ってくれ。


(看護師)

はい。すみません。


(主治医)

それでは望月さん。

わたくしは忙しいのでこれで。

お母さんの事は発見されしだいご連絡いたします。

もしそっちで行方がわかりましたら、

連絡。お願いしますね。


(武雄)

はい。わかりました。


▼あわただしく人が行き交う病院内。

その雑踏のなかに主治医と看護師は消えていった。

▼事態が飲み込めず、父に問いかける卯乃。


(卯乃)

お父さん・・・。


▼猿渡の母に振る父。


(武雄)

猿渡さん・・・。


▼娘に振る母。


(葉子)

花子・・・。


▼鳥居に助けを求める猿渡花子。


(猿渡)

翼・・・。


▼卯乃にお鉢をまわす鳥居。


(鳥居)

望月さん・・・。


▼弟の達也に押し付ける卯乃。


(卯乃)

達也・・・。


(達也)

僕にどうしろって言うんだよ・・・。


▼卯乃たちのいる病棟は北病棟と呼ばれていた。

今、この北病棟の北側の空き地になった庭に、

たくさんの群衆が押し寄せていた。


群衆は白装束でいくつもの黒い昇り旗を掲げていた。

その黒い旗には白い文字で、

「白蛇大社」あるいは、

「白蛇大権現」と書かれていた。

群衆は上を見上げ口々に、

「白蛇大権現様ー!」

「南無大慈白蛇大権現様ー!」などと叫んでいた。


その目線の先は、5階の上終先生の病室に向けられていた。



▼その上終先生の病室。

ドアには面会謝絶の札がかかっている。

病室では昏睡状態の上終先生がベッドの上で眠っている。

その傍らに、卯乃たちの通う修学院高校の理事長兼、宮内省皇宮警察本部長であるあの男。

六条宮玄仁ろくじょうのみやくろひとがたたずんでいた。

六条宮の視線は、窓を通して、眼下に集まった群衆に向けられていた。


挿絵(By みてみん)


(六条宮)

先生。やはりそうでしたか。


▼六条宮はそうつぶやくと、

見下ろす視線をベッドの上の上終先生に向け、

独り言を続けた。


(六条宮)

高野川での一件。

あの程度の鬼が、この現世に出現できるほどのエネルギーを、

そう簡単に手に入れられるはずがない。

また、先生も瀕死ながらこうやって生きながらえていらっしゃる。

お人が悪いなぁ。


▼その時病室のドアが乱暴に開いた。

開いたドアの向こうでは、

病院職員と警備員が、

庭に集まった群衆と同じ装束の屈強な男たちによって

床や壁に押し付けられ、制圧されていた。

その脇をすりぬけ、

一人のかくしゃくとした老人が悠々と上終先生の病室に入ってきた。


▼老人は六条宮に話しかける。


(老人)

抵抗しても無駄です。

このお方を迎えにまいりました。

わが教団にもいい病院があります。

今後はそちらで治療をいたしますので、

どうか抵抗なさらないでください。


(六条宮)

抵抗はしないが、

今この男を動かせば死ぬぞ。


(老人)

大権現様は不死身です。


(六条宮)

不死身ならば、

先代はどうした?

まだ生きているのか?


(老人)

御仁は何者か?

病院関係者ではないな。


(六条宮)

たわけ。

おまえらごとき哀れな求道者に、

やんごとなきわたしが

名乗るものか。


(老人)

やむを得ぬ。

手力男たぢからお衆。

この男を抑え、白蛇大権現様をお連れするのだ。


▼部屋になだれ込むいずれも大男達。

六条宮に襲いかかった。

▼大男たちが六条宮に触れるまさにその瞬間。

喝を叫ぶがごとくに六条宮が声を発した。


(六条宮)

月っ。


▼その声を聞いて老人が叫んだ。


(老人)

待てっ。引けっ。控えよ。


▼大男たちは動きを止めた。


(老人)

そのおかしな格好。ものの言いよう。

もしや御仁はツキヨミノミコト。

まさかこのような形で邂逅するとは。


(六条宮)

おかしな格好とは無礼な。おまえらだってそれが普段着なのか?

ほほ、70年前、大局を見ずしてわたしの元から逃れた白蛇の信者ども。

あの戦いで霧散した蛇の神がようやく転生した事に、さっそく気づいたか。


(老人)

大権現さまは我らの拠り所。

神が人間の営みに口をはさまないでもらおう。


(六条宮)

この男に宿りし霊もまた、わたしと同じ神だ。

自分達に都合のよい神だけ信じる愚行が、

この世界にどれほどのいさかいを生んでいるのか。

まだわからんのか。


(老人)

問答無用。

かかれいっ!


