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悪役令嬢は死んで観光名所になりました。  作者: ひるねころん
第一章 旅立ち
17/24

16.5.日常とはまた別の日常(閑話)


か、閑話です(どきどき)

話としてはポイントとなる話を含む(?いや、どうだろ?)のですが、本編からは脱線する話なので「閑話」の位置付けとさせてもらいました。


前回の後書きの「分割しました」って何だったの!なぜここで閑話!?と思われた方、申し訳ありません。

でも、この話、ここで掲載しないと多分お蔵入りしそうだなと思ったので、元々書いていたやつに、追加でメモを文章起こししていたら、ついノリにのって……(;P ちょっと書きすぎました。


内容は、少し暗めのテンションから始まりますが、ちゃんと浮上して終わります。

どうぞ(どうか)お楽しみくださいm(__)m



──王宮──


 聖剣の『使い手』たちとの謁見も終わり、公務もひと段落して、王太合セラフィーナは、ふぅっと息を吐く。


 王太合になってから、本来とは逆に人とのやり取りが増えてしまったが、息子が王位を継いでから10年。聖剣の話がこれで落ち着けば、あとはかなり楽になるだろう。


 公務、特に対人の時は、頭と気持ちの切り替えが重要だ。

 瞬間的に話が進んでいくため、考えてもしょうがない思考(こと)は即座に切り捨ててきた。


 だが、こうして時間が取れると、切り捨ててもつい考えてしまうこともある。




 アマリアを刺した聖剣を、絶対に触ろうとしなかったクラウス王。


──もし聖剣に触れていて、王が『使い手』だったら。


 謁見の最中、何度か頭をよぎっては切り捨てた考え。


 考えても意味がないことだ。

 だがふと思ってしまう。


──クラウス王はアマリア様に再開できていたかもしれない。


 これは感傷だろうか。それとも同情だろうか。


 セラフィーナは目を瞑り、ゆっくりとお茶を一口飲んでしばしの時間、香りと味を堪能すると、目を開けた時には考えを断ち切っていた。


──この件はもう終わり。本当に、考えてもどうしようもないことだわ。


 もしそうだったらどうしたのか、いずれ聞ける日が来るかもしれない、そう思いつつ。


***


 謁見の最中、実は少しだけ、ルーカスクローが、ウラノーの生まれ変わりである可能性も頭をよぎっていた。


 ウラノー自身は、二代目の王の即位三年後に生まれている。


 二代目は初代の崩御に際して即位しているので、当然ウラノーは初代の死後に生まれている。であれば『使い手』は代々生まれ変わりがなる可能性もあるかもしれないと考えたのだ。


