5.実は誘拐?
第一章開始です。
ゆるゆる更新していきますので、楽しんでいただけると幸いです。
アマリアは、暇だった。
呪われていたとはいえ、聖剣に喰われたアマリアは、感覚的には聖剣とほぼ一体化していた。
もしくは本人がそう思っているだけで、実は聖剣の地縛霊のようになっているのかもしれない。
ともかく剣から離れられないのだ。
観光名所と化した聖剣。
湧き出る聖水を汲んでいく人々、感謝しに来る人々。
聖水の原因はクラウス王崩御の際の自分の涙が基となっているようだった。タイミング的に。
しかし、すでに自分は涙を流していない。なのに聖水は止まらない。
最初こそ感謝されて戸惑ったり照れたりもしたが、最早自分関係なくない?と思わずにはいられなかった。
しかしなんなのだろう、この聖水。
どうやら自分が泣いていた最初の聖水よりは効果が薄くなってしまったようで、ケガや病気を治すような代物ではなくなったようだが、それでも体力回復の効果を発揮しているらしい。
今では、自己免疫力を高めて傷や病気の治療や体力回復を助けるスーパー補助ポーションとしての地位を確立したようだ。
昼に訪れて感謝を述べていく人々を見ると心が和む。
だがしかし、ごくまれに夜に来る者もいる。そういった者たちは大体において────
酔っている。
「おぇぇぇぇぇぇっ」
──ぎゃぁぁぁああ!人の前でなにすんの!あっち行ってー!!!
「ううう。あぶねぇ。あやうく飲み水にだしちまうところだった。水は大切にしないとなぁ」
ここは厳密には王宮の外側とはいえ、王宮庭園の一部であることに変わりはない。
こんな失礼な輩は普通はいない。だが、ごくまれにいたおかげで、夜間は立ち入りが禁止された。にもかかわらず、この男は侵入を試みたらしい。見つかったら良くても投獄だろう。
「ふう。飲み明けの水は聖水に限るねぇ」
男は気にするでもなく水を飲む。もちろん飲み明けに聖水を飲む習慣などあるはずもない。言ってみたかっただけだ。
男は2日前に王都に立ち寄っただけの流れ者、いわゆる冒険者だ。
聖水の噂を聞きつけて、旅のお供に少し汲んでいこうと思って立ち寄り、酒を飲んだついでに飲んでみようと思い立った。ただそれだけの話だ。
だが、昼には気づかなかった金属板に目が向いた。
『この聖剣を抜くことが出来たものは、聖剣騎士の称号を与えると共に王宮の騎士として召し抱える』
「あ?聖剣を抜いたら、抜いたもんの物だろうが」
男の剣はかなりボロボロだった。ここ最近、魔獣が増えてきたこともあり、いっそもう少し良い剣に買い替えるべきかとも思っていたところだったのを思い出しにやりとした。
「王宮の騎士には興味ないが、良い剣をくれるってぇなら遠慮することないよな?」
男はよいしょ、と言って無造作に剣を抜いた。
「ん?随分簡単に抜けるな。なんだよ偽物かぁ?」
この王都の人間ではないがゆえに、男は知らない。
間違いなくこの剣こそが50年以上も誰にも抜くことができなかった聖剣であることを。
そして酔っぱらいだ。簡単な矛盾にすら気づかない。
「そりゃこんなところに放置じゃ、さすがに偽物か」とブツクサ言いながら、月光にかざして目を眇める。
「見てくれは悪くねーんだがな。ま、いいや。アレよりましなら」
明日にでも研いで試し切りでもしてみるか、と思いつつ男は、剣を片手に宿へと帰っていった。
──ちょっとー!?ちょっとまって!!
結果として、人知れず、アマリアは誘拐された。
旅立ちました(笑)
(ほんとか?)