(六条宮)

あらっ?

わたしは抵抗しないといったではないかー!


▼老人の号令でいっせいに六条宮に襲い掛かる男たち。

あっさりパンチが入る。


バキーッ!


(六条宮)

あ痛ーっ!


▼六条宮は、あっさり殴り飛ばされ、

そのまま昏睡状態の上終先生の上に落下した。


(上終先生)

げふっ!


(老人)

大権現さまっ!


▼叫ぶ老人、しかしその時、上終先生が目を覚ました。


(上終先生)

かはっ。ごほっ、ごほ。

な、なんでしょう。なにがあったんです?

重たい。

あなた誰ですか?

みなさんは?誰?


▼上終先生にのしかかったまま、先生に話しかける六条宮。


(六条宮)

上終先生、思ったよりお元気そうでなにより。

はじめまして。

わたくし修学院女子高校の理事長の六条宮です。


(上終先生)

お、重いです。


(六条宮)

これは失礼。


▼ベッドから降りる六条宮。


(上終先生)

理事長って、うちの学校公立ですよ。

理事長なんていませんよ。


(六条宮)

いるんです。

わたくしはこう見えても皇室に関係のある者です。

我が校は今でこそ公立ですが、

明治の中ごろまでは皇室の皇に立てると書いて

皇立だったんですよ。

いまでも理事長には皇室の関係者がなることになってるんです。

建前上公立ですからナイショですけどね。


(上終先生)

じゃあ、あなたはわたしの上司ですか?


(六条宮)

そうです。


(老人)

白蛇大権現様。

お目覚めあそばされましたか。

まさに奇跡。

大覚南無大慈白蛇大権現様じゃー!


(上終先生)

あなたは誰ですか?


(老人)

わたくしは・・。


▼そう言いかけた老人に口を挟む六条宮。


(六条宮)

先生。

先生は学校をお辞めになりたいですか?


(上終先生)

なぜそんな事を。

そうか、今回のわたくしの不祥事のせいですね。

いたしかたありません。

警察沙汰にまでなりましたからね。


(六条宮)

それは許してあげます。

先生のお気持ちを聞いているのです。


(上終先生)

わたくしは辞めたくなんかありません。

教師を続けられるものなら続けたいです。


(六条宮)

よろしい。お続けなさい。

老人。聞いたであろう。

まさかお前ら、自分たちのアイドルの言うことを

ないがしろにしないだろうなぁ。


(老人)

そんな。

大権現様。我々は永く大権現様のご降臨を待っていたのです。

さあ、我ら白蛇衆の指導者となって、

我らを導いてください。

まさに今、この日本には暗雲が立ち込めております。

先の大戦のような悲劇はごめんです。

我らの村からもたくさんの若者が出征し、戦死しました。

大権現様。我らをお守りください。


(上終先生)

申し訳ありません。

誰かとお間違いになってらっしゃると思います。

わたくしはそのような名前ではございませんし、

お力になれそうもありません。


(六条宮)

ほれ見たことか老人!

わかったら、一族郎党を引き連れて、

この場からさっさと立ち去れいっ。


(老人)

やむを得ぬ。

ツキヨミの、神など空気みたいなものだと思っておったが、

人間の鉄槌が通用することがわかったことは収穫であった。

お前らの思惑どうりには決してさせん。


(六条宮)

なんだか立派なお言葉に聞こえるが、

世界が戦火に没しても、

自分たちだけは助かりたいのだろう。

神はな、えこひいきしないのだよ。


▼六条宮を睨みつけ悔しそうな表情を浮かべる老人。


(老人)

・・・・・。

引けっ。引けーっ!


▼老人の号令一下。

病院に集結していた謎の信者たちは何処へとも無く消えていった。

この老人の名は吉川比呂家。

山口県岩国地方に古くから伝わる白蛇信仰の現主宰者で、

白蛇大社の禰宜ねぎといわれる役職の人物。

白蛇大社の宮司には代々生き神である巳の化身が就いており、

ここ70年空席になっている。


▼一方、行方不明になってしまった卯女と犬飼。

結局この日は夜になっても見つからなかった。

京都の街はますます落書きに汚染され、

その被害は関西一帯におよんでいた。

「落書きに触ってはいけない」それは都市伝説として、

いまや全国に広がっていた。



ぷるるん戦士奮戦記【日本諸鬼】エンディングイメージテーマ♪

http://www.youtube.com/watch?v=AHJ2T0EeiLM&feature=channel


~月読神社のおみくじで運だめし・卯乃の声も聞けちゃう~

ぷるるん戦士奮戦記「日本諸鬼」オフィシャルサイト !

http://www.ms-06zaku.com/pururun/

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