 だが、聖剣は選んだのは「なんとなく」だと言う。

 似ているとは思っていないようだ。


──違うと言い切れないまでも、可能性は低い、かしらね。


 できれば、『使い手』は、血筋、もしくは生まれ変わりであることが望ましかった。

 それは決して王室の権威のためではない。




 この世界にも生まれ変わりの概念はある。

 だがそれは、根拠があったり実例があるものではなかった。


 死んだものは、親しいものの近くに生まれ変わる。または、同じ系譜、血筋と魂の相性が良い、といつしか言われるようになった。

 だがこれは、失った者の悲しみを乗り越えるために生まれた方便に過ぎない。少なくともそう言われている。

 それでもいいと、人々が受け入れた古い言い伝えだ。




 それを信じる前提になるが、『使い手』が代々生まれ変わりであれば、ほぼ王家に生まれるだろう。

 魔王の危機に際して、世界中を探し回るのは現実的ではない。

 できれば確証を得たかったが──。


 やるべきことは、ほぼやった。

 口惜しくはあるが、あとは、情報を蓄積して、後の世代に任せるしかないだろう。




 しばらくして、『灰』の隊長から、アノーヒェンの領主の血筋が、初代建国王の双子の兄の系譜である可能性が非常に高い、との報告があった。

 ただし「ほぼ。おそらく」止まり。これ以上の調査は不可能とのおまけつきだ。


 双子の兄と目される者の名前は、コンスタンチン・アノーヒェン


 生年月日は、建国王と同じ。

 双子で生まれたことまでは調査で判明しているが、弟の方はそれ以降、一切消息不明。

 死別か、もしくは養子に出されたか。少なくとも葬式を出した形跡はない。


 今までの報告からも、確かに隊長が言うようにこれ以上の調査は望めないだろう。

 最終報告を聞くに、むしろ十分すぎるほどの成果だ。


 セラフィーナは『灰』の隊長を労い、副隊長の進言どおり休暇を与えた。




***




 『灰』の隊長イェミは、王太合セラフィーナに報告しながら、今回の調査を思い出していた。


 イェミは、隣国の件であるにもかかわらず往復含めて3日という鬼な期限付きの調査報告を、王太合と昔馴染みである副隊長のオラヴィに任せて、隣国の自治領主アノーヒェン家に潜入した。


 イェミが継続して行う調査はルーカスクローがらみではない。建国王の系譜の調査の方だ。

 現『使い手』殿については、我が王太合陛下と帰した副隊長が何とかするだろう。


 だがそれから、結構な時間をかけて、屋敷に死蔵されていた過去の書類を調査したが、ロクなものは見つからなかった。

 これなら、町で産婆が漏らしたという、建国王と同い年の領主が実は「双子だった」って話の方がよっぽど収穫だった。


 その産婆は双子の誕生後、少し経ってから死んでいる。

 皆、腕の良い産婆を惜しみはしたが、老齢だったため誰も疑問に思わなかった。


 だが、これは事実を漏らしたことへの報復と見せしめとみることもできた。


 噂はほっとけば収まる程度の話題性だったが、その日の暮れには町の半数には広まっていただろう。

 すぐに報復しては原因となった噂が強く記憶に残る。だから噂の収束を待った、とか?


 こんなうがった考えをしてしまうのは、職業柄の悪い癖だ。

 産婆はこのあたりの平均寿命をそれなりに超えるほどの老齢だったらしい。

 であればすべては偶然、かもしれない。




 200年以上も経っていたというのに、この噂の残滓が現在まで残っていたのには訳があった。


 この話から20年が経過したころに、この噂を聞いた空想力たくましいやつが架空の英雄譚(しょうせつ)を発表しやがったのだ。

 そいつ、よくやった!お前がいなければこの噂話は残っていなかっただろう。


 初版本には、あとがきに領主の双子説が基になっていることが書かれていたらしいが、時の領主である双子の兄本人が削除させた。

 20歳ころとなると、建国王は現在のヴァロルの地で武功を上げ出した頃だろか。とはいえまだ単なる騎士でしかなく、顔も知られていない。


 何も知らない領主(あに)にとっては、噂のみの単なる醜聞でしかなかっただろう。


 だが、物語好きの間では有名な話になってしまった。

 単に「名誉棄損で削除させた」では済まないくらいに話は広まり、領地内で、英雄譚は空前のブームとなった。

 識字率は意外とあるが買う金がない平民たちのおかげで、初版本の貸し出し(レンタル)が流行り、領地外で売る自信のなかった販売元の根性のせいで、第二版がそれほど多くないまま綺麗に残っているというのも皮肉な話だった。




