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悪役令嬢は死んで観光名所になりました。  作者: ひるねころん
第一章 旅立ち
20/24

19.始まりはいつも予定の外から?



「ほら、早く早く~」

「あーはいはい」


 今日は騎士団に行く日だ。

 今日のアマリアは少年のようなパンツルックでご機嫌に先を歩いている。


「あんなにはしゃいじゃって。そんなに嬉しいかねぇ?」


 アマリアのご機嫌の理由は、昨日の会話までさかのぼる。






「え?訓練したい?」

「そう。ゆくゆくは剣術もやりたいけど、とりあえずはせめて護身術と、できれば魔術の基礎くらいはやりたいわね」

「剣術は……いらなくないか?どうせお前が剣になるだろ?」

「何かあったときのためにやっておいた方がいいかなーと思って。ほら、剣が剣術のレベルを上げたら、聖剣としてもレベルアップするかもしれないじゃない?」


 ルーカスクローは「え?その辺どうよ?」と疑わしい声でデューンに尋ねる。


「うーん。どうだろう?やってみないと分からないなぁ。ほら、人体持つの初めてだから」

「それに魔術は、嬢ちゃんが学生時代にやってるんじゃないのか?」


「それがねぇ、私が学生だったころは、まだ魔術を教えるようになってから100年足らずで出来ることも少なかったのよね。今ならもう少しやれることもあるんじゃないかと思って。ほら、昨日デューンが「魔力交換」って言ってたじゃない?生きていたころには聞いたことのない単語だから昔より研究が進んでるんじゃないかと思って」


 アマリアが知っている、他へ魔力を移す行為は『魔力付与』くらいだ。

 魔力容量の大きい鉱物に対して魔力を付与することを指す。

 鉱物と言っても、だいたいは宝石だ。

 その辺の石では、容量が足りず崩壊してしまうのがオチだ。


「まさか、その付与した石を交換、なんてオチじゃないわよね?結局、魔力交換ってなんなの?」

「え?」

「え?」


 デューンから変な返事が返ってきて、思わずオウム返しに聞き返してしまった。

 自分で言った単語に対してその反応はどうなんだろう。


「知らないの?」

「────?よく分かってないみたいだ。魔力は付与しかできない。自分から吸い取ることはできない。だけどお互いに付与することで交換はできる」

「……という事実のみを知っているってこと?」

「そうみたいだね」


 よく考えるとデューンの知識の大元も謎だ。

 先代が見聞きしたことを知っているのはまだ分かる。だが、これはそうではないらしい。


──製作者の知識、なのかしら?でも私が生きていたころには教えられていない知識が、それよりずっと前の聖剣の制作者にあるものかしら?


 よくわからない謎だが、とりあえず解明する手段もない今は置いておくことにした。


「となると、やっぱり魔術に関しても少しは新しい知識を習得しておきたいわねえ」

「それ、1日でどうにかなる話じゃないぞ?」

「う、うーん。騎士団で話を聞いてみて、場合によっては滞在を伸ばしてはダメかしら?」

「まあ、急ぐ旅じゃないし……時々、郊外に出て魔獣退治しておえば食い扶持は稼げるか……」

「滞在伸ばすっていったら、城に滞在するように言われるんじゃない?僕はいいけどね。城の料理食べてみたいし」


 デューンはここ2日で食べることの楽しみを覚えた。

 太る心配がいらなくなったアマリアが、食を謳歌しまくっているのも原因の一つかもしれない。


「うー。城かぁ。とりあえず訓練計画と滞在期間次第だな。その時言われたら考えるか」


 ルーカスクローは城滞在にあまり乗り気ではないようだ。気軽に動きたいルーカスクローとしては、城はやはり堅苦しいのだろう。


「ふふふ。デュー君、明日が楽しみね!」


 城でも街でも楽しめるアマリアはお気楽に笑った。






「え!?1年?」


 結局、今回の訪問は訓練よりも、今後の相談の方がメインになってしまったが、それでもルーカスクローは騎士たちと稽古の真似事は楽しめたし、アマリアも現状把握のために体を動かすことが出来た。

 現状把握が出来たところで、騎士から「ご相談の件について」と話を切り出されたのだ。


「はい。アマリア様の状態を見させていただきました。武術をやるうえでの基礎的なところもそうですが、まず基礎体力、基礎筋力がないのです。これでは数日、いや、一か月やっても付け焼刃にもならないでしょう」


 分かっていたけど現状の冷静な見解がぐさぐさ刺さる。


「魔術の方もそうです。知識については旅の途中でも学んでいけるでしょうが、魔力を操る技術についてはやはり教師がついている状態でされた方がいい。両方の観点でも、最低1年、腰を落ち着けて訓練されてはどうかと……」

「1年かぁ。想定外に長いな」

「ついでと言っては何ですが、こちらからも依頼がございます」


 依頼といえば、契約上、依頼があればこなさなければならなかったことを思い出す。

 依頼(やること)があるのであれば、王都滞在もやぶさかではない。

 ルーカスクローが聞く姿勢を見せたことで騎士は話し出した。


「まず、アマリア様には1年間、特待生として学園に入学していただくのが最も効率が良いでしょう。必須授業もありますがそれは一部で、ほとんどが選択授業です。ご希望に沿えるかと」


 アマリアが頷く。受けるかどうかはルーカスクローへの依頼次第だが、学園に通えるのは悪くない話だった。


「ルーカスクロー様への依頼は、アマリア様在学期間中、学園の剣術の教員になっていただくこと。あとお二人への依頼ですが、現在学園で起きている事件を調査していただきたいのです」

「事件?」

「はい。詳細はお受けいただいた後でお話いたします」


 きっと貴族がらみで極秘に調査したい内容なのだろう。

 ルーカスクローは思いっきり顔をしかめた。

 聖剣がらみで依頼をこなすことばかりを想像していたので、このような内偵じみた、しかも貴族がからむような依頼は想定外だ。


「教える方はともかく、調査はなんで俺に依頼を?こう言っては何だが、もっと向いた人材がたくさんいるだろう?」

「それが、今回のお二人からの相談を聞いて、ちょうどよい、と」

「誰が?」

「……王太合陛下です」


 空気が固まった気配を感じ、ちらり、とアマリアはルーカスクローを見る。


──あ。死んだ魚の目になってる。


「あの、ルーカス?私も1年学ぶことが出来るし、ルーカスも教えることで何か得られることもあるだろうし、いい話だと思うわよ?えーと……」


──どうせそのうち巻き込まれるだろうし。


 アマリアとデューンは同時に同じことを考えた。

 いや、きっとルーカスクローも。

 間髪入れずにがっくりとうなだれるのが見えた。


 こうして、アマリアの短期特待生入学とルーカスクローの教員短期採用が決まった。







もっと後のはずの学園編イベントが発生してしまった……orz


諸事情によりペース落とし気味ですが、なるべくコンスタントにUPしていきたいと思っています。

なるべく……

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