 そんなこんなで、潜入してからそろそろ半年。


 領主のお屋敷の執事見習いだったはずが有能(やり)すぎて、いつの間にか執事長補佐になっていた。


 何をやりすぎたって、言われたことを何でもハイハイと実行していただけなんだが。

 だんだん面倒くさくなって、ちょっと効率化(しょうりゃく)したりちょっとやり方を変え(てつだわせ)たりはしたが。


 権限は少し増えて出来ることも増えたが、収穫は相変わらず何もなし。しかもやっていることと言えば執事長と副執事長の使いっ走りだ。そろそろ引き上げ時か。


 そう考えていた矢先、寄宿学校に行っている三男が帰ってくるという話があった。

 そろそろ10歳になるので肖像画を描こうかと領主が言っていたらしい。

 そういえば今まで、過去の領主の肖像画を見たことがなかった。てっきり存在しないのかと思っていたが、実はあるらしい。


 屋敷の奥にある歴代の肖像を収めた部屋。通常は家族しか入ることができない。

 滅多に入ることもないため、その部屋は完全に閉じられていた。


 なんとか領主を唆して部屋を開けさせたとしても、入っていいのは領主とその家族だけ。

 いくら何でも掃除くらいしないとマズくないか?と思ったら執事長だけが入って掃除をしているらしい。


 俺は、一縷の望みをかけて、執事長の説得を試みた。


 話して聞かせた内容は、以前聞いた絵画の収蔵の失敗でカビだらけになった話だ。

 そのカビが、人を死に至らしめる、という設定にした。事実は知らん。世界は広いんだし、そんなこともあるかもしれないだろう?

 そこの屋敷に勤めていて、収蔵方法とカビの対策を習得しているので、実際見せてもらえればノウハウを教えられる、と嘘吹いた。

 ついでに旦那様が心配で、と言っておいたが、さて。



 子供だましだったか……とも思ったが、執事長は意外と話に乗ってきた。

 少し手間取ったが、苦労のかいもあって、ようやく肖像画を拝むことができた。


 カビの付着調査と称して、1枚1枚ゆっくり確認する。


 双子の兄と目されるコンスタンチンの肖像画は2枚のみ現存していた。

 幼い頃の家族との肖像が1枚と、結婚時に描かれたものが1枚。系図によればそれから10年と経たずに亡くなっている。


 その肖像は、建国王コンラートの現存する肖像画よりかなり若かったが、とても、よく似ていた。

 いやむしろ、コンラート王の若い頃なのでは?と言っても良いレベルで生き写しだった。


──本人、ってことはありえない。『分け双子』、か?


 『分け双子』

 双子の中でも時々しか現れない、あまりにも似すぎている双子のことだ。

 その似すぎさゆえに、全てを共有した、分け合った子たちと言われており、転じて『分け双子』と呼ばれた。


 それは、ある王家では吉事とされ、また別な王家では凶事とされた。

 だが、結果は変わらない。どちらかが何らかの犠牲になる。

 吉事としている王家ですらそれは変わらない。


 二人に与えられるのは一人分の名前。同じ教育を受け、毎日同じ服を着て、でも人前に出るときは必ず一人。

 これほど完璧な影武者はいない。何しろスペアも本物なのだから。吉事とはよくも言ったものだ。当事者以外の者にとってはそうなんだろうさ。




 アノーヒェン家も、王とまではいかなくても自治領主の家だ。おそらくそのままであればロクな人生は歩めなかっただろうが、幸か不幸か秘密裏に養子にだされた、と考えるのが正解のようだ。それが誰の指示、誰の思惑によるものであったかは別として。


 どの段階でかは知らないが、アノーヒェン家の誰かが建国王コンラートとの関係に気づき、王国が自分の家の物だと言い始めたのだろう。

 双子の兄は早世しているが、子がいたらしいから、もしかしたらコンラート王にアノーヒェン領の相続を持ちかけて王国と併合させ、あわよくば幼子を後継者に、と考えていたのかもしれない。


 王国の公式記録に、建国王の親戚が訪れたという話は聞いたことがないから、当時から「何もしない」奴らだったのかもしれないが。


 とにかく、依頼されていた調査はこれで終了とみていいだろう。

 今までの結果を見てもこれ以上の収穫は見込めない。帰って我が王太合陛下に報告したら、副隊長(オラヴィ)の進言通り休暇でも取るか。





 最終報告からさらにしばらくして、ひょんなところから建国王に親戚が訪れた公式記録がない理由が判明した。


 それは、ほとんど趣味になっていた、『公式ではない記録あさり』で見つけた、門番の日誌で見つかった。



==========

ヴァロル歴〇年×月×日 門番担当:〇〇〇


 突然王が直接やってきて、招かざるお妃候補(ハイエナ)自称親族(ハゲタカ)の一行は門前払いするように、との厳命があった。

 そういえば、お妃候補や知らない親族が入れ代わり立ち代わり現れて、王がうんざりしているという噂を聞いたことがある。


 元々、招かざる客や約束のない訪問者は、門前払いか確認してからしか通さないのだが、わざわざ(ここ)まで来て厳命していくということは、何らかの方法で門を突破されているということだ。確認方法が甘いのか。ちょっとショックだ。


 それにしても、よっぽど嫌だったのだろう。噂で聞く「うんざり」どころの様子ではなかった。

 王が獣人だったら、耳としっぽがしおれているとろこだ。

 ただでさえでも激務でお忙しいのに、建国の王ともあろうお方がハイエナとハゲタカの相手で疲労困憊だなんて涙と同情を禁じ得ない。


 よし。交代の時に確認方法について提案しよう!

 そしてハイエナとハゲタカを絶対通してなるものか!

==========



 当時の激務を予想するに、自称親族に関する記録はわざわざ残さなくて良いとでも言っていたのだろう。そしてこの門番の提案は功を奏したらしい。

 まあ、自称親族が仮に本物で、それを門前払いしてしまったとしても、ハゲタカであることに変わりはないのだから、結果オーライだ。


 こんな勤勉な(おもしろ)門番にたたき出される自称親族(ハゲタカ)を想像して笑いが漏れる。


 それにしても非公式記録はこれだからいい。

 部下が書いている日誌も忌憚なく書かせているつもりだったが、今度からは気分の赴くままに書くように言ってみよう。

 どうせ報告書は別に提出するのだし、何も問題ない。


 それに──


 (イェミ)は、にかっと口角を上げ、騎士団の倉庫を後にする。


──その方が絶対面白い。




 『仕事は楽しく』がポリシーの男、『灰』の隊長イェミ、間もなく29歳。


 11歳年上で、『人生は楽しく』がポリシーの副隊長オラヴィとはとても気が合い、『灰』の黄金時代を築いたが、その部下たちは「隊長たちの尻ぬぐいが一番大変で一番楽しかった」と言っていたという。






かなり今更ですが。


拙作の文章、主観の切換えを手動ではなく、自動切換えで進行させてもらっています。

何のことかと言うと、〇〇氏視点 とかをやらずに、文脈で察してね!というパターンを採用しているということです。

分かりづらかったらごめんなさいとしか言いようがないですが、この方針この書き方でいい文章が書けたらいいなぁと精進中です。今後とも懲りずにお付き合いくださいませ。


それはさておき、今回の閑話はそれに該当しません。一人しか出てこない話×3話構成なので、当人主観でがつがつ書きました。ああ、楽……。楽しんで書きました。


そして今更、その2


拙作、ルビ振り方針が2パターンありまして。

ここまで読んでくださった方々はすでにお気づきと思いますが、

「素直にふりがなとしてのルビ」と「意訳的なルビ」の2パターンです。


意訳的なルビは、おおむね見た目がアヤシイ気配を出しているはずなので分かると思いますが、それを本当のふりがなだと間違って信じてしまっても責任とれませんので、ご使用の際は自己責任でお願いします。


 ご使用(りよう)の際は自己責任で(けいかくてきに)


とか、平然とやりますので。騙されないように!

え?今更?はい。今更です。


書き上げ後のテンションで前書き・後書き書くと恐ろしいよね、と言う話……


おまけ。

今回、設定的な話のところで、別に書いているものの一部の設定をアレンジして使っています。

ただしその別の話、日の目見ていません。そんなものが両手くらいあり……orz


なぜかというと、長編を書こうとして書き始めると大長編の様相になってしまうからです。

始まりは、ちょっと思いついた1,2つの設定やエピソードなのですが、

今のこの話が、実は短編を書きたくて書き始めたところからも察していただけるかと。

つまり計画に対して、結果の脱線がひどいということです。自分の旅行を思い出します。


それでも読んでみたい!という方がいましたら(いないよ)、感想欄で応援していただけると、そのうち勇気を振り絞っ……

(長くなりそうだったので、文字制限越えたフリ